第15話

王が部屋を出てから少し経ちクイナが口を開く


「もし、同盟を破棄してきたらどうするんですか?」

「その場合は戦争じゃろうな。情報を渡した後は不利ではあるが致し方なし、私が一人でこの国を相手取る」


クイナは驚き言葉も出ないようだ


「なっ、いくらシャル様でも出来ませんよ」

「できるかどうかでは無い、落とし前は自分でつけるだけじゃよ。それよりも連絡せねばな」


持ってきた小型水晶に魔力を込めると声が聞こえる

国で待機しているリアの声だ


「交渉はどうだった?」

「まだどうなるか分からないけど国の全ての情報を渡す代わりに同盟を結ぶ」

「成る程ね、それ以外には方法は?」

「あるだろうけど今は時間が惜しい」

「手っ取り早いけど危なくない?」

「今は危ない橋を渡らないと無理じゃろ? 今は生存の可能性がある方を選ぶ」

「分かった、他の人に伝えてくるよ」


そう言って声は聞こえなくなる

日が変わるまでのんびりとする

やることが無いので日が暮れたあたりで、もしもの時のために体力を温存するために眠りにつく

特に問題なく翌日を迎えた


「さて、答えを聞こうじゃないか」

「あぁ、そうだな。決めた」

「ならば私は目を閉じよう。クイナは何も言わないように……私が目を閉じている間にそこにある鉱石を手に取れば交渉成立で取らないなら交渉失敗、交渉用に持って来たものだからな」


私はそう言って目を閉じる

クイナにもそうさせることもできたが万が一を考え警戒させておく


「時間は2分」

「分かった」


王は答える

2分待つこの時間は長い

国の命運がかかっているも同然なのでここでミスれば少なくとも魔族が攻め込まずとも他国が攻め込んでくるだろう

成功すればその可能性を最大限減らすことが出来る

運命の分かれ道である


2分経ち目を開ける

ここで鉱石をとっていてもここで終わりなわけではなく長い時間をかけて信頼関係を築いて他の国とも少なからず交渉することになる

取っていないなら別の国に同じ方法で呼びかけるがその時間があるかは分からない


……魔族がいつ攻撃するか教えてくれればその時間内に手を打てるのじゃがそうは甘くない


机に置いてあった鉱石は無く王の手元にあった


「良いのか?」

「そちらこそ良いのか? 情報の提供は危険だ」

「分かっているさ、この世は知っている者勝ちの世界だ、情報があれば勝てるが情報が無ければ勝てる戦いも勝てない。もし情報を得た後敵対するならば私が代表してこの国を滅ぼす……良いな?」


王を脅す

全ての情報を渡すが裏切れば滅ぼすと脅迫する事であらかじめ念を押す

交渉の仕方などから見た目通りとは思わないだろうからこその脅しである

転生者の情報は誰も持っていない

精々リアが持つ情報だろうが残念ながら前世ではこれと言った功績を残していない

現在の全力に関してはリア以外は知らないこの状況では私の力は完全に未知数


「成る程、こんな真似をしたのは裏切られても勝てる自信があるからなのか……一回戦ってみるか? 滅ぼせるかどうか」

「それは有難い、仲間の実力は知っておいた方が良い。裏切るつもりはなかろうな? 王が決めろよ? 位が高いからと言って他の馬鹿な話を聞くなよ。私には策がある」


敢えて乗るが全力は出さない

これは私だけでなく王の方も下手に手を見せはしないだろう

やるとしても魔法なしの剣術勝負辺りだろう


「それで試合形式は?」

「剣術勝負、魔法は無しだ」

「良いよ。そんなに剣に自信があるんだね」

「まぁな」


建物を出て訓練所に移動する

木刀を渡される


……壊れそうじゃな


王が木刀を構える

私も木刀を構えるとクイナが合図を出す


「始め!」


合図とともに試合は始まるが私達は動かない

相手の出方を伺っている

時間をかけるのを嫌い私は突っ込んで薙ぎ払う

王は避けてカウンターを仕掛けてくるが私は逆手持ちにして防ぐ

飛び退き持ち方を変え突きを繰り出すが寸前の所で防がれる

連続で斬りかかるが受け流しや回避で攻め切れない

力を込め王が上段の構えを取る

木刀を勢いよく振るう

両手で木刀を持ち攻撃を防ぐが木刀が限界を超え砕け散る


「やはり木刀では壊れてしまうの」

「腕は確かなようだな。これで魔法のほうが得意となるとかなりの実力だな」

「まぁね、流石は軍事国家の王、強いのぉ」

「これからどうする気だ?」

「国に戻り報告かのぉ。同盟の話はおいおいする事になるのぉ、まぁ、王候補がおらんから王を見繕ってからじゃな」


王がいないと政治的な会話はまだ出来ない

仮にも国のトップでは無いと国民が不満を持つだろう


「出来る限り早めに話をしたいのだが、2ヶ月後にそちらへ向かおう。それまでには仮でも王を決めておいて貰いたいな」

「了解じゃ、2ヶ月後までには王を探そう。では帰らせてもらう。クイナ、行くぞ」

「はい、では失礼します」


馬車に乗りエルドーダを出て帰路を辿る


「脅しをするんですね」

「情報は大事じゃろ? 未知数の敵と戦うならまずは情報集めじゃ、あの様な事でも言えば少なくとも半年程度は動けない」

「ろくに情報が無い立場を利用して裏切らせないなんて出来るんですか?」


クイナが首を傾げて聞いてくる


「少なくとも彼奴には効くじゃろう。2ヶ月後の指定はその間に少なくともあの国の戦力について知りたいからじゃろうよ。現状ボロボロとは言え軍事国家を滅ぼすなどと語ったのだからハッタリかどうか見極める必要がある」


帰路は暇な為雑談を交わす

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