第11話

時は過ぎ戦争予定日


魔族が動き出した

血蜥蜴の情報によると約1時間前に魔物と魔族がこちらへ進行してきた

迎え撃つために城壁付近で待ち構える兵士や冒険者の数はかき集められた分でも数万人にも及ぶ

人々は一箇所だけではなく四箇所同時攻撃であることに気づくのに遅れた


「しまった……なんで考えつかなかったのじゃ! 最初の魔族の攻撃が真正面からだったから?いや最悪を考えたくなかったじゃな」


……私も甘えておったか


私は気づかなかった

兵士たちも城壁の真正面にしかいなかった

そこで私達が取った行動は


『全員に次ぐ、真正面を死守せよ。リア、シア、シャル、クイナは残り3箇所を死守せよ。これは我が国の運命を賭けた戦争だ! 負けることは許されない、負ければ我々に明日はない』


東にシアとクイナ、西にリア、南に私を送り他のメンバーは皆北を死守する作戦になった

本来ならこんな手段を取ることはないが今回に限って言えば緊急事態に異常事態が重なったためである


「総員戦闘開始!」


戦いが始まる

魔族の数は合計で50に及び魔物は数千にも及ぶ

手加減などしてる余裕はなく最初から全力で戦う

闇蛇が魔物を嚙みちぎり敵陣に進んでいく


「はぁ!」


雷を纏い高速で魔物を次々と倒していくがぞろぞろと無限に湧いているかのような錯覚に陥る程魔物は数が多い


「闇魔法 ブラックウェポン」


大量の武器を作り敵陣に突っ込む

他のところを気にしている暇はなく戦いに明け暮れる

スキルの効果によって得られた3人の力を使い敵陣で暴れ回る

敵にも余裕がないようで魔族が数人がかりで国を滅ぼそうと魔法を放ってくる

魔力は枯渇し体力も限界に達しても戦い続ける

始まった戦争を誰も止めようとはせず終わりの時が来る事を待ちわびる

血反吐を吐いて身体がボロボロになっても戦う

皆がこの国の明日の為に戦いたくさんの者達がこの戦場で倒れていく

この戦争は数時間にも及び両者とも多大な犠牲を払って戦争は終わる

生き残ったのは人間側の元々いた数万人が数百程度になり魔族側は数千を優に超える数の魔物は全滅し魔族も50近くがたった3人になってしまった

真正面を除いた三箇所を死守したメンバーはシアが意識不明、クイナが重傷、リアが軽傷、私が無傷……無傷と言っても本来なら10回以上は死んでいる程の傷を負ったが吸血鬼の治癒能力で回復していたから終了時は無傷なだけだった

シアは戦争が終わると同時に倒れた

クイナは重傷で立ち上がる事がやっとな状況である

リアは英雄と謳われた実力を発揮して数が3番目に多い西側で軽傷で済んでいた

真正面が一番少なかったらしいがそれでもかなりの数がいた

生き残った人々ももう武器を持つ気力もない


「……よう、お前生きていたんだな」


正面に行くと水使いの騎士団長が捕虜を縄で縛る


「水使いの団長さん……無事で何よりじゃよ。私は人間ではないからのぉ〜」


私は笑う気力すらもう残っていない


「その銀髪は吸血鬼か。まぁ、良い。捕虜をどうするか考えていたのだがどうする?」

「どうするかのぉ〜、他は?」

「ヴァーミリオンは軽傷で無事だ。リオネットが重傷で先ほど運ばれた」


……炎が無事で風が重傷かな?


名前で大体どちらかを考える

あの結構な実力を持つ内の一人が重傷で運ばれていることからここも中々激しい戦闘が行われていたのだろう

城壁付近には大量の死体が転がっている

味方も敵も関係なく戦死者達が倒れていた

捕虜を見ると3人は諦めた風な感じで大人しくしている


「のぉ、何故攻め込んできたのじゃ?」

「上からの命令だ、詳しくは知らん」


嘘はついていないように見える


……尋問したいが今はそんな気力はない。疲れた休みたい


「それに関しては後じゃな。牢獄に入れておくのじゃ」

「分かっている。我々も疲労している。流石にこのままではまずいから牢獄入れて後にするか」


先程答えていた魔族が炎を出して攻撃してくるが魔法が途中で消える


「疲れてるの、分かるじゃろ?」


魔族の首が両断される

私は炎を出すと同時に迷いなく首を斬り裂いた


「他もここで殺す?」

「嫌だ、死にたくない! 大人しくするから殺すのはやめて!」


魔族の1人が慌てて必死に命乞いをする

完全に魔族の誇りを捨てていた

この魔族は誇りで命を捨てる事をしたくはないらしい

もう片方は何も発することなく無言でおとなしくしている

こちらは特に何もする気がないようで命乞いしている魔族の頭を撫でて泣き止むように宥めている


「立て、牢獄に入れる」

「分かってる」


2人は騎士団長2人の監視のもと牢獄へ連れて行かれる

ギルドに戻ると先に帰っていたリアが迎えてくれる


「……かなり攻撃食らってるね」

「数回死んだと思うくらい食らった。クイナとシアは?」


私が聞くと淡々と状況を説明してくれる


「知っての通りシアは集中治療を受けている、クイナも治療を受けているよ。取り敢えず生きてはいるがシアに関してはいつ起きるか分からない」

「そう、とりあえず生きてて良かった……疲れたから寝る」

「おやすみ」


ソファーに寝転がり眠る体制に入るといつもより早く眠れた

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