HEAVY
次の日、ルナとその場でわかれた俺はそのまま家に帰宅し、倒れ混むようにしてそのまま寝てしまった。
そのおかげか朝はかなりスッキリとしていていつもの予定より早く起きてしまった。
外の気候もよくかなり空も晴れていた。
カレンダーの日付を見れば今日がバレンタインデーということがわかった。
ふと俺はルナの顔を思い出して思わず笑ってしまった。
本当に上手くいけばいいと思う。
そう願いながら俺は着替え始めた。
いつもより朝はやく起きてしまった為、このこの日に限り、いつもより早く登校しようと決めた。
普段は遅刻ぎりぎりなのだが。
登校するために自転車に乗ろうとし、いつものようにipodの電源を入れた。
ふと気がつくとお気に入りの中に【ルナちゃんのセレクション】という題名のファイルが残っていた。
考えてみると昨日、あのままルナと別れた。
ファイルはそのまま残っており、これを使用したらまた魔法の効果が現れるのだろうか?
そう思ったがそれに触れることなく、自分で選んだお気に入りのファイルを開き、再生ボタンを押した。
学校までは自転車で三十分以内だが、最後の難所というか学校の手前には大きな坂がある。
そこを登らなければ学校に辿りつかない。
毎朝、俺はこの坂を文句を言いながら昇っている。
普段なら同じように遅刻しそうな生徒や出勤するスーツを着たサラリーマンが眠そうに歩いているのだが、今日はいつもより早いから、人通りは少ない。
俺は自転車をこぎながら必死で坂を昇っていく。
ふと坂の中腹を超え、後少しで校門に辿りつこうとした時だった。
目の前に俺と同じ制服を着た生徒、男女二人が手をつなぎながらこちらを背にして歩いている。
ああー、よくある朝早く待ち合わせして二人で登校みたいなやつだよ。
そう思いながら気にすることなくペダルを漕ぎ続けた。
すると目の前の二人が校門から敷地内へと入ろうとした時だった。
ん……?
俺はふと違和感というかなんともいえない感覚を憶えた。
目の前の二人の内、一人の横顔はどこか見覚えのあるやつの顔だった。
まさか……。
俺の中で嫌な予感がした。
その顔は俺の友人である宮田に似ていた。
確証はないが、どことなく似ている感じだった。
いや、目の前の事を否定したい。
だが確証をもてない自分がいる。
目の前の二人は校内へと入っていき姿を消した。
いつの間にか俺はペダルを漕ぐ足を止めてその場にとどまっていた。
教室についてからその光景が頭から離れず悶々としていた。
そのことについて本人に質問するかどうかも迷ってしまう。
もし本当に宮田ならルナの告白は上手くいかないことになる。
しかし、あのチョコバナナなら媚薬の効果により宮田がルナに目移りする可能性だってある。
やだ、略奪愛ってやつじゃん。
意外とどろどろとしたことになりそう。
だがそれは可能性の話であって実際は違うかもしれない。
俺はなんともいいしれない気持ちの中、誰も居ない教室で目をつむり始業時間を待っていた。
授業が始まり、いつものように生徒達が、席につき授業を受けていた。
宮田も当然、教室内に居て彼の方に目線が言ってしまう。
あまり彼の事を見過ぎて喧嘩を売っているように思われないように注意してはいるが視線がそちらへと動いてしまうのが悩ましい。
どう聞こうか悩みすぎて授業の内容が頭に入ってこなかった。
休み時間になっても、宮田に質問しに声をかけようか悩んでいると目的は向こうからやってきた。
「ハル、どうした?」
机に伏せて考えていた俺に宮田は声をかけてきた。
やられた、先手を打たれたと思った俺は必死に動揺を隠しながら声を出した。
「何が?」
第一声がそれとは自身の語彙力に情けなさを感じてしまう。
「いや、今日、一日中机に伏せていたから、心配になっただけなんだけど」
宮田はその息にミントが含まれているんじゃないかと思うくらいの爽やかさで問いかけてきた。
「特に体調に問題は無いけれど、昨日の夜、眠れなくてな」
俺は嘘をついた。
「またエロい動画でも見てたのか?」
宮田は爽やかに問いかけた。
「いやいや。 確かに俺はスケベな面があるが、毎日同じ事をしている訳じゃ無いぞ」
俺は自分の矜恃の為に一応、否定しておく。
「悪い悪い。 冗談だよ。 でもどうしたんだ? なんだか今日は変だぞ」
「いつも変だからいつもと変わらないぞ」
「そうか? まぁ、それもそうか」
宮田はそれもそうかと納得した。
一日中、授業を机でサボり気味な俺は宮田に周知されていた。
ここで会話を終わらせてしまったらさすがに気になることが聞けない。
タイミング的にここしかない。
俺は宮田に遠回しに質問をしてみようと動くことにした。
「しかし、今日はバレンタインデーだ。 宮田は予定あるのか?」
俺は宮田に関連することから質問してみた。
「…………」
宮田はなんだが苦笑いを浮かべ、何か、考えたように一瞬、無言になる。
おっと、核心に近づいたか?
すると彼は苦笑いを浮かべたまま、口を開いた。
「どうしたんだ? ハルがそんなことを聞くなんて」
いや、質問を質問で返されたぞ。
「さして意味はないよ。ただ気になっただけだ」
「そうか。 予定ね……。 まぁ、あるにはあるさ。 部活だけどな」
宮田は普段通りの爽やかな笑みに戻る。
「お、おぉ。 そうか。 部活か」
「そうそう。 お、そろそろ、次の授業の準備に入るからこれで失礼するよ。 まぁ、クロがそこまで悪くなくて良かったよ」
宮田はそう言うと身体の中身が軽い物でできているんじゃないかと思うくらい宮田はさっとその場をから消えた。
俺は宮田に声をかけることも出来ず、彼の背中をただ見ているだけだった。
確かに宮田はサッカーをしているから基本、部活に出ていることが多いはず。
でもなんだろうか?
彼にただはぐらかされて終わってしまっただけのように感じる。
俺は核心をつくことも出来ず、ただ黙って放課後を迎えることになった。
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