第10話 大人になることの悲しさ

 今日、親戚の子たちが、家に来て、遊んでいった。

 困るのは、おとなしくTVを見ていたお兄ちゃんYを、一番下のRくん(2歳)が、ソファから落ちたはずみで踏みつけて、泣かせてしまったこと。


 うん……お兄ちゃんは、今日学校がプールの日だったか、それとも習い事でプールへ入ったかして、二回も泳ぎの練習をしたんで疲れていたんだな。

 そこへ、Rくんのちっちゃな足がドカン!


 お兄ちゃんは声もなく泣いていて、わたくしがママに知らせると、ママが「Rくん、わざとじゃないよね?」ってRくんに話しかけ、Rくんはなんと答えたかは知らないが、お兄ちゃんはずっと泣いていて。


 静かに、しずかに泣いていて。

 それはもう、子ども特有の「うわーん」とは違っていて。

 大人になっちゃったが故の、かなしい涙だった。


 お兄ちゃんは、仕返しなどしないが、ガマンしているのがわかるから、かわいそうで。

 なのに、Rくんはやたらハッスルして、うちわでバシバシ、たたきに向かっていく。


 これ、本当になんなの?

 疲れてしまった、Yくんの、かなしい未来がイメージ浮かんで、とってもかわいそうなの。


 だけど、せつない人生を背負った真ん中のKくんや、いきおいいやますRくんと違って、どうも、Yくんは未来が見えない。

 色白で、少々はかなげな雰囲気。


 ケンカしてもいいから、丈夫に育ってくれい。

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