魔族襲撃編
第8話
どのくらい時間が経ったら分からなくなるほど戦いに明け暮れる
数億戦全敗、一度として引き分けにも持ち込むことができないが最初に比べれば良い戦いをしている
「そろそろ本気出さないと不味そう」
「まだ本気じゃないじゃな? なら本気を出させるかのぉ」
まず分かることは前世よりも長い時間をこの身体で過ごしていると言うことで人格はほぼ変わらないが性別の概念が時間が経つ事に男から女に段々と変わっていく
そして考えが老人寄りになっていった
「数十年前からその口調だけどどうしたの?」
「いやなぁ〜、話した通り元人だと脳の老化は押さえられんようじゃ」
「見た目銀髪幼女なのに老人口調って面白いね」
激しい戦いをしながら会話する
姿形は同じでも最初とはもう全然違い戦いをろくに知らない吸血鬼などはもういない
双剣を弾き蹴りを食らわせる
数千万戦以降リアにダメージを与えることができるようになり一億戦以降でようやくちゃんとした戦いを出来るようになった
戦いだけではなくしっかりと魔法の研究もしていた
それからも戦い続けて時は過ぎ現在10億戦を超えた
時間の感覚がなくもう何千単位の年数が経っている
最初は瞬殺だが段々と戦闘時間が長くなっていった
「おやぁ? 疲れてきたのかのぉ? 休むか?」
「いや、まだだよ!」
「そろそろ一勝くらいしたいものじゃな!」
「まだ負けない!」
全力で私達はぶつかり合う
戦いに楽しさを見出し始め当初の目的などもうとっくに忘れていた
「そういえばなんでこのダンジョンに?」
「30年程度前に言わなかったかの? 武器を作りたいのじゃが其奴がランクSのドラゴンだったのでここに潜って訓練をって話じゃよ」
斬撃を防ぎ接近するが反撃で吹き飛ばされる
痛みに慣れほぼ痛みを感じなくなってきた上で治癒能力で大体の傷は瞬間的に治る
「たしかにしたねぇ、今じゃSは楽だと思うよ?」
「そうじゃが主に勝たねば出られぬのじゃろ? だから戦っておるのじゃよ。久々に地上に出たいのぉ」
距離を取り魔法を使いごり押しを行うがこれでも倒れないで反撃をしてくる
数日間に及ぶ戦闘が終わり私はよろよろと立ち上がる
……ふぅ、ようやく勝てたのぉ〜
倒れているリアを見る
負けているのに満足しているらしい
無敗記録を持っていることは退屈だったと昔に言っていた
無敗記録を破ってもらうためにわざわざ数百年も一人でここで待ち数千年掛けて自分に勝てる者を育成していた
……中々に根気強いのぉ
「いやぁ〜、負けたよ。外に出る権利与えるよ」
リアの後ろに道が現れる
恐らく最下層に来た時の道だろう
「そうか、なら帰らせて貰うかのぉ〜」
「長かった。もう悔いはない」
「この後はどうする気?」
私の問いに首を傾げて答える
「う〜ん? そうだね、この世界と共に崩壊を待つだけかな? もうこの世界も必要ないし」
「死ぬと?」
「死ぬ」
リアは即答する
……数千年間一緒にいた人物に死なれるのは複雑じゃな
「共に来い。死ぬだけなら別に構わんよな? あと数千年生きようと変わらんやろ?」
「数千年で済むかな?」
「知らぬよ。それでも共に長いときを過ごしたものが死なれるのは後味が悪い」
そう言うとリアは笑う
リアは英雄として必要とされたことこそあれど特に理由もなく必要とする者は居なかった
「私が必要?」
「必要じゃよ、行くぞ我が友」
手を差し出すとリアはその手を取り最下層から三階層へ向かう
ボス部屋を通る時怪物が攻撃を仕掛けてきたが一瞬のうちに斬り刻む
怪物の脅威となる再生能力ですら追いつけない速度に達していた
……銃剣ありの銃が欲しいのぉ、あれは便利じゃ
「これが英雄レベル……全く世界が退屈も分からんくもないのぉ?」
「強くなりすぎじゃないかな?」
「数千年生きて弱い奴など居らんよ。それに主に鍛えてもらったのだからなぁ」
「そうだね」
突然リアが大声を発する
洞窟内の状況を確認する為の物である
私は耳を澄ませ反響を利用して内部状況を確認していると一つある事に気付く
何処かの道に石のようなものがあることに
「ん? 主よ、三階層になにか設置したかの?」
「いんや、してないけど何かあるね。おっかしいな〜」
「行くかの、気になる」
私達はそれがある場所へ向かう
問題なくその場所に着くと凍り付いた人が居た
「凍り付いておるの」
「そうだね、でも生きているみたいだよ」
「生きたまま氷漬けにされたのじゃな、どれ、砕いて助けてやろう」
「いや、これはこうやった方がいい」
氷に触れて魔法を使い熱を発生させる
リアの魔法は全属性でありありとあらゆる魔法全てを使える
当然私の持つ闇魔法も扱えるが全属性のため一つ一つの属性は達人レベルの者と比べると見劣りするらしい
見る見るうちに氷は溶け氷が溶け切り氷漬けにされていた人は力なく倒れる
「関わるほとんどが女性なのは何故なのじゃ?」
「知らないよそんなこと……それより彼女は龍じゃないか」
頭を確認してリアは驚く
私は分からず首をかしげる
……この世界の龍とは人型とはのぉ。驚いた驚いた
「龍? 龍とは人の姿をしておるのか?」
「極たまに龍人って存在が生まれるの、人型でも龍の力を持ち合わせている。ほら、ここに角があるでしょ? これが龍人の証拠」
頭に生えている二本の黒い角を指差す
「人の世でも生きられないようじゃな」
「人や他の種族からも迫害されている存在だよ。どうする?」
私に判断を委ねてくる
「連れて帰る。文句があるものは皆叩き潰すのみ、差別して置いて甘えるなどは許さぬよ」
私は即答する
リアが龍人の子を抱えダンジョンの入り口を向かう
「この花畑は?」
花畑の所に着き疑問に思っていたことを聞く
「花が好きだから作った、作った時以来見てはいないけど」
「そう、この花の名前は?」
「リインカネーションの花だよ。名前の由来は分からないけど花言葉は生まれ変わってもこの幸せを忘れないって意味だった」
花の名前を聞き意味が分かる
輪廻、転生を意味する言葉であると
「リインカネーションは転生を意味するよ。この名前をつけた人は多分、私と同じ」
「異世界人? そうかもね。この世界にはその言葉に意味は無かったからと言うより存在してなかった」
花を一つ取りリアに凍らせてもらい服の中にしまい二階層に向かう
ボス部屋には復活したゴブリンキングが居たがリアを見てすぐに動きを止める
自分を作り出した主だと直感で気づいたのだろう
そのままダンジョンの入り口まで向かう
「数千年ぶりの地上じゃ……全く変わらんの」
「まぁ、一週間経ってないからそりゃね」
私のテンションの上がりにリアは追いつけていない
体感では数千年でもこちらでは一週間経たない為そんな変わりはない
変わりがあったら中々恐怖な出来事だと思われる
遠くにある城壁を探し街の方に向かう
散歩感覚でゆっくりと徒歩で進むがいざとなればたった徒歩で30分程度の場所など今では数秒も経たずに着くことができるが体調が良いか悪いか分からない病人?を連れているのでゆっくりと歩く
「感覚がズレてるから下手な行動はやめておきなよ」
「問題ない、そこらの常識は持ってるから下手に暴れはしないよ」
「ほう、人間がノコノコと現れるとはな。奴は龍人か! 面白い、そいつを渡してくれないか? そうすれば命だけは助けてやるよ」
突如翼の生えた男が現れ偉そうに話し始めるが無視をする
……なんかいるのぉ。相手にしたくはないかな
相手にしてはいけないと考えて無視を決め込むがその行動に怒ったのか魔法を飛ばしてくる
「人間風情が調子に乗るなよ! 炎魔法 ファイアーブレス」
高熱の炎を飛ばしてくる
危険だと感じ私たちは回避をする
回避して2人の安否を確認する
「大丈夫?」
「うん、この子も大丈夫、それよりも」
「私がやる。出来る限りその子に負荷をかけたくはないから」
私が前に出て男性に話しかける
「のぉ、何を考えているのじゃ? 病人かも知れん者がおるのに主はなぜ攻撃を行った?」
「知るかよ! 餓鬼が調子に乗るんじゃねえよ!死に晒せ炎魔法 ファイアーブレス」
再び炎を飛ばしてくる
……さてどうするかの? 余波が届かぬよう防ぐかそれとも……まぁ、逃げるかの
炎に包まれた振りをして超高速で炎に隠れ走り抜ける
森の方へ行き木の上に身をひそめる
「逃げるんだ」
「下手に長引くと増援が来るかも知れんからの、出来る限り負荷を掛けぬよう走ったのじゃが問題は無さそうでよかった」
木の上に隠れつつ相手の様子を見る
先ほどいた場所は焼け野原になっており満足したのか空を飛んで去っていく
「ちと急ごう」
「うん、そうだね」
少しだけ速度を上げて進み城壁に着くと城壁がダンジョン向かう時に比べてボロボロになっていた
門番も居らず魔物に攻められた形跡がある
……わずかな時間で何があったよ。シア、シエル無事でいるのじゃよ
私は先に1人でギルドへ駆ける
人々は家から出ておらず活気付いていた街がゴーストタウンのように静かになっている
ギルドに着き中に入ると大量の冒険者が中で立って一箇所を見ていた
そこにはギルド長のシアが立っていた
「よくぞ皆の者集まってくれた! つい昨日この国は魔族に襲われた。次は本気で来るそうだ……我々冒険者と兵で防衛線を行う。他国からの援軍がくるまで持ちこたえるのだ」
冒険者たちは武器を持ち声を上げる
魔族相手に戦争をするつもりらしい
「詳しいことを教えてはくれぬか?」
「帰ってきたんだ。一週間くらい潜るって」
「ちとばかし事情があったのじゃ、それより主らが言う魔族とはなんじゃ?」
先ほどの男がその魔族だとは考えられるが詳しい説明を聞くためにあえて聞いた
「……魔族は魔王の部下となる知能生命体で大抵の魔物の上位種とされている。力は相当で数体で国家を潰せるらしい」
「成る程……いつじゃ?」
「攻め込んでくるのは3日後、君には避難の手伝いを頼みたい」
「断る。私たちがやる。皆の者は避難および城壁内を死守せよ……私は吸血鬼じゃ」
フードを外して吸血鬼の象徴となる銀髪を見せる
大半が驚き動揺する
……驚いていない奴は知らないのかな?
「なんで吸血鬼が人の味方を?」
「何故じゃろうな? そんな事はどうでも良いのじゃ、それより診てもらいたい者がおる」
遅れてギルドに入ってきたリアがシアの目の前で龍人の子を下ろして地面に置く
生きてはいるが凍り付いていた為いつ死ぬかわからない状況でもある
「龍人! ……分かった。奥の部屋に連れてきて」
シアが龍人の子を抱え奥の部屋に移動する
リアも奥の部屋に移動する
「おい、龍人なんて連れてきてんじゃねえよ」
「騒ぐな!若造風情がちとばかし黙らんか」
冒険者の1人が文句を言いに前に現れた
私は睨みつけて強制的に黙らせる
「龍人は不幸の象徴だ!殺した方がいい!」
「のぉ〜、私は別に人の味方じゃないぞ? あくまで恩があるから手を貸したるたやっておるだけで……この戦争、主ら全員が死ぬことで手を打っても良いのじゃが?」
この場にいる全員を吸血鬼という立場を利用して纏めて脅迫する
言葉は後回しでとりあえず五月蝿い輩を黙らせる
戦争時に不幸の象徴とされているらしい龍人を持ってきた私達には別に攻められるような非はない
ならその不幸分の働きをすれば良いのだから楽な物なのだ
「これで負けたらどうするんだ!」
「それは主らが弱いだけじゃよ、人のせいにするでない」
これ以上の言い争いは無意味と考え奥の部屋に移動する
不満を持っている者たちが何人かいるように見えるが気にしないようにする
……不安なのは分かるが人のせいにするのはやめた方が良い。自分の責任を認められなくなる
奥の部屋に入り手伝いをする
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます