第45話 諸葛孔明?
学校のHPの掲示板にも、春花堂のHPの掲示板にも『私立桜岡高校軽音楽同好会 放課後お喋り隊 ライブ開催』という文字がポスターと共にアップされているし、『うなパイファクトリー』や学校の廊下の掲示板にもポスターが貼られ、全ての準備は整った。
琴木さんを含めた軽音楽同好会『放課後お喋り隊』の練習は毎日熱心に・・・と言いたけど、相変わらず女子トークの時間が続いてる。まあ、「練習10分、トーク110分または170分」が、練習とトークが半々程度にまでなって改善された(?)ように見えるけど、恐らくライブが終わったら元に戻りそうだようなあ。実際、先輩が「ライブが終わるまでの辛抱だ。今は練習をしよう」などと訳の分からん事を平然と言ってるし、唯たちも同調してるからなあ。
そして今日は土曜日、つまりライブ当日だ。
琴木さんは会社のトラックと共に琴木家専属の運転手(!)が運転する高級車で朝早くから学校へ来たから俺は正直仰天したぞ!!俺と南城先生がドラムセットを積み込むと早速『うなパイファクトリー』に向かったけど、どうやら琴木さんは学校のキーボードではなく自分のキーボードを使うようで、しかも昨日のうちに『うなパイファクトリー』に運んであると言ってた。南城先生は自分が運転する軽自動車でトラックの後ろを追い掛けていき、俺は藍と唯と共に爺ちゃんが運転する車でトラックを追い掛けた。ただし、先輩だけはお父さんが運転する車で先に『うなパイファクトリー』へ向かったから学校に来なかった。えっ?先輩はずるい?いや、そうではなくて、先輩がいると逆に足を引っ張るからです!
『うなパイファクトリー』に着いたのは午前9時頃だ。俺たちはトラックからアンプとドラムセットを下ろした後はエレベーターで2階のホールに運び、開館時間である10時までに全ての準備を整えた。
開演は10時半の予定だから、それまでは待機となるのだが・・・
「うわー、ホントに凄い人よねー」
「ホントホント、よくもまあ集まったという表現がピッタリよね」
「桜岡高校の半分以上の生徒が来てるとしか思えないわね」
「しかもー、藍先輩と唯先輩の個人応援幕まで作ってライブを見にくるなんて、月曜日の段階では誰も予想してなかったですよー」
「拓真君の作戦が完璧に決まったわね。私も今回ばかりは拓真君に頭を下げるしかなさそうよ」
「そうそう。唯も今回ばかりはたっくんに脱帽だよ」
「さすが凄腕弁護士夫婦の息子さんね。先生の想像を遥かに超えてるわよ。ホント、平山君は
今、俺たちは2階の喫茶コーナー脇から会場となっているホールを見てるけど、既にホールには大勢の人が集まって来ていて一般の見学者の通行に支障が出そうなので、うなパイファクトリーの従業員たちが急遽集められて会場整理や誘導係をやっているほどだ。しかもエントランスホールや屋外に大型テレビが用意されていてライブの様子を見れるようになってるから、そちらの前にも大勢の人が陣取っているのがここからでも分かるほどだ。
俺は唯たちがそう言って褒めちぎるから、正直「勘弁してくれよなあ」とボヤキたくなったけど、あくまで俺は周囲の人間をうまく焚きつけただけであり、最初は個人応援幕を作るほどの人気になるとまで思ってなかったのも事実だ。
えっ?人集めに困ってる筈のバンドなのに、どうしてここまで盛況なのか分からない?
あー、それは事実ですけど、俺は単に女王様親衛隊と姫様ファンクラブの競争意識を
最初に動かしたのは唯だ。唯は姫様ファンクラブ会長の山羽に「山羽君、土曜日のライブにはみんなと一緒に見に来てね」と唯スマイルを使ってライブに来るよう言った。いや、唯がやったのはこれだけだ。山羽は唯に直接言われたから超がつく程感激して、唯派のネットワークを駆使してライブに行く連中をかき集め、たった1日で当日は部活動などで来れない人を除いて2年生を中心に100人以上を確保する事に成功し、唯に得意気に「土曜日には100人もの大応援団を引き連れてライブに行きます」と宣言したのだ。
当然だが、女王様親衛隊長の本多は面白くない。唯が山羽に直接報告していたのを聞いていたからだ。というより、藍と唯はわざと一緒に行動していた(行動させていたが正しい?)のだから藍の目の前で山羽が唯に報告するのは当たり前だ。まさに親衛隊長から見たら女王様を侮辱されたも同然なのだ。だから今度は藍を使って本多を「本多君、ユイには100人単位の大応援団が来るみたいねえ。本多君には山羽君以上に期待してるんだけど、ガッカリしたなあ」と焚きつけた。いや、藍がやったのはこれだけだ。本多は藍の一言に奮起した事と山羽への強烈な対抗意識から藍派のネットワークを駆使して、こちらもたった1日で当日は部活動などで来れない人を除いて2年生を中心に100人以上を確保する事に成功し、本多もまた藍に「土曜日には100人以上で藍さんの晴れ姿を応援する事を約束します」と得意気に宣言した。
後は藍派と唯派が競うようにして動員人数を増やし、自分たちの方がより熱心に応援しているとアピールしたいから、あの手この手で藍や唯を応援する方法を考えだしたという訳だ。もちろん、『
一般の来場者も興味津々でライブ会場の端で遠目にこっちを見てるから、藍も唯も琴木さんも、さらには南城先生までもが興奮するのも無理ない。
そんなライブ会場と化した『うなパイファクトリー』の2階ホールを俺たちは通路の端でコッソリ見てるのだが・・・バンドメンバーの中で一人だけここにいない人がいる。そう、先輩だ。
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