第2話

 豪快な笑いというのはこういうのを言うのだろうか、けれど、厭味な感じは少しもしなかった。笑うと、笑顔も素敵だった。

 ようやく笑いをおさえて、彼は言った。

 「いいよ。でも、君、十分きれいじゃない」



 そこから、彼との付き合いが始まった。もちろん、男女の付き合いではない。きれいになるためのレッスンだ。

 あずみが少し意外だったのは、彼が女言葉をつかうと思い込んでいたので、ふつうの男子学生と同じように話すことだった。

 それに、同性愛者的な雰囲気もなかった。なぜ彼が女装なのかは謎だった。

 ときどきキャンパスですれ違うとき、あずみは目を伏せて、気づかないふりをしてすれ違うようにした。なぜか反射的にそうしてしまうのだ。彼は、たいがい他の男友達と数人で話しながら歩いていたが、それはごくふつうの友達のようで、心のどこかで期待したような、恋人どうしのようには見えなかった。いや、そもそも彼が誰かと二人きりで歩いていることの方が少なかった。たいがい、3,4人のかたまりだった。

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