第8話

 この二人組は、周りにどう映るのだろう。夏生の後からやや遅れて付いていきながら、あずみは少しおかしくなった。ようやく気持ちに余裕が出てきた。

 背の高い垢ぬけた女装男子と、チビで全く垢抜けない自分。

 我ながら、珍奇な取り合わせに苦笑が出る。でも、今日夏生に付き合ってもらって、少しはしゃれた似合う服でも買えば、もっと違った印象になるかもしれない。そう思うと、心が弾んできた。

 しばらく行くと、夏生が急に振り返った。

 「で、どこへ行くんだっけ?」

 「え、だから藤井くんの行くお店…」

 「おれの行く店なんて、ないよ」

 「新宿にないの?」

 「つうか、店に行かない。あのねえ、いくら何でも、こんな服売ってる店で、おれが試着したらセクハラになりかねないでしょ」

 頭が混乱してきた。

 「だから、今日は堂々とそういうショップに入れるんで、うれしい」

 「はあ、でもじゃあ、そういう…その、女装はどうやって手に入れてるの?」

 「通販」

 なんだ。あずみは拍子抜けすると同時に、困ってしまう。

 「どこに行こう? 私、ユニクロしか知らない」

 「ユニクロなら、西口の方にあるけど」

 「やだ、それじゃ意味ないし」

 「そうだなぁ。とりあえず、駅の方に行く? ルミネとか」

 ルミネ。あずみは足がすくみかけたが、夏生と一緒なら大丈夫だろうと思い直す。

 「うん、それでいい」

 おじけたことは気取られないように、さりげないふうであずみはこたえた。

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