第2話
誰かが僕の体を小さく揺すり、それから大きく二度三度と揺すった。
意識が急速に戻り、現実へと誘った。
まだ頭の中心みたいなところがチリチリとして痛んだ。
瞼を開け体を起こそうとすると誰かが
『まだ起きては駄目、じっとして』
と言った。
僕は言われた通りそのままの姿勢で、しばらくじっとうずくまった。
『そう、それでいいの』
うずくまる僕の額にそっと手のひらを置き、その声の主は言った。
僕は静かに目を閉じた。
耳元では潮騒が途切れる事なく響き渡り、海鳥がひっきりなしに鳴いていた。
どこからか過去の遠い記憶が蘇ってくるような、そんな優しい時間だった。
もう頭の痛みは治まっていたが、しばらく僕はそんな時に身を委ねつかの間、穏やかな気持ちに浸った。
どれくらいの時間が経ったろう。
『もう大丈夫』
確かめるように、僕の髪を撫で声の主は言った。
僕は再び瞼を開け、しずしずと起き上がる。
少女はそんな様子を瞬きもせず静かに見つめたいた。
『あなたはここで倒れていた』
浜辺で倒れうずくまったままでいる僕に言う。
その声は静かだが抑揚がなかった。
『君は誰?僕はどれくらい倒れていたの?』
それには答えず黙っていた。
僕は戸惑って、その少女の黒い瞳を見つめる。
少女の長い黒髪が風になびいて揺れた。
と思う間もなく、次の瞬間少女は立ち上がり、海辺へと向かい歩き出した。
海に浮かぶ少女 遼 智久 @kanekase1217
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