第12話 身内に犯罪者見つけた!

 父の田舎へ行ってレジャーを楽しんでいたさなか、イトコのM.F.が恐怖のセクハラを仕掛けてきた。


 まず、父のマンションにいきなり入り込んできて、がちゃがちゃやったので、妹は「不審者」と思ったそうな。

「どちらさま?」

 と訊ねたが、だれだかわからなかったらしい。

 まともに顔も見たことのない、イトコだったからだ。


 さて、そのイトコは、次に父の別荘へやってきて、

「誰? って言われちゃったよ。一回しか顔をあわせてないもんな」

 と笑っていたが、ひげがボーボーで、目の周りにクマがひどい。

 いや、妹はあなたの顔を知らないとはっきり言っていましたからね。 

 軽くあいさつした後、よりにもよって、彼はわたくしにいやらしい目をむけて、

「運動してないの?」

 というから、むかっときて、わたくしは言った。

「どこを見て言ってるの?」

 すると彼は、なんと、Tシャツの上からわたくしのおなかをつついた!

「なあに、あなた! セクハラ! セクハラ!」

 と言ったら、調子のよいステップで、玄関まで飛んでいき、さらにセクハラ。

 いわく、

「男の一人もいないのか」

 と言って、急いで逃げて行ったのである。


 これがまさしく、母が「縁を切りたい……」とつぶやく原因であった。

 彼こそが、物心つく以前から、あつかましい母親と一緒に、食事時に現れては、食費を浮かすために飯をかっくらっていた、食いっ稼ぎの次男である。

 わたくしは起き抜けだったので、みじたくをして、さて休もうとした。

 すると、またM.F.が電話をかけてきた。

 母ももう、名前など呼ばない。

「Fさんよ」

 という。

 だれだ。

 と、思ったら、イトコで不審者で、セクハラ親父のいいわけで。

『さっきはしてはいけないことをしたと思って』

 という。

 それなら、謝ったらどうだと思うのだが、『してはいけないことをしたと思って』と繰り返すのみで要領を得ない。

「(ごたくは)もう、いいよ。お母さんに代わるね」

 というと、慌てた様子で、

「お母さんには代わらないでいいよ!」

 と、あせっていた。


 これが、引きかえしてきて、詫びをいれたんならまだしもだ。

 電話一本でどうにでもなる、と思っている姿があさましい。

 妹には、彼が危険人物であることを告げ、警告しといた。


 ここを読んだ方にもわかるように言うと、彼は非常に女性蔑視の激しいデリカシー皆無な無知能なサルである。

 以前、我が家に「観光」のついでによったとき、こういうことを自慢していた。

『ソープ嬢は、水虫の足の指をなめたぜ』

 と。

 高慢自慢、馬鹿のうちである。


 若いうちから老害の一部になり果てた、救いようのないゲスであり、カスである。

 以前は法律の勉強をしていたが、ものにならず、今、全然関係のないパートをしている。


 わたくしは悟った。

 法律を勉強しているからといって、法律を守る気はないのね!

 だから、司法試験落ちまくってたんだわ。

 でなければ、無防備な女性のからだに、無遠慮にさわったり、侮辱する発言を三つもするはずがないもの。

 彼のははっきり、痴漢行為だし、現行犯で警察に突き出してもよかったのよ?

 わたくしが温和で、親切な性格だから、

「良心があることがわかって、ほっとしました」

 というにとどめたのよ。


 電話してきたときに、詫びる気はあるのか、と一瞬でも考えたわたくしがお人よしだったわ。

 横浜のわたくしの家にまで出向いて、「大変申し訳ございませんでした」と言うまでは、わたくしは彼をセクハラ親父の逆ボタル。

 わたくしを風俗嬢と勘違いするほど女に飢えてる、モテないくん。

 痴漢と思って、周囲にそう伝えることにする。

 異性とつきあってない女性の体に触っていいと、どこの国の法律で決まったのか。

 彼には法律的根拠を示すことすらできない。

 なぜなら、頭がパーだからよ? 一、二カ月に一回ていど、かるく挨拶する程度の相手にそういう真似をするのだから、言い過ぎではない。

 裁判で慰謝料要求してもいいくらいには思ってる。

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