第5話 転移先と涼音の過去

目を開けるとそこはボロボロの神殿みたいな場所だった。神殿の周りは森みたいだった。気がいっぱいだ。隣を見ると月音も居た。月音は驚いた顔をしていた。恐らく俺も同じような顔をしてるんだろう。


「ここ何処なんだろう?」

「何処だろうな。それより何で月音は俺と一緒に転移して来たんだよ!何とか生き残ってから再開しようと思ってたのに!」


俺は少し大きな声で言うと月音は不満そうな顔をした。何か言いたいことがあるのか?でも俺が言ったことは正論だろ?さっきまで月音は不満そうな顔をしていたのに今度は何故か少し頬を赤くしていた。


「………だって少しでも近くに居たいから」


月音は小さい声で何かを言っていたけど隣にいた筈の俺は何も聞こえなかった。何を言ったか聞こうとしたんだけどそれどころじゃ無くなった。俺が聞こうと時に行き成り俺達が居た場所の後ろから大きな音がした。何かが壊れるような音がな。


俺は後ろを向きたくなかった。出来れば見ないで前方に全力で走って行きたかった。月音も後ろを振り向きたくないらしく俺に向くように強制してきた。俺は仕方なく後ろを向くことにした。


俺達の後ろには大きなドラゴンが居た。しかもそのドラゴンは体を回し始めているではないか。ネット小説で俺は読んだことがあるぞ。大体こういう行動をしている時は尻尾で攻撃してくるんだ!


俺は咄嗟に月音の手を取って全力で後ろに駆け出した。如何やら月音も俺と同じ様にドラゴンを見ていたようで一緒に駆け出した。その御陰で俺が引っ張らなくて助かった。引っ張りながら走ると絶対に追いつかれて死んじゃうからな。


「如何してこんなところにドラゴンが居るの!」

「そんなの決まってんだろ!あのジジイは生け贄って言ってたんだから何かが絶対に居て、今回はドラゴンだったんだろ!」

「そんな事分かってるよ!」


そんな感じで言い合いながらドラゴンから逃げていたが絶対に逃げきれないのは分かっていた。それに全力で走っていて月音の方が今は足が速いから必然的に最初に食われるのは俺なんだよな。月音との差が結構あるしな。


如何やってドラゴンから逃げ切ろうか考えながら走っていると行き成り俺の背中に強い衝撃と痛みがきた。そして俺は木を薙ぎ倒しがら吹っ飛んだ。月音は俺が吹っ飛んだ事に驚いて走る速度を落としてしまった。俺はその後木にぶつかって止まった。


とても痛かったが月音を見ようと顔を月音に向けた。月音は転んだみたいで尻もちをついていてドラゴンはそんな月音に爪で攻撃しようとしていた。俺は声を出そうとしたが上手く出せなかった。


その時行き成り視界が光って目を開けていられなくなった。そして俺も目を閉じたと同時に気を失った。


~月音視点~


私が目を開けるとそこはキラキラしていて目が痛くなるような宝物庫みたいな場所だった。私はさっきまでドラゴンに攻撃されそうになっていた。怖くて目を瞑ったんだけど中々痛みが来なくて目を開けるとここに居たんだ。


周りを見ると幼馴染の涼音が血まみれで倒れていた。腕は普通曲がらない方向に曲がっていて顔を逸らしたくなるくらい酷かった。私は急いで涼音に近寄って行って息をしているか確認したら何とか生きているみたい。


「如何しよう?取り敢えず《エクストラヒール》!」


私は焦ってたけど取り敢えずこの世界にある回復魔法をかけた。だけど涼音は全然治らなかった。涼音を生け贄にした国で教えてもらった時にエクストラヒールを使えば大体治るって教えて貰ったのに!エクストラヒールが駄目ならボクには何も出来ないよ………


私が何も出来なくて困っていると行き成り涼音の体が光出した。私は涼音が居なくなると思って抱き着いた。私は涼音に抱き着いたまま泣いていると涼音の体の傷が治って行っている気がして少し離れてみた。

暫く見ていると涼音は治って行っていて私は安心した。完全に治るまで様子を見ている事にした。


涼音とは小学校からの幼馴染で幼稚園から一緒だった一堂とよく遊んでいたんだよね。その時は私、一堂の事を名前で呼んでいたんだったね。私はその頃涼音といる事はあまり得意じゃなかった。何か無理やりボク達に合わせている感じがして自分の意見を言ってくれなかったから楽しくなかったんだ。だから少し気になっていた一堂とよく一緒にいたんだ。


私と一堂は涼音の体に毎日毎日傷が増えていた事には気が付いていた。最初は何で?って思っていたけどある日私達が遊ぶところを涼音の家にしたら絶対に嫌だって凄く否定してきたから疑問に思ったんだ。


その次の日涼音は家の用事で早く帰るって言ってたから私達は涼音の後を付けて行った。涼音が家に入って暫く近くの電信柱に隠れて見ていると涼音が庭に出てきた。私達は庭が見える位置に移動した。


その後に涼音の両親だと思う人達も出て来た。私達は涼音の両親を見たこと無かったからね。その後涼音の両親が涼音を殴ったりしていた。涼音は必死に痛みに耐えて声を抑えていた。声を抑えられないと両親に蹴られて踏みつけられていた。


私達はその涼音を見てられなくて顔を逸らした。その後はどうやって帰ったのかは覚えていない。私は両親に言えばよかったのに言えなかった。怖かったから。私達はその日見た事を無かったことにして過ごした。


それから2年くらい経って涼音が学校を休んだ日があった。何時も学校に来ている涼音が休むなんて思わなかった。休んだ次の日は学校に来たけど涼音の顔は包帯が巻かれていた。私達が聞いてもはぐらかされてその時は包帯を巻いている理由を分からなかった。


暫く包帯を巻いていた涼音がある日包帯を取って来た。包帯の下には火傷跡があった。クラスの皆は気持ち悪がって少しは話していた子も皆話さなくなって涼音が話すのは先生か私達だけになった。その内私達も周りに影響されて涼音とは話さなくなった。


それに一堂からも涼音に関わるなと言われたからね。その時は普通に関わらない方が生きていき易いから一堂は私に言ったのかと思ったけど違った。涼音に関わらなくなって半年くらいした頃一堂が私に告白してきた。正直少し嬉しかった。でも私は断った。一堂が涼音の事を虐めている事を知ったからね。告白する時に一堂は涼音を虐めている事を自分から喋ったんだ。それを聞いてボクは嬉しかったことが嘘のように一堂の事が憎くなった。私達が涼音と関わらなくなって1年経つとボクは涼音を毎日目で追っていた。


涼音は平気そうな顔していたけどまだ毎日新しい傷を作っていたからね。それに学校ではクラスメイトからだけではなく先生からも無視され始めていた。その時にはもう私は涼音の事が好きだったのかもしれない。


涼音は私達と知り合った頃はまだ両親から顔に何もされてなく美少年だった。一堂はイケメンだったけど涼音は美少年でカワイイ系だったなぁ。守ってあげたくなるような感じかな?


一堂は顔だけがいいクズ野郎だと分かってからも私は涼音に話しかけられなかった。如何してだろう?それから中学校に入っても涼音と話すことは出来なかった。涼音は学年が上がるにつれて傷が増えて行っていた。私は涼音と目が合うと申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちで目を逸らしてしまっていた。


高校は涼音と同じ高校を選んだ。一堂は私と同じところを選んでいた。正直一堂と同じところは嫌だったけど涼音が心配だったから涼音と同じ高校にしたんだ。その頃にはもう私は涼音を絶対に守ってあげたいと思っていた。


涼音は高校でも同じ扱いを見た目だけで受けた。私は何とかしようと思ったけど一堂に邪魔されて上手く行かなった。一堂は私が涼音を気になっていると分かっているから涼音を虐めて私の前から居なくなるように仕向けていた。


でも、涼音は1日も学校に来なかった日は無かった。凄いと思うよ。家で虐待されているからって学校ではクラスメイト、先生から無視されて虐められているのに休まないなんて凄いよ。私なら耐えられないよ。

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