第6話 いとこが結婚した!
叔父さんの次女が結婚式を挙げたそうな。
お祝いを一万円包む。
普通はもっと多いのかな。
低所得でごめんよ。ううう。
しかし式には参列しないのだ。
着ていく服すらない。
喪服ならあるけど、縁起でもない。
お祝いは母に持って行ってもらう。
引き出物にカタログを貰ったので、サラダボウルを頼むことにする。
んで。
伯父伯母夫婦とその娘さんが、叔父と一緒に家に立ち寄ってくれた。
今日、九州に帰るそうだけど、台風がきつそうだ。
飛行機、大丈夫かな。
伯父伯母夫婦の娘さんというのは、わたくしのイトコなわけで。
司書をしている。
なんでも、学芸員のような仕事内容になっているらしい。
「近代」文学を扱っているんだけれど、作家さんが現代仮名遣いを推奨してるとかで、原稿までそうなっているから、特殊なんだね。
聞いた話だと、司書は全国で求められているのが1名なので、ひとつの図書館に勤めている20名のほとんどが非常勤で、一年ごとに契約更新しなくてはいけないらしい。
ミヒャエル・エンデが司書教諭だったって昔読んだから、一応司書補の資格だけもってるけれど、働いた実績など皆無だ。
こんなに競争率が高いなら、あきらめずに図書館大学へまっしぐらに行けばよかった。
どうして母に反対されたくらいで、方向転換しちゃったんだろうか。
「大学が地方だとなにかと危険だから」っていうのは、娘の夢を阻むにふさわしい意見だったろうか? それで治安がいいからって英国へ留学というのは、遠回りもいいところ。
気付いたときには手遅れだった。
公務員には年齢制限があるのだ。
そういうこと、だれも教えてくれないものな。
一生懸命勉強して、親孝行してれば、夢は叶うと思っていたけれど、そうじゃないんだな。
親のいうことをきいては、いけない場合というのがある。
親は子供を自分の思い通りにこねくりまわしたいだけなのだ。
親孝行と思って我慢するのにも限度がある。
こんな話がある。
二十代のときに、母に勧められたアルバイトの面接へ行ったら、パーティーコンパニオンの仕事でした。
父に話してはいけないと言われていたけれど、話した。
親に話せないアルバイトはしたくなかった。
そうしたら、父が「それは水商売へつながっている危険なバイト」というので、やめた。
他のアルバイトはなかなか決まらないのに、そういうバイトは面接を通れるのだから、なんだかアヤシイ。
母に抗議した。
身の危険を感じたと。
母と妹たちはどうしても、おいしいものが食べたいので、わたくしに食費を納めてもらいたかったらしい。
現に妹には「お姉ちゃんが食費納めてくれたら、あたしはおいしいものが食べられるのに」ときつく言われ、入れたら入れたで、母が毎週末に宴会へ行くようになり、家の中が荒れた。
お金があれば、幸せになれるかというと、決してそうではないという例だと思う。
親にお金をあげれば親孝行かというと、そうではない気がする。
高校時代は家事のほとんどを、家庭内で取り仕切っていたので、青春らしい青春時代は送ってこなかった。
親孝行の代償である。
よくわからない。
誰かの代わりに全てをすることが、よいことではないという一例だ。
母に関しては、わたくしにたいする評価がものすごく低かったので、華の二十代に「結婚を逃した三十代男性なんかと結婚すれば」と言われて絶望した。
愛も恋もない話だ。
一事が万事こうだから、そろそろわたくしは母に逆らわねばならないのではないかと考えている。
心の自由のために。
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