第12話

数日間眠り起きたのは4日経った頃だった

目を覚ました時はまだシアとシエルは眠っていた

クイナは未だに傷が治りきらないが普通の生活は可能なレベルまで回復していた

とある人物に呼ばれ牢獄に足を運んでいた

その人物は炎を使うヴァーミリオンという騎士団長の1人である

戦争が終わっても尚休む事はほぼ許されてはいない


「主はヴァーミリオンじゃったか? 牢獄に入れた魔族2人はどうじゃ?」

「大人しく質問にもしっかりと答えているが上の命令だと言っていて作戦の意図などは分からなかった」


私の質問にヴァーミリオンはしっかりと答える


「上の命令……殺した奴もやっておったな。此奴らより上の立場の者が戦争時に居たか?」

「分からない。居たとしてももう死んでいる筈だ。こうなっては真実を聞くこともできまい」


あの戦争で2人だけでも捕虜に出来たことは良いことではあるが命令を下した魔族が死んだ可能性があるのでほとんど捕虜として意味がない

用済みになればこの2人はすぐに殺されるだろう


「のぉ? お前より上の奴は生きてるか?」

「……命令を出した奴は生きているけどどこにいるか分からない。そいつは魔族の中でもトップクラスの実力者、七裁王の1人の第三席クロル・ルシフェル、実力も知能も他の七裁王よりも上と言われている。かなりタチが悪くて部下が何人もやられても眉一つ動かさないでどんな被害を受けても相手が滅ぶまで戦争を続ける」


1人が上司について話す

地位がかなり上で魔王の直属の部下の魔族であり作戦参謀を務めているらしい


……厄介やのぉ〜、其奴と対決せねばならないのか……もっと仲間を増やして徹底抗戦せねばならない


「……まだ戦争は終わってないようじゃな。今回でかなりの量の部下が死んだがそれでも兵はいるのか?」

「クロル様は魔物を使役できる。それだけでもなく自分の魔力で生み出した魔兵を操れその数は数万にも及ぶ」

「魔兵は今回いたのかのぉ?」


念のために魔兵についても聞く


「……居た筈、ただ戦争には参加していない。あくまで国までの道の案内しかしていない……数は100でも僕らみたいな中位魔族クラスはある」

「な、なんじゃと! ならば今攻め込まれればこの国は!」


……聞いておいてよかった。防御を固め……いやそれだけじゃ無理かの。また四箇所攻撃されれば守れない


牢獄から外に出てヴァーミリオンとともに王の間に向かう


「どうする気だ?」

「王に進言するのじゃ、通じぬならば別の手段を取らねばこの国は滅ぶぞ!」

「今いる兵全員でも防ぎきれない。そちらは何人使える?」


歯軋りをする

今は相手にとって国陥落の絶好のチャンスなのに動きが見えない事が何よりも疑問であった

攻撃をしてこないと思わせて攻撃もあり得る為これから最低でも数ヶ月はその攻撃を防ぐために防衛に力を注がねばならない


「……私を除けば1人じゃよ。シア……ギルド長は意識不明、クイナは戦闘に参加できる程傷は癒えて居らぬ」


こちらの人員もたった2人で私も眠り回復をしたからと言って魔族レベルを100体相手など出来るかは分からない

それに魔物を使役できるなら少なからず魔物も数百はいると考えるのが妥当だろう

いろいろなことが考えられる今では最も恐る事はただ一つ、クロル・ルシフェルがこの場に現れる事、実力者が現れるとなれば止めることは出来ない

古き英雄ことリアの力を持っても守り切れるとは思えない

ましてや相手は守るものなど無い滅ぼすためなら捨て身の特攻をしてくる相手

防衛ラインを最大限下げて死守する事もできるがそうなれば市民への被害は計り知れないだろう


……私が今やれる事は、吸血鬼という立場を利用した方法でクロルに会い話す事のみ、しかし、交渉決裂すれば間違いなく戦争になる。下手に刺激しかねない方法は取りたくはないのじゃが


ヴァーミリオンの案内で王の間まで行き扉を開くと団長たちが勢揃いしていた

王はこの状況に激怒しているらしい


「何をしているだ! 何のために貴様らがいる!」


団長たちに怒号をぶつける王に私は魔力で作った剣を放り投げる

顔を掠った剣は椅子に突き刺さる


「るせぇよ」


小さく怒気を含んだ声を発する


「無能な王だから政策もロクでもないんじゃな? 仕方が無くはないな。王の座から降りることを推奨するぞ?」

「なっ、我を愚弄するか。王を愚弄するとは万死に値するぞ! 追い出せ」


王の命令にこの場の誰も従わない


「知らぬわ、無能な王は消えよ、主の無能こそ万死に値すると知れ……団長達に話がある場を変えよう」

「話とはなんだ? ここで話してはいけないことか?」


団長の1人が聞いてくるので首を横に振り答える


「いや、外野がいないほうが良いと思っただけじゃよ。今回の戦争の犯人が分かったのじゃよ。クロル・ルシフェルという七裁王の1人で第3席、知能も実力も高いらしく其奴が今回の作戦を考えた敵の参謀じゃ。嘘か本当か分からぬがもう一度攻撃が来る可能性は捨てきれない。ヴァーミリオン殿、残りの説明をお願いしたい」

「分かった」


説明を任せて団長や王の様子を伺う


……情報戦で負けていたと言うのを置いておいてここを狙ったのは内通者がいたからかも知れないのじゃが……やはり分からぬな

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