キョンハルワンライ「お風呂」
「あつい」
そう口にしたとこで体感温度が変わるわけでもないが、言わずにはいられない夏の常套句だ。
頭上では太陽が休むこともなく核融合を起こしながら熱波を惜しげもなく地球に送り続けている。
たまにはさぼってもいいんじゃないか。毎日働かなくたって今の世論なら許してくれるだろう。
「何回目よ、それ」
うんざりしたような声が横から聞こえる。流石のハルヒも今日の天気では多少こたえる様だ。
「ほぼ反射的に出てくるんだ。仕方ないだろう」
「暑いなんて言ってたら余計暑くなるのよ。暑さを忘れるくらい集中すればいいでしょ」
今はSOS団の不思議探索で外に出ている。昨日の部室で決まったことだが何もこの炎天下にやることはないだろうという俺の反対も虚しくブラック企業なんのその、ワンマン社長の如く強引さで押し切られたというわけだ。平の意見は得てしてそんなものである。
朝からお決まりの場所に集まり、これまたお決まりのように俺の財布にある持ち分から団員達の胃袋に自動でスライドしていった。最初のくじ引きで俺と朝比奈さんと古泉、そしてハルヒと長門の組み合わせで回っていたのだが、途中で朝比奈さんが暑さにやられてしまい安全を考慮した結果、朝比奈さんを家まで送ることになった。電話で連絡をしその役目を買って出たのだが、ハルヒの指示により古泉が付き添うことになった。そして有希はか弱いんだからと長門の身を案じたハルヒにより涼しい顔をしたアンドロイドにも帰宅命令が下された。
長門が暑さで倒れるところは谷口がテストで満点を取るくらい想像できんがな。
結局残った俺たちだけが探索を続けている。集中しすぎて俺たちまで倒れたら話にならんぞ。
「倒れたみくるちゃんの分もあたし達が頑張らなきゃいけないのよ。団長として当たり前でしょ」
なぜそこに俺が含まれるのかと疑問を抱いたところでそこに解などは存在せず、ブルボン朝ような絶対王政的決断に従うしかない。
「でもあんたの言うことも一理あるわ。私達まで動けなくなったら元も子もないものね。ちょっと休みましょ」そう俺に告げたハルヒの後に続きベンチを離れた。木陰を求めながら川沿いの道を南に進んで行くと、古臭い駄菓子屋が見えてきた。小学生の時分に来たことがあるような気もするが、如何せんこの暑さだ。頭のCPUが熱でうまく働いていないから思い出せない。
「キョン、お店よ。丁度いいわ。何か買いましょ」
そう言ったハルヒだが、とてもじゃないが今は数十円で買えるようなジャンク的食品を口にする気にはなれない。
そう思って横目で見ると店の中に所狭しと並んだ駄菓子とは別に、入り口の傍に冷凍ショーケースが置いてあることに気が付いた。
中には大小様々なアイスキャンディーが入っている。
おあつらえ向きだ。
同じくそれを見つけたハルヒの目にも生気が戻ってきたようだ。
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