禁じられたスカウト

 今、何て聞こえた? アイドル? スカウト? いやいやいやちょっと待って。


 再び渡された紙切れを見る。そこには相も変わらずスカウトやらマネージャーやらプロデューサーやらぺトロ星人とやらが書かれている。あっ、これ名刺だ。ここでようやく私はこの紙が持つ意味が分かる、ライブハウスで何回も目撃し、自分が何百回もシミュレーションしていたもの。これがスカウト……! 私が夢に見ていたもの!


「どうだろう、応じてくれ――」


「お断りさせていただきます」


 私の返答は決まっていた。


「……ふむ、その理由を聞かせてもらおうか」


「えぇ……正直この状況でスカウトされるバカなんていませんよ……」


「この状況、どうやらお互いの考えにちょっとした差異があるようだ。だが、君の考えを言ってくれれば、それもなくなるだろう」


 どうやらこの宇宙人、まだ諦めてないらしい。その堂々した態度から、もしかしてこっちが間違っているのかと錯覚させられる。


「えーっとすごく言いにくいのですが……」


「構わんよ、地球流の考えを聞かせてくれ」


 では遠慮なく。


「簡単に言えば、あなたについて行ったらろくな未来になる気がしないからです」


「なるほど、私のことが信用できないと」


「えっ? ま、まぁその通り……です」


「理由を聞かせてもらおう」


 言わなきゃ分からんのかこの宇宙人。


「えーセナさん、普通地球人は得たいの知れない宇宙人を信用することはないです。そうじゃなくても、突然拉致って来る人のスカウトに応じることなんてありませんよ」


「ふむ、なるほど。では一つ一つ誤解を解いていこうか」


 エイリアンセナは口を開いた。今この世界に起きているちょっとした真実を、例えるなら90年代の純SF小説のような、夢と恐怖に満ちた未来の序章を……

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