第102話 俺の推理が正しければ・・・

「南城先生が言ってる事が本当なら、準備室にある古いアルバムに写真が残ってるはずだ!」

 俺は興奮気味に立ち上がったけど、それとほぼ同時に女子5人も一斉に立ち上がって準備室に殺到した!もちろん、俺たちの目的はただ1つ、準備室の戸棚のさらに上に並べられている段ボール箱だ!!

 俺は準備室の奥に置いてある踏み台を持ち出すと、1番手前の戸棚にある段ボール箱に手を伸ばした。

「たっくーん、どの段ボールだと思う?」

「俺だって分からんぞー。だいたい、段ボールだって10個以上あるし・・・」

「とりあえず、たっくんから一番近い段ボールを降ろしてよー」

「りょーかい!」

 俺は唯に言われた通り、準備室の一番奥の棚の上にあった段ボールを手に取ったけど想像以上に重かったから、思わず落としそうになって冷や汗をかいたけど、何とか落とさずに床に降ろした。

 そのまま段ボール箱のガムテープを開封したけど、その中に入っていたのは昭和の頃の吹奏楽部や合唱部の表彰状だった。

「1つ目はハズレだあ!」

「後輩君はクジ運が悪いねえ」

「せんぱーい、揶揄わないで下さいよお」

「わりーわりー。それより早く次の段ボールを降ろしてくれ!」

「まさかと思うけど、目的の物が見付かるまで、全部俺にやらせるつもりですかあ?」

「後輩君、か弱き女子高生に力仕事をやらせるつもりか?」

「はいはい、分かりましたよ。聞いた俺がバカでした」

「分かってるなら、さっさと降ろしなさい」

「やりますから、ちょっと黙っていて下さい」

 はあああーーー・・・このステップに乗ったところで段ボールに手が届くのは俺か藍のどっちかいないのは間違いないけど、絶対に藍がやらないのは目に見えている。俺がこの場にいる以上、この5人が俺にやらせるのが目に見えているからなあ、とほほ。

 俺は2つ目の段ボールを降ろしたけど、結局、これも違った。

 3つ目、4つ目、5つ目も違った。

 ところが・・・6つ目の段ボールを降ろした時、違和感に気付いた。

「・・・あれっ?これ、おかしいぞ」

「はあ?後輩君、何がおかしいんだ?」

「この段ボール、埃を被ってないし、だいたい、ガムテープが新しい・・・」

「た、たしかに後輩君の言う通りだ・・・」

「せんぱーい、去年の軽音楽同好会のアルバムを入れたのは、一番入り口側にある森崎乳業の段ボール箱でしたよねえ」

「そうだよー。あの中には去年の関係の物しか入ってないのは後輩君も知ってるだろー」

「当たり前です!写真も楽譜も、先輩がぜーんぶ俺に整理するよう、押し付けたんですよね!!」

「あれ?そうだったかなあ」

「惚けないで下さい!」

「まあまあ、あたしが君の為に仕事を与えてあげたと思えば感謝したくなるだろ?」

「はーー・・・これ以上は言っても無駄だと思うからやめておきますけど、真面目な話、この段ボール以外は相当埃が積もってたのに、この段ボール箱には埃が殆ど積もってないし、だいたい、このガムテープが新しい理由は何だと思いますか?」

「後輩君、つべこべ言わずに段ボール箱を開ければ答えは出てくる!」

「たしかに先輩の言う通りですね。じゃあ、開けますよ」

 そう言って俺はガムテープを剥がして段ボール箱を開けたのだが・・・そこに入っていたのは・・・アルバムと数冊の茶封筒だった。


『平成〇〇年  軽音楽同好会 活動の記録』


「「「「「これだあ!」」」」」

「いや、違う!これは姉貴が卒業した次の年だから、これより前の年だ!」

「そ、そういえば南城先生は拓真君のお姉さんとクラスメイトだと言ってたから、この時は卒業しているというなら違うわね」

「そう!だけど、この段ボール、おかしい!!」

 俺はそう言ってアルバムを取り出し、残った封筒も全部取り出したけど、アルバムは1冊しか入ってなくて、姉貴が在学中の年度のアルバムは入ってなかった。

「・・・たっくーん、この段ボールはハズレじゃあないのー?」

 唯はそう言って「次の段ボールを降ろそうよー」と俺に催促したけど、俺は妙に引っ掛かる物があったので、この段ボールに入っていた茶封筒を開封した。

 最初に開封した茶封筒の中に入っていたのは楽譜や歌詞カードだったが、その楽譜の曲は、このアルバムの年に大ヒットしたアニメの主題歌の物だったから別におかしいと思わなかった。


 だが、次の封筒を開いた時、俺の疑惑は確信に変わった!


 俺は自分の頭の中で、つい10分ほど前のやり取りを思い出し、色々と推理したけど、その答えは1つしか思い浮かばない!

「・・・やっぱり!」

 俺はその封筒の中身を取り出すと、静かに立ち上がった。

「・・・唯、犯人が分かったぜ」

「「「「「犯人が分かった?」」」」」

「そう。犯人がね。ついでに、その理由もね」

「「「「「理由もね?」」」」」

「そう。理由も。俺の推理が正しければ、!」

「「「「「南城先生!?」」」」」

 俺が断言するかのように言った言葉の意味が分からなかったようで、唯たちは一斉に首を傾げたけど、俺はそれを無視するかのように再び「南城先生しか有り得ない!」と断言した。

「・・・たっくーん、南城先生が犯人だって言ってるけど、どういう意味なの?」

 唯が全員の気持ちを代弁するかのように俺に問いかけてきたけど、俺は封筒の中からを2つ取り出して、それを唯たちに見せた。

 俺が唯たちに見せた物は・・・2枚のCDだ!


「た、たっくん!こ、これって!」

「そう、南城先生が2年生の時と3年生の時に桜高祭ブロッサム・フェスティバルで演奏した物が収められているCDだ!」


 俺はそのCDを唯に渡すと同時に封筒の中に入っていた楽譜も全部取り出して、それを藍に渡した。

「・・・拓真君、これって、南城先生が桜高祭で演奏した曲の楽譜?」

「恐らくね。CDには年度が書いてあるから、聞けば判別できるさ。でもさあ、ここで落ち着いて考え欲しいんだけど、楽譜やCDが残っているのにアルバムが無いのは不自然だ」

「「「「「たしかに・・・」」」」」

「それに、この段ボールの上に埃が殆ど乗ってなかった事とガムテープが新しい事から、南城先生自身が2年生の時と3年生の時の活動を記録したアルバムを抜き取って、それを再びガムテープで封をして段ボールを元に位置に戻したと考えれば納得がいく!」

 俺はそう断言したけど、ここで藍が『ハッ!』という顔になった。

「そ、そういえば南城先生はこの同好会の顧問になってから1か月以上経つけど、この学校のOGだという事だって拓真君のお姉さんの話が出るまで隠していたし、昨日までは『名ばかり顧問』である事を理由にして、何1つとして顧問らしい事をやってない!しかも、このギターを最初に使ったのが本当に南城先生だったとしたら、同好会のOGだったという証拠を消すために、私たちが知らない間にアルバムを段ボールから持ち出したとすれば話の筋が通る!しかも、どの段ボールに入れてあったのかを知っていたから、他の段ボールには目もくれず、目的の段ボールだけ開封したから埃が積もってなかった点も説明がつく!」

「そういう事だ!南城先生はCDが残っている事を忘れていたのか別の人がCDを記念に残していったのかは不明だけど、とにかく、アルバムの存在を知っていて、なおかつ、この第二音楽室に出入りできる人物で、そう古くない時期にとなると、南城先生が一番怪しい!というか、南城先生以外の先生には動機が無いから、南城先生しか犯人はあり得ない!

 俺は再び断言するかのように言って右手をグッと握ったけど、今度は唯たち全員も首をウンと縦に振って俺に同調した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

旧約 俺の元カノが義姉に、今カノが義妹になって、家も学校も・・・ 黒猫ポチ @kuroneko-pochi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ