第2話 反抗期がない子のおそろしさ

 いきなりだが、わたくしイヤイヤ期とか反抗期とか、そういうのがなかった。

 大人になってから思春期を終えた。


 その内面の複雑怪奇さを、心理学を学ぶことで単純化しようとしてきたが、人間関係にかなりの影響を及ぼした。

 親離れの難しさ、これに尽きるが、親子関係の延長上に人間関係を置くので、越えられない壁というものが存在した。


 身近な人間との間に、うまく関係を築けない、という傷はその後の人生に関わる一大事件である。

 わたくしは父との確執に悩まされていた。


 父はかわいそうな人。

 ことわざとか、格言とかを全く知らない。


 わたくしがことわざを持ち出すと十中八九、勘違いをしてしまう。

 ゆえに、かみ砕いて話さないと、恥をかかせることになる。


 そんな父は大変、高圧的で教育的である。

 ことわざを知らないのに、哲学は得意で、相手を論破するのに手間暇をかける。


 娘にこういう場面でこういうことを言われてしまうのは、やはりかわいそうだし、読者もそう思うと思う。

 彼は中卒で会社に入ったので、学歴コンプレックスがあるようだ。


 わたくしにも、同じように中卒で働かせようとしていた。

 わたくしは小学生の頃から、目指していたエリート校に余裕で受かったので、うまうまと高校、大学まで行かせてもらったが、のちのち気にくわなかったらしく、父は「いくらかかったと思っている!?」としつこい。


「教育費でしょ?」

 と返すわたくし。


 こどもは教育を受ける権利があるのだ。

 義務教育を施したら、さっそく働く世代ではなかった。


 父は金の卵と言われたが、わたくしの世代では中卒はひどい扱いを受けた。

 なんでもかんでも自分と同じ境遇に堕としこもうとするのをやめて欲しいのだ。


 こどもは別人格だし、別個の命だ。

 思い通りにひねってやろうとか、そういう魂胆をやめて欲しい。


 この父につきあったせいで過去何度もひどい目にあった。

 ほとんどが、人間関係だ。


 わたくしに接する人間のうち、男性的な人物のほとんどが、わたくしを精神的マゾヒズムであると勘違いし、まるで父親のようにふるまったのだ。

 わたくしは、彼女らの要望に応えようと努力し、従順にふるまった。


 結果、やっぱりマゾなのね、いじめてあげなきゃあ、ということになり、大変苦労をさせられた。

 総じて彼女らは、要求がましい。


 反抗期がないわたくしだったから、その要求に応えようと懸命になったし、そういう父親役をしてくる友達を選びがちだった。

 うまくいかない父親との関係を、友人関係で取り戻そうとしていたのだ。


 彼女らは、なにをどうやっても、わたくしを認めようとしないし、努力しようとすればするほど否定的になる。

 放っておけばどうなるかというと、わたくしと親しい友人たちに積極的に働きかけてわたくしを孤独にしようとする。


 そして、いじめなどにあったときには、決して助けてはくれない。

 その事実を冷静にみて、これは、どう考えても友達ではない。


 どういう努力をしても、認めない、否定しにかかる、ということは、わたくしが嫌いで、わたくしを排斥したいだけなのだ。

 父と同じだ。


 家事をすれば、勉強しろ、勉強すれば、家事をしろ、両方やれば、遊んでいると批判し近所に言って回る。

 おかげで、わたくしは表も歩けない。


 こうやって、被害を誰かに言えば、プライバシーの侵害だと怒鳴り、わたくしの部屋をじろじろ見るのはプライバシーの侵害にあたると反論すれば、おまえにプライバシーなどない! とこうくる。

 いろいろ、いい加減なのだ。


 だから、もうわたくしはこの手の父親的人格を有する人間には執着しない。

 積極的に否定してかかるつもりである。


 個人の人格無視の、スパルタ教育の結果をみるがいい。

 わたくし、立派などSに成長したので、いじめられたくない人は先に言ってください。


 好きでもない人をいじめたくなんかないさ。

 どSにだって、分別はあるのよ。

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