第14話

向かう途中半分くらいまで魔物を一体も見なかった


「魔物がいないのぉ」

「そうですね、あの戦争で魔物が減ったのでは?」

「そうじゃな、ただまだいるかも知れないから警戒は怠らないようにな」

「はい」


国に近づき後数キロの所で熊の魔物が現れる

熊の魔物は数メートルありこちらへ突っ込んでくる

馬が暴れたので私が止めているとクイナが熊めがけて突っ込んでいく


「クイナ!」

「私がやります!」


攻撃を腕で防ぎ弾く

クイナの戦闘態勢は手足が龍の鱗に覆われ雷魔法で近接戦をする


……あいつみたいな戦いするのぉ


昔の事を思い出して感傷に浸る

クイナが熊の魔物を倒し戻ってくる


「お疲れ」

「準備運動にもならなかった」


少し不満げにそう言って馬車に乗る

1時間くらいでエルドーダに着き門番に近づく


「この国に何用だ?」


私ではなくクイナが受け答えをする


「私たちは商人でこの国に鉱石を売りに来ました。ここまで数日かけてこの国に来たのですがここは何か証明書などが必要でしょうか?」

「いや、必要ない。その餓鬼は?」


私を見て聞いてくる


「私の妹です。血は繋がってないですが同じ商人の娘として共に旅をしています」

「そうか、まぁ、良い。通れ」


門番がそう言って門を開く

頭を下げて通っていく


「上手いのぉ〜」

「実際私は商人の娘ですから」

「そうなの!」

「昔、両親代わりになってくれた2人が居て育ててもらったんです。2人は今もどこかで生きてると思いますよ。自分達のことを人外と呼んでましたし」

「へぇ、商人の技を習得してるだね〜」


雑談を交わしながら目的の王がいる建物に着く

城ではなく三回建ての大きな建物であった

そこに2人の門番がおり先ほどの門番よりも強そうな雰囲気がある


「ここに何用だ?」

「鉱石を売りに来ました。今あるのはディガリア鉱石、クウジン鉱石と先程狩った熊の両手です」


いつのまにか熊の両手を門番に見せる

門番は驚き退くが近づいて熊の手を見る


「これはセルリベアーじゃないか。本当に狩ったのか?」

「死体が数キロ先に残ってると思います」

「そうか、それは助かる。最近奴が暴れていたんだ。一体だけだが門番を務めた兵士が何人も怪我をしていて困っていたんだ」

「それは良かったですね。王様は居ますか? 直々に交渉したいのですが」

「王は居るぞ。案内しよう、馬車はそこにでも置いておいてくれ」


門番が指差した方向へ馬車を置き鉱石を袋に詰めて持ち運ぶ

門番の1人の案内を得て王の前に着いた

王は誰かと話をしているようだ


「何用だ? 今話をしているのだが」

「王に鉱石を売りに来たという2人がいたので案内しました。この2人はセルリベアーを討伐したらしくこれを持ってました」


敬礼して説明した門番はセルリベアーの両手を王に見せる


「おお、この2人が討伐したのか」

「今、数人の兵士に確認しに行かせました。両手を持っていてそれも新しいことから嘘ではないと思われます」

「ほう、この2人がか」

「リーレロック王、話の途中ですよ」

「おぉ、悪い悪い。他の部屋で待機させておいてくれ」

「分かりました」


門番に連れられ隣の部屋に入り待機する

門番はすぐに仕事に戻る


「どうするのじゃ? 簡単に入れたが」

「そうですね。交渉に持ち込む方法がわかりません」

「だよね」


クイナは商人の娘ではあるがそれだけで政治の方に持ち込む方法は知らない

下手に動けば物理的に首が飛ぶ恐れがあるが飛んでも再生する私とまず相当な斬れ味がある武器で切らないと首が飛ばないクイナの2人なのでほぼその心配はない


「……そこは上手くやろうかの」

「そうですね。この鉱石だけで出来るとは思えませんけど」

「熊一体討伐だけじゃ、恩もろくに売れないからのぉ」


王が来るまで待機する

1時間経ち漸く王が部屋に来た


「遅れてすまないな。それで何用だ?」


商人に聞かせるような声ではなく戦場で使いそうな声で聞いてくる


……バレてるのぉ


「簡単じゃよ、私がいる国に協力してほしい。この鉱石は少ない資源の中から選んだ物じゃ受け取ってほしい」


袋に入った鉱石を渡すが受け取らない

国の交渉となれば警戒は当たり前


「2人の居る国はイルダーナだな」

「はい、そうです。王を王座から引きずり下ろします、今とは違う政治体制にする気です」


クイナがそう言うと王は怪しむ

王を王座から引き摺り下ろすのは本当なら困難な出来事である


「出来るのか?」

「無能な王を引きずり下ろすのは楽な事じゃがその後が心配でな。私達の中に政治関係に強い者が居らぬ。信頼関係はおいおい築くとして力を貸してもらいたい」

「こちらへのメリットは?」


……さて、ここからが正念場だ


「協力をするために同盟を組みたい。我が国は今役に立つかと言われれば立たないが少なくとも今ある技術を主らに提供しよう。その上で完全協力関係を築きたい。軍事も研究もありとあらゆる我が国の情報を主らに渡す」


私の言葉にいち早く反応したのはクイナであった

商人の娘という立場からして情報の重要性について理解しているのだろう

立ち上がり私に向かって叫ぶ


「なっ、シャル様何を考えて! 全ての情報を渡せばどうなるかくらい、それに約束はできませんよね?」

「分かっているさ。しかし、わたしにはそれ以外の手段が思いつかない。魔族との戦争によってボロボロになった国を立て直すには軍事国家の後ろ盾が必要となる。兵を大量に寄越せとは言わないが同盟関係を築いていると他の国々が気付けば我が国がボロボロでも攻撃はしてこないだろう。魔族もだ、返り討ちにあう可能性が捨てきれないからな。ここは私を信じてくれクイナ、そしてリーレロック王よ」

「情報提供は本当にできるのか?」

「出来るとここでは言い切ってみせよう。今は交換条件としてそれしか提供できないからな。出来なければ破滅を待つだけ、渋々とはいえ奴らも許可をするだろう。そしてこちらからは軍の派遣以外にも情報を渡す以上これについては今後我々以外との会議の場などで詳しいことを話さないことで同盟としか言ってはいけない。あとは同盟についてだが対等に全てを行うこと以上」

「……暫く考えさせてくれ。この部屋を使っても構わん。明日までには答えを出そう」


そう言ってリーレロック王は部屋を出る

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