宇宙人政令指定都市計画

「今この星において宇宙人はそれほど珍しい存在ではない」


 エイリアンセナはそう切り出した。


「いやそんなこと言われても、宇宙人のことなんてうさんくさいオカルト雑誌のワンコーナーとかでしか見たことないですよ」


「安心するといい、その情報はフェイクだ」


 セナはきっぱり言い切り、私は二度とそんなもの読むかと誓うのだった。


「昔はあったらしいのだがね星域侵犯。だが心配は不要だ、今この星に滞在している宇宙人はすべて星間連合、そして地球側に許可をもらって住んでいる。もちろん私もだ」


「星間連合?」


「国際連合の惑星版だと思えばいい」


 うーん、ようは入国審査的なものがされてるってこと? それなら大丈夫なのかな?


「ちなみにどれだけの宇宙人さんが地球に来ているんですか?」


「約100万人」


 ?! 私の中の僅かな安心感は吹き飛んだ。百万人、仮にそれが全員日本にいるとすると100人に1人もいる計算だ。宇宙人だけで政令指定都市が作れてしまう。


「このように、もはや宇宙人は珍しい存在でも、得たいの知れない存在でもないのだ」


「うーん……」


 なんかもっともらしく言われた気がするが、あんまり納得がいかない。なんか論点をそらされているというか……


「けど、あなたが怪しくないという理由にはならないですよね?」


「……そう言えば自己紹介がまだだったな」


 すごく今さらな気がする。


「ちゃんと素性を語ってくださいよ」


「もちろんだ」


 ほんとかなぁ? なんか胡散臭いんだよね、この人。そんな私の心のうちを知ってか知らずか、セナは私の目の前の宙に、ホログラムで作られたディスプレイを表示させた。


「私の名前はセナ。上でも下でもなく、セナという単体の名前だ。私の星には名字という文化はないからね」


 セナがそう名乗るとそれに連動してディスプレイが切り替わる。そこには目の前の宇宙人の写真と見たことのない言語の羅列が浮かび上がる。


「あのー……読めないんですけど」


「宇宙用の名刺だからね、当然さ」


「へー宇宙にも名刺があるんだ。じゃあセナさんの本職はビジネスマン?」


「私の本職は――」


「宇宙でもスカウト兼マネージャー兼プロデューサーとか言わないでくださいね」


「……かなわないな」


 セナはぽつりと呟いた。


「いいだろう。私の職業はぺトロ星文化庁所属、特殊行政補佐官。つまり官僚ということになる」


 ……なんかすごい言葉が聞こえてきたぞ。え? この人公務員なの? それもよくわかんないけど格好いい肩書きだし!


「自分でいうのもあれだがエーリト官僚だな」


 あっ恐らく今どや顔した。見たことのない宇宙人の顔だったが、それが確信を持って言えた。


「で、なんでそのエーリト官僚さんがこんなところにいるんですか?」


「ふむ、その話題に入る前に私の故郷のことについて話そう」


 セナは私と彼の間に、ホログラムでできた天球図を映し出した。

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