第8話 今日から始める嘘日記

 昨日、ケンカをした。




 母も祖母も、靴を脱ぎ履きするさいに、なぜかわたくしの靴を踏む。


 イラッと来て注意したらば、


「前からそうだったでしょ」


 と母。


「前から我慢してたら、この先もガマンしなくちゃいけないんですか!?」


 淡々と聞いた。


 そしたら祖母が、一番離れたところから、悪びれもせず、




「まあ! せからしか!」


 と開き直った。


 せからし(せからしい)というのは、熊本の言葉で「うるさい」という意味。


 ――か、というのは「ね」という意味。


 つまり祖母は。




「まあ、うるさいね!」


 と言って、母と家を出ていったのである。




 はい。


 わたくし、祖母の履いていたスリッパを蹴ったくりました。


 頭に来たので、それを100回踏みました。


 気が収まらないので、祖母の大事にしている、お出かけ用の靴を100回踏みました。


 かかとがぐちゃっとなって、醜くゆがんでしまいましたけど。


 多分、靴の寿命もそれなりに縮みましたけど。




 今までわたくしの靴を踏みつけてくれたお礼です。


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