第10話

王が大きな椅子に座り怒号を浴びせている

扉が大きな音をして開いたのを全員が気づき扉の方を向く


「どうも、冒険者じゃがちとばかし話をしないか?」


そう言うと兵士が私を囲み武器を向けてくる


……野蛮じゃな


王の目の前まで行こうと歩くと武器を持った兵士が突っ込んでくる

軽く避けて足を引っ掛け転ばせる


「邪魔じゃ、のぉ? 主らはどんな作戦でやるんじゃ?」

「何故教えないといけない! 追い出せ」


騎士の1人が兵士に命令を出す


「この国が滅ぶか話すか二択を与えよう。意味が分からなくとも構わんのじゃが聡明な王族なら分かるはずじゃ」

「知るか! 奴を追い出せ、殺しても構わん。騎士団団長どもお前たちもやれ」


王に命じられ騎士達も立ち上がり剣を構える

3人の騎士が剣を持ち近づいてくる


……女性騎士も居るか


騎士の1人が女性であった

凛々しく騎士団のリーダーというのは頷ける

他の2人も団長と言われて納得できる威圧がある


「話を聞かぬか?」

「聞かない、平民の餓鬼が」

「ほほう、平民だと聞かないのじゃな? 主らに用はない」


騎士の1人が剣を振るう

それに対抗するために私は魔力を拳に込めて拳を振るう

剣と拳がぶつかり剣が軽々と砕け鎧を貫通して吹き飛ばすがダメージが少ないようだ


……魔法じゃな。鎧の下に魔法で鎧を作っていたみたいじゃな


攻撃を食らった騎士と他2人が私に敵意があると分かり魔法を使い完全に戦闘の構えを取る


「身体能力強化系魔法ね、相手じゃないわ。風魔法 カマイタチ」


風を剣に纏わせて切り掛かってくる

腕に魔力を込めて剣を防ぐ

武器を持たない上で1対3なので状況的には不利である

剣を防ぎもう片方の手で掌底を放ち吹き飛ばす


「炎魔法 炎獅子の咆哮」


広範囲の炎で攻撃を行ってくる

回避が取れず魔力を全身に流して防御を固める

吹き飛ばされ壁に激突する


……ぐっ、吹き飛ばされたのぉ、闇魔法を使う事も視野に入れておくかのぉ


壁を利用して魔力を込めて接近して蹴りを繰り出す

炎の盾を作り蹴りを止める


「水魔法 水龍」

「風魔法 エアーインパクト」

「炎魔法 炎龍」


3人が同時に魔法を放つ


「闇魔法 ブラックウォール」


闇魔法で作り出した黒い壁で攻撃を完全に防ぐ

衝撃波が辺り一面に広がり兵士達は吹き飛ばされる

激しい魔法のぶつかり合いに王は避難する

3人の騎士は闇魔法を見て警戒する


「今の魔法はまさか闇魔法!」

「身体強化ではないと言うことね」

「中々の魔力、どこかの貴族か?」

「貴族は違う、それよりどうする? 続ける?」

「「「当然だ」」」


3人は同時に答え魔法を使う

炎、水、風の3つを上手く使い戦っている

複数人で戦う連携がうまく行っている

騎士団と言うことは部下を従えているのだろう

部下達が援軍として来られたら困る

闇魔法を駆使して3人の攻撃を防ぎ戦う

魔法の隙を見て拳を振るう

剣をギリギリで避けて蹴りを繰り出すが別の騎士の剣で防がれる

剣に魔力を込めているようで中々頑丈で壊れない

吸血鬼とバレないために血操作を使わない

1人と戦っている間に2人が距離を取って魔法を構える

素早く移動して魔法の的にならないようにして魔法を駆使して戦う


「くっ、強いな」

「3対1は流石にきついのぉ。全く、戦う気などなかったのじゃが……それに魔族との戦争が控えているのに何してるんじゃ?」

「貴様こそ何をしにきた」

「話をしにきたと言っているのじゃが通じぬのか? こちらは殺してしまわないように手加減していると言うのにのぉ!」


3人を睨み威圧する

3人は距離を取り武器を構える

威圧と魔力による脅迫を混ぜるが流石騎士団長の3人と言うべきか全く怯まない


「闇魔法 …………」


範囲を縮小させてこの王の間全体を恐怖で包み込む

3人も流石にこの魔法には逆らえず膝をつく


「対話をしよう」

「なんのつもりだ」

「なんだこの魔法は……闇魔法なのか」

「知らぬ方が良い。ここまでしても話す気が無いようじゃな。帰る」


私はそう言い残して部屋から出て帰る

森の中にある小屋には近づかなそうなのでギルド長に聞き宿に泊まるつもりでいる


……話を聞くつもりじゃったがちとやり過ぎたかのぉ〜


城を出ると兵士たちがウロついていた

聞き耳をたてると幼女の反逆者が3人の騎士団長と健闘していたと言う話であった

少し速度を上げてこの場を去る

ギルド付近に来ると騎士団がギルド前にいた

先ほどの話を聞き冒険者を集めているギルドを怪しんだのだろう

シアがハンマーを持って騎士団を食い止めている


「闇魔法 ブラックダウン」


騎士団目掛けて攻撃を放ち大半を無力化する


「反逆者か!」

「違う、邪魔!」


威圧で全員の動きを止める

シアとともにギルド内に入り扉を頑丈に閉じる

ギルド内には冒険者がもうおらず話によると冒険者達は自分のやる事をする為に外に出て行ったらしい


「何やったのかな?」

「私は話をしようとしただけじゃよ。話を聞かなかった奴らが悪い」

「戦争前だよ?」

「戦争前だからこそ話をしに行ったのじゃ、聞かぬのでな。ちと騎士団長3人と戦ってきた」

「なっ」


シアは唖然としている

人の中でも強い騎士団長達3人と戦い無事でいる私を見て驚いたようだ


……大体どのくらいの力があるかは分かったから出来る限り抑えないと行けなそうじゃな


「それよりもじゃ、小屋にいけぬので住む場所が欲しい」

「私の部屋は住めるようになっている。リアさんと龍人の子が居るよ」

「そうかでは失礼するぞ?」


ギルドにある奥の部屋に入るとリアと龍人の子が座って雑談を交わしていた


「元気になったみたいじゃな」

「あっ、はい、ありがとうございました」

「どうもじゃ、私はもう寝る……戦争が起きたら起こして」

「3日間寝る気かな? まぁ、戦争が起きたら伝えるよ」


私は隅に移動して眠りにつき魔力と体力を回復させる

翌日目を覚まし外の様子を窓から見ると騎士団はもう居なくなっていた

流石に戦争前でそんなことをしている暇はないと思ったのだろう

シアから話を聞くと魔族が近くをうろついていたらしいが攻撃は仕掛けてこなかったとの事で様子を見に来たのだろう


「戦争手伝う、私は強い」


龍人の子はシアにそう言う

龍人は龍の力を持つ為かなりの戦闘力を持つらしい


「クイナちゃん、手伝ってくれるのは嬉しいけど戦争だよ?」

「分かってる」

「分かってるなら参加するのは良い。しかし自分の命は自分で守れるかのぉ」

「……大丈夫」


私が聞くと真剣に考えて頷く

クイナというのが龍人の子の名前らしい

戦争が起きるまで皆緊張して待機している

魔族VS人間の戦争が起きる

ドワーフ、龍人、英雄、吸血鬼が人間側にいるが魔族側にもそういった者がいる可能性があるから安心は出来ない

魔族は他の種族に協力を頼むことはほとんどないと聞くが何のために可能性があるので警戒しても損はない


「偵察入れよう、血蜥蜴」


血で作り出した蜥蜴を偵察に使い

紙に血を垂らして情報を集める準備を整える

血蜥蜴が素早く動き森の奥へ真っ直ぐ向かう

魔族にバレないように進み警戒範囲を突破する

そのまま進むこと数十分で敵陣に着く

魔族がたくさんおり周辺には魔物が大量に待機している

その数は百を超えている

相手も万全の体制を整えているようで魔族の中に一際強い魔力を持つ者が数人居た


「おや、中々強い魔族は数人居るようじゃ」


今いる魔族の数は20で強そうなのは4人である

魔物は様々な種類がデタラメに集められているようで統一性がない

地図を見てその情報を得る

敵と認識されない血蜥蜴は偵察に便利である


「しばらく待つとしよう。下手に外に出れないしどうかしようかのぉ? 吸血鬼のスキルについてまだじゃったな」


スキルのことを思い出す

数千年間でもスキルを得ることが出来なかった


「スキルは物によって得る方法が変わるから数千年間でやってなかった事かな?」

「食事や吸血、後はなんじゃろうな」

「すべて試すとなると戦争を終えた後の方がいいかもね。まぁ、試しに今出来ることをやって運良くスキルを得るかも」

「それなら……そうじゃなクイナ少しこちらへ来るのじゃ」


首を傾げクイナは近づいて来る

無防備で近づいてきたクイナの首元に吸血鬼の牙を使って噛み付く


「うっ……あ」


最初は小さな悲鳴が聞こえ抵抗しようとしていたがすぐに大人しくなる

この世界では吸血鬼が吸血を行動をしている間獲物に暴れられないように鎮静作用がある成分を出して獲物を静めるらしい

牙で血を流させて血を舐める

他にも様々な成分を配合した血で獲物を暴れさせないとの事

血を吸い終え離れると力無くクイナは座り込む


「そんな血は吸ってないと思うのじゃが、美味であったぞ?」

「……そう言われても嬉しくはないです」

「じゃろうな」


私はクイナの反応を見て楽しみ笑う

吸血をして見た物の特にスキルを得た感じはしない


……外れじゃったか。別の方法かのぉ?


「吸血は外れじゃったな。別のであれば食事かのぉ?」

「スキルは物によってだけどその場で得るものではないよ。まぁ、少し説明は難しいけど得た力を知らないと使えなかったりする」


リアはスキルについて軽く説明をする


「場合によっては吸血でもう得てはいるのじゃな。クイナよ、主の力は?」

「私の力は龍の力で鱗によって肉体を強化出来るってのと翼、尻尾が生えて翼は空が飛べる。それ以外には雷魔法を使える」

「成る程」


能力について知り翼を生やそうと試みる

小型の翼が生えた

龍の翼だろうか小さいが立派な翼であった

なぜか背中の下の方がムズムズしたのでその部分を手で触れてみると尻尾のようなものがあった


「龍の翼です。慣れれば空を飛ぶ事が出来ます」

「機動性アップじゃな、雷魔法というのはこの魔力かのぉ」


両手に魔力を込めると電気が他の周りに現れる


……近接戦の戦いが更に強くなったのぉ


「シア、リアの血も吸わせてもらえぬか?」

「構わないよ」

「……痛くない?」


シアがクイナに確認する

首元を噛まれるのは見ていてかなり痛そうなのだろう


「チクッとするだけでそんな痛くはありませんよ」


クイナは問いにまるで注射をされてたかのような回答をする

シアは渋々血を吸うことを許してくれたので2人の血を吸う

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