アスコラク‐時の女王-

夷也荊

プロローグ

昔話

「寂しがり屋の彫像の話」


 あるところに少女の彫像がありました。その彫像は群像ではありませんでしたので、いつも一人ぼっちでした。石の少女は歌います。


「明るい時は皆私を囲んで楽しそうにしているけれど、暗くなると一人ぼっちで悲しいわ。皆私を置いて行ってしまうなんてあんまりよ」


そして石の少女は、自分の声に気付いた人々に手を差し伸べます。


「もう朝が来るなんて待ちきれない。だからお家に帰ったりしないで、ずっと私と一緒にいてちょうだい。ほら、そこの坊や、お姉ちゃんと遊んでいましょう。ほら、そこのお婆ちゃん、ずっとお話ししましょう。さあさあ、こっちへいらっしゃい」


石の少女は町の人に愛されていましたので、その声を聞いた人は少女の手を取りました。


「ここでは毎日が休日。嫌なことは忘れて皆で歌い、踊りましょう。さあさあ、私の隣にいらっしゃい。ここでは毎日が祝祭。さあさあ、終わりなんてなくして皆で笑って暮らしましょう」


少女は人々の手を取って自分の隣に連れて行きます。するとその人々は皆、少女と同じ石の彫像になってしまいました。こうして少女の手を取った者は、ずっと少女と一緒にいます。

だから今ある群像の中には元は人間だった人々が時々紛れ込んでいるのだそうです。








                              (マスハの昔話)

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