キョンハルワンライ「赤面」
「昨日は暑くてしっかり寝れなかったのよね。おまけに今日は昨日より気温高いし。最近の天気なにかおかしいんじゃないの」
そんな事をぶつくさ言うハルヒ。
「確かにな。おかげで授業が身に入らなかったぜ」
あまりにも蒸し暑すぎる。湿度はすでに100%を超えて飽和状態なのではないかとすら思う。体感温度はサウナに入っている時とほぼ同じだ。今歩いている教室から部室棟までの道のりですらじりじりと体力を奪われていく。
「あんたはいつも授業なんか話半分でしょ」
そんな言葉を交わしながら俺たちは部室に到着すると、お互い所定の位置に座りようやく一息吐いた。
「ほんっと暑いわね。キョンちょっと何か飲み物買ってきて」
「今からか?」
暑いのは俺も一緒だし何より行きしなに言えばいいものを。自分で買ってくればいいだろう。
「何?団長命令に背くわけ?」
そう睨まれると平としては従うしかない。俺も喉が渇いていたしな、丁度いい。踏み倒したりしないでくれるとありがたいが。
「後で払うわよ、そこまでケチじゃないから」
言質を取ったところで重い腰を何とか上げて部屋を出た。外からは運動部の練習する声が聞こえてくる。ご苦労なこったね、正気とは思えん。自販機の前まで来ると適当に選んだボタンを押した。音を立てながら落ちてきた缶を拾うと自分の分を開けて飲みながらハルヒの分を片手に部室棟へ戻った。扉を開けると、ハルヒは机に突っ伏して寝息を立てていた。余程寝不足だったのか、自販機から部室まで往復する数分の間に眠りに落ちたようだ。寝ているハルヒの顔を眺めていると、魔が差したとでも言えばいいのか自分でもよくわからないが、俺はその頬に買ってきたばかりの缶を当てると
「ひゃっ!」
今まで聞いたこともないような声と共に目を覚ました。
自分が何をされたかすぐに理解したハルヒは「平団員が団長にこんな事していいと思ってるの!?敬意が足りないのよあんたは!」
眉を吊り上げながら詰め寄ってきた。不意打ちだったのが余計まずかったようだ。厄介なことをしたと自戒していると目の前のはだけた制服から肌色が見え隠れする。あまり良くない光景だ。結構白いんだなという間抜けな感想を抱いたので少し冷静になろう。
そんな俺の目線に気が付いたハルヒは自分の胸元に目を落とし動揺半分怒り半分に崩れた制服を整えた。
「変態」
そう呟くと俺の持っていた開けたほうの缶を奪い取り一気に飲み干した。
それは俺のだが。
自分の分と取り間違えた事を知ったハルヒは更に見たこともないような顔をしながら「あんた後で仕事倍だからね!」というとそのまま部室を飛び出していった。
間もなく朝比奈さんと古泉が部室に入ってきた。
「何かあったんですか?今来る途中にすごい勢いで涼宮さんが通り過ぎて行きましたけど」
日に当たりすぎたから冷ましてくるようです。
「日焼けでしょうか、確かに顔が少し赤かったような」
「怒りながら笑うという器用な表情をしていらっしゃいましたよ。まあ涼宮さんとあなたの事ですからお察しします」
にやけ面でそんな事を言う古泉。はった押すぞ。部室から外を眺めると歩いているハルヒの姿が小さく見えた。数分前の光景が脳裏に浮かんできたので何とか霧散させる。窓に反射する自分の顔に気が付いた。どうやら俺も日焼け止めが必要なようだ。
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