第11話 業の深い相手

 わたくしは業の深い異性に執着する癖が、以前あった。

 それは、うまくいかない父親との関係を、やり直そうとするが故であった。

 しかし、業の深い相手というのは、わたくしのエネルギーを削る。


 最初のうちはいい。

 顔も知らない、文字だけの関係だったりすると、書かれていることが全てだと感じる。

 それで安心していると、相手はだんだんと尊大になっていく。

 命令口調、上から目線。

 これが普通になるのだ。

 わたくしは、表面はおとなしくしているが、基本どSなのでそれは嫌だと主張するのだが、関係は改善しない。


 それどころか、相手はわたくしをなんだと思っているのか、

「大人としてそなえているはずのものが欠落している」だとか、

「俺が気持ちよく話せるようにしゃべれない」だとかいうレッテルを貼ってくる。

 それのどこが悪いのか、わたくしにはわからないのだ。

 それは欠落かもしれないが、必要なものなのだ。

 わたくしがわたくしであるあかしなのだ。

 そしてわたくしは、商売女ではないのだから、男が喜ぶようにしゃべるのが得意ではない。

 学生時代は必要最低限の主張も、異性にしたことはない。

 異性の友達がいたこともない。

 そういう人間だとしつこく、ちゃんと言い含めているのに、ネチネチ絡んでくる男がいる。

 正直軽蔑する。


 わたくしに「オレを褒めろ」とか、「友達に自慢しろ」とかいうささいな要求でも、わたくしにはハードルが高いのだ。

 命令されてるとなると、なおさらで。

 こういう彼氏は、正直、いらない。

 友達でもいらない。

 つきあいたくない。

 刺す、と思うところまで行ったことも……。

 しかし、これではわたくしが業の深い女になってしまうから、すらっとぼけてかわすようにしたら、相手から離れてくれるようになった。

 劣等感まみれで、自分より弱いと思ったものにだけ暴君になる、そんな男はお断り!

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