忘れましょう

問題。一九五二年にはじまった、菊田一夫原作のラジオドラマ「君の名は」は、毎回おなじナレーションで始まりました。「〇〇とは忘れ去ることなり」、〇〇とはなにか?

















 答えは、「忘却」です。

「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」

 主人公の春樹と真知子が、互いに愛し合いながら、すれ違ってなかなか会えない。

 忘れてしまったらどんなに心が軽くなるだろう。

 だけど忘れられない、という二人の心を詠んだものだそうです。


 落ち込んだり迷い悩んだりするのは、忘れていないからです。

 いっその事忘れてしまったらどんなに楽だろう、だけど忘れられないから心が沈むのです。

 忘れてはいけないものもありますが、忘れていいことは忘れたほうがいいです。

 年中重いコートを引きずるように歩いていては疲れてしまいます。

 忘れることができない、という人もいるかも知れません。

 でも人は、同じことを四六時中、三百六十五日、寝る間も惜しんで覚え続けているなんてできないのです。

 昨日の晩ごはん、一週間前の晩ごはん、一年前の晩ごはん、何を食べたのか正確に答えられないように。

 たまにそういう人もいます。

 稀有な方です。

 嫌なことは一晩寝たら忘れるようにしましょう。

 わたしたちは、過去や未来に生きているのではないのです。

 今、この瞬間を生きているのです。

 道歌にもあるじゃないですか。

「今今と 今という間に 今ぞ無く 今という間に 今ぞ過ぎゆく」

 こういうのもあります。

「目鼻口 手足は人の 並なれど 心一つで 廃る身体ぞ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る