第33話

激しい攻防が繰り広げられている

剣を避けて銃を発砲するが剣で防がれる

魔力弾を連続で放つが全て回避される

速度は十分あるがリアレベル相手ではほぼ役に立たない

しかし、それでも銃を持つだけで戦略の幅は広がる


「強くなったね」

「そりゃね」


銃で剣を防ぎ蹴りを食らわせる

リアは蹴りを喰らい蹌踉めく

その隙を突いて銃を発砲する

魔力弾が当たり肩から血が流れる


「へぇ」


リアは笑みを浮かべ魔法を発動する

複合魔法という多属性魔法を放ってくる

闇魔法で壁を作り攻撃を防ぐ

攻撃の隙がなく攻めることが出来ない

盾を作り攻撃を防ぎながら銃を発砲して牽制

する

リアは更に距離を取ったと思ったら壁を蹴り猛スピードで接近してくる

盾で防ぐも防ぎきれずに吹き飛ばされる

壁に激突して私は倒れる


「強くはなったけどまだだね」

「これって人間の力?」

「英雄王システムは人間が他種族を牽制する為の物だよ。当然その力は並の人間を大幅に超える」


リアは剣をしまう

私は立ち上がり闇魔法で盾を作り出す


「この盾強いんだけどどうも耐久性が心配になる」

「持続しないからじゃない? 魔力を込めて持たせる訓練したら?」

「なるほど、それは必要になりそう」


私は魔力を一点に集めて生み出した球体をその場でその形で留める訓練を始める

集中力と精神力を馬鹿にならないほど使い1時間ギリギリ持つ程度であった


「これを余力を残した状態で4時間やってみよう」

「……4倍、頑張るかな」


リアが付き添った状態で訓練する

途中で気づいたことをリアが言いゆっくりと修正しつつ留める

いつのまにか朝になっておりシドラが地下に現れる


「お前、徹夜してたのか?」

「はい」

「流石に休め。これ以上肉体を酷使し続けると肉体が拒絶を始めるぞ」


いつのまにかリアは隣で寝ていた

シドラがリアに毛布を掛けてシドラは上に戻る

私は訓練を辞めてシドラの言う通りに休む為家へ向かう

リアを上に運んでシアのいる部屋で寝かせる

私は今までの功績により一軒家の家を手に入れていた

本当なら他にもシエルは渡そうとしていたが要らないと断っていた

下手に地位を手に入れると貴族などが何を言うか分からない

鎮圧すればいいが面倒ごとは嫌いなのでそもそも貰いはしない


……流石に眠いなぁ〜


家に帰りベットに入り眠りにつく


翌日になって目を覚ます

一日中寝ていたらしく慌てて地下に向かうとシドラとリアが待機していた


「昨日はしっかりと休んだなってお前」


リアは近づいてきて私の身体を観察する

腕や足などを触り何かを確認している


「うん、やっぱりシャルは進化したね」

「進化?」

「少しだが姿が変わってるぞ。このままなら後一年半くらいで吸血鬼からクラスアップ出来るな」

「上あるの?」

「知らないけど多分ある。現にシャルの身体が変わってる」

「まぁ、良い。特訓を始めよう」


今日の特訓は2人の英雄王と戦った後シアと一戦する事になっている

体力を温存したいが2人相手に余力を残す余裕はまだ無い


「よろしくお願いします」


数時間戦いは続き敗北した

約半年は戦っているのに未だに勝てていない

あの時のリアより何倍も強くなっている

人は短い人生の中で成長する

吸血鬼から見て少ない時間でも人間にとっては大事な時間である事が意味するのだろうか彼女達は未だに成長を止めていない


……どこまで強くなる気なんだろう? チートクラスには強くならないとこの世界は生きていけなそうだ


次はシアとの戦闘でシアは大きなハンマーを持っている


「やろうか」

「お願いします」


銃弾はハンマーによって弾かれる

巨大なハンマーは掠っただけでもかなりのダメージになりもろに食らえば内臓や骨に尋常ではないほどのダメージが入る

死に続けた結果痛みに段々と慣れて再生能力は高くなったがそれでも強力な一撃を受けた後は暫く攻撃には移れない

壁を咄嗟に作り回復を待つ


「大地魔法 大地の槍」


地面から槍を生やして壁を貫くと同時に肩が貫かれる


「どうしたよ。まさかこの程度?」

「闇魔法 ダークバースト」


一点に集約させた魔力を放つが地面から現れた壁に防がれる

よく見たら何重にも壁は張られていた


……防御を固めるのが早いな


「闇魔法 ブラックウェポン」


無数の武器を飛ばして攻撃するが壁で防がれる

壁が突然崩れて砂の破片が私めがけて飛んでくる

突然の出来事に回避が出来ず食らう

一つ一つのダメージは少ないものの全身に当たり全身から血が流れる

物によって鋭いものがありそれが複数刺さる


……痛い、抜かないと再生できない


抜こうとしているとハンマーを振ってくる

回避して距離を取るが魔法で距離を取ったまま攻撃を仕掛けてくる

壁を作り攻撃を防ぐも連続攻撃に耐え切れず壁が破壊されハンマーで吹き飛ばされ壁に激突する

血を吐き倒れ再生を待つ

ハンマーの一撃で骨が砕け内臓が破裂して意識が無くなる


……吸血鬼でもショック死はするんじゃない?


倒れた後数日経ち目を覚ます

一日で傷は完全に癒えていたが体力や魔力、集中力などの回復をするために身体が休んでいたのだろうとシドラが言っていた

負荷が大きすぎた故に一度の気絶で長い時間眠っていたらしい

それと更に成長していると言っていたが自分で鏡を見て確認してもイマイチわからない

特訓は少し経ってから続行することになった

特訓の相手は団長たち全員である

様々な属性魔法に対応する為にそれぞれの魔法のプロとして参加していた

団長クラスは皆強く隙を見せれば一斉に襲い掛かってくる

連携も取れており集団戦闘の心得がある


「どうした! その程度か」

「……攻撃の隙がない」


壁を四方に張りチャンスを伺おうとすると全員攻撃を止める


……高威力の攻撃かな?


壁から出ようにも出られない

形勢を整えようとしたのに逆に追い詰められてしまう


「闇魔法 ブラックウェポン」


上空に武器を飛ばして団長たちへ攻撃を試みるも手応えはない

壁を解くと一斉に攻撃を放ってくる

壁を生成するが防ぎ切れずに四方八方から攻撃を食らい敗北する

数日かけて何度も戦い数十戦目でようやく団長達に勝つがギリギリの勝利であった


「……漸く勝てた」

「負けたわ」

「強くなったな」

「次の特訓あるからお前は休むなよ」

「は〜い」


次の特訓はクイナと戦う事だった

龍の力を持つクイナは魔法無しの戦闘訓練を行った

龍の装甲を我が身ひとつで破るのは至難の技である

その装甲での攻撃もかなり強く防ぐ事は困難を極める

魔力すら使えない為いつも防御に張っている分の魔力が無い

一撃が剣や槍のように鋭く槌のように重く銃弾のように速い

魔力に頼っていた分吸血鬼本来の力を出せていなかったのか思うように体が動かない


「強くなるには基礎を高める事も重要です。身体を鍛えれば戦略の幅も広がりより強くなれます」

「魔力なし?」

「はい、少しでも使えば雷を落としますのでご注意ください」

「警告ありがとう」


流石に生身一つで雷を食らえば吸血鬼とはいえ再生出来るか心配になる


……脅迫の仕方が怖い


手刀で胴体が切られる

手刀でこちらが切ろうにも鱗が硬すぎて逆にこちらがダメージを負う

再生能力を酷使して連続で殴っても受け流しや回避をされ与えられる攻撃は数発である

全身が鱗で硬く鳩尾を殴ってもダメージが無いように見える


「硬すぎない?」

「それが龍の鱗です。一つ一つが攻撃を防ぐ強固な盾となります。私にも勝てないんですか?」

「イラッとしたなぁ〜、今日中に私が勝ったら辱めてやる」

「出来るならどうぞ。私に勝てるならですがね」


結果は一度も勝てなかった

近接戦のみであればクイナは世界で見てもトップクラスの実力を持つ存在でありそう簡単に勝てるわけではない

しかもクイナに関しては無傷で途中から時々立ちながら寝ていた


「感情を露わにして戦っても勝てませんよ。冷静になり敵を見定めないと」

「勝てない」


2ヶ月に渡りクイナと戦う

実際これは最後から2番目の訓練で難易度は他に比べて格段に上がっている

全ての状況に適応するための訓練で何があっても動じずに自分のペースで戦えるようになるための物である

勝てずとも一歩一歩進んでいるのは確かである

これは私が高位種族吸血鬼の更に上である最上位種族へと進化を遂げる為の手段である

更に時間をかけてクイナを倒す

時間はかなりかかり半年近く掛かっていた

訓練からひとまず解放されて束の間の休息を楽しむ

やる事は特にないのでまずは食事を取りに店に入る

貴族が問題を起こしていた時にあった男性がやっている店である

酒場でもある為冒険者などが酒を飲んでいる

その中でも目立つ人物の元に行く

隅にあるのに目立っているのはそれが見覚えのある魔族であったからである

流石に姿を少し変えており人と変わらないように見える


「相席いいかな?」

「構わんよ。久しいな。話では特訓してたらしいな」


そこにはラフィラが居た

のんびりとコップに入った飲み物を飲んでいる

戦う気など無いようで近付いても警戒すらしない


「どこから聞いたよ。強い人々に鍛えてもらってる所」


私は座り答える


「英雄王どもだな、全くお前は厄介な存在だな。まぁ、良いそれよりも重要な話を持ってきた、魔族はこれから戦争を仕掛けることになった」


ラフィラの言葉を聞き警戒する


「何処と?」

「ゼルゼーロっていう国で別名奴隷大国、さまざまな種族を奴隷にしている」

「そこには魔族もいる?」


この国やエルドーダではないことが分かりホッとする

奴隷大国と呼ばれるゼルゼーロはこの国の西側に位置する国でこことはある程度仲が良かった

馬鹿は馬鹿と仲良くするのはどの世界でも共通なのだろう


「勿論、だからこそ解放のために戦争を仕掛ける気だ、もしも手を貸して欲しいと言われても手を貸すなよと言いに来た」

「成る程、その国は人の国なの?」


ラフィラは頷く


「あぁ、人が高位の存在だと考え他の種族を下に見ている」

「つくづく人間という生き物は……これだから駄目だね」


ため息をつく

ラフィラは私の言葉に驚いている


「ほぉ、お前からその言葉が出るとは思わなんだ」

「昔に色々とあったのだよ。それでそれだけ言いにわざわざ?」

「それだけではない。同盟を組まないか? メリットとしてはこちらからは攻撃をしないが条件として裏切り者をこちらに渡して欲しい」


条件さえ満たせば魔族は同盟を結んだ後攻撃はしてこないだろう

裏切り者を殺すべきとしてこちらに来ていたのだから

これを受ければ少なくとも魔族との戦争を数年はしないで済む


「……今それはいい話だけど悪いね、断る」

「どうしてだ?」

「裏切り者のクロルは私にとって大事な存在だから、たとえ戦争になっても渡す気は無い」


私はラフィラの疑問に淡々と答える


「何故そこまでする?」

「さぁね、気分じゃない? 私は気分屋だから気分によっては今ここで殺し合いも構わない」

「辞めておこう。ここで戦えば俺は死ぬ」


ラフィラは立ち上がる


「同盟は諦めるがしっかりと約束は守れ」

「まぁ待て、裏切り者は渡せないが別に他でも良いだろう?」

「何を考えている?」

「我が兵の力を見せてあげよう。しかし、それにはあと1年程度は必要となる」


私が必要な時間を提示すると不満を露わにする


「その間に何があるかわからないぞ」

「そこが問題……ではない。我が国の王に話をして1年長引かせる。先に言うけど可能だよ」

「他国の政治介入で情報漏れを恐れるからか?」

「そうなればいいけどこの国はエルドーダと同盟を結んでいる。人の軍事国家相手に何かをしようとは思わないはず……まぁ、一年とは行かずともかな。王と話をしてこようか」


私は立ち上がり店を出る


「おっ、飯は食わないのか?」

「後でまたくるよ。善は急げって奴さ」


ラフィラを連れて城へ向かう

シエルの自室に向かい扉を叩く


「誰です?」

「私だよ」

「どうぞ」


扉を開くとシエルが椅子に座っていた


「我が主よ、何用ですか?」

「同盟などの話をしにきた」

「よう、お前は王とどう言う関係なんだ?」

「気にしたら負けなのだよ。それよりシエル交渉だって」

「そこの椅子に座ってください。話を聞きましょう」


ラフィラを椅子に座らせてシエルは交渉をし始める

私はベットに腰掛けて交渉を見ている


「……それでは時間が足りない」

「えぇ、なので魔族に攻撃をしてもらいます。簡単に言えば近くに魔族が居ると気付いてもらい私たちが協力をするといい準備が整う一年の間私の国の兵を送り奴隷について動けなくさせます」

「出来るのか?」

「できますよ。新兵器も開発中ですし今でも十分戦えます」


私は交渉しているシエル、ラフィラの話を聞くのをやめて戻りご飯を食べて一人で特訓を行う

シエルはラフィラに言った通り魔族の存在を使い上手くゼルゼーロに軍を送ることに成功する

協力という名の行動抑止を行われゼルゼーロの王や奴隷商人は動けない

国の国民は見たことのないような武器を持つ我が国の兵士に怯えている

奴隷大国とは言えど他国のいるなら下手に大きい動きはできない

時間が経つにつれてシエルの思い通りになっていく

1ヶ月で今やシエルはゼルゼーロすら掌握する存在になっていた

王としての才能というよりは人を操る才があったようでそれが王になり覚醒している


「掌握術とは中々にやばいことするね」

「この程度容易いです。私は奴隷が嫌いです。何故同じ生物として共存が出来ないのですか?」

「それが人間だよ。自分より強い生き物を嫌い弱い生き物を下に見る愚かなで弱く醜い種族だよ。人同士ですら争うほどに」

「……主は何を見てきたのですか?」


私の言葉を聞きシエルは質問してくる

普通の人ならこんな事は言わないのだろう


「私は世間を知らない……けど人の感情を見てきた、物心着く前から多分ずっと見て理解してしまった。見えるものと見えないものでは決定的に違う事がある」

「理解ですか? 見えるものには出来ない理解があると言う」

「逆もまた然り、見えるから理解出来るせいで見えないから理解ができない、見えるから理解が出来ないが見えないから理解ができる……人は自分の見てる物が真実だと言うけれどもそれが真実であるかなどは誰も分からない。これは嘘かも知れない、これは偽りかも知れない。可能性を言えば全て嘘にだって真にだってなる。自分の考えが正しいとか他人の考えが間違っているとか何が正しくて何が悪いとか常識だからとか当たり前だからとかくだらない……そんな物で人を救えなどしない。縛るだけ縛って結局守れないならそんなものは消え失せろ」


私は言葉を吐き出す

世界に言いたかった事でもう二度とあの世界で言えない私の意見を今ここで言う

シエルはその言葉を聞くもいまいち理解できていないように見える


……私はこの世界で法を敷く、全てを平等に全てを守る為に全てを縛り付ける、法は人が守るためにあり人を守るためにある。それを決めるは人にあらず……決めるは世界であるが法を敷くには言葉が必要、私がその役割を果たそう



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ヴァンパイア リインカネーション〜吸血鬼に転生したので自由に過ごしたい〜 代永 並木 @yonanami

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