第4話 生け贄
「五十嵐は帰っていいんだよ?それに一堂と一緒じゃなくなるよ?」
俺がそう言うと五十嵐は少し怒ったような顔になった。俺何か怒らせるような事言ったかな?五十嵐は小学校の頃俺と一堂と五十嵐の3人で遊んでいた時小学生からの幼馴染の俺より幼稚園からの幼馴染の一堂と仲が良かった。
「あんな奴は如何でも良いの!」
それに五十嵐は一堂が好きみたいだったし一堂も五十嵐の事が好きみたいだったから小学生の俺はこの2人は両思いだと思ってたんだけど。違うのかな?両思いだったらあんなに強く言わないよね。
「あんな奴?幼馴染だろ?それに五十嵐は小学生の時から一堂が好きなんじゃないのか?」
俺がそう言うとまた少し怒ったような顔になった。今度は少し不機嫌も含まれていた。だから如何して怒るのさ。それと何で不機嫌になってるの?
「確かに彼奴は幼馴染だけど私はあんな奴好きじゃないよ!小学生の時もね。だって私は……………」
「え?最後何て言ったの?聞こえなかったからもう一回言って」
「聞こえなくていいの!」
「あ、はい」
五十嵐の最後の方は聞こえなかったからもう一回言ってくれるくれるように頼んだけど頼んだ時に五十嵐は顔を赤くして聞こえて無くていいと言われてしまった。俺は反射で返事してしまったけどホントは聞きたかった。
幼馴染をあんな奴呼ばわりしてるんだから俺が2人と離れていた期間になんかあったのかな?そんなことを考えていたら五十嵐がお願いを聞いて欲しいと言って来た。お願いってなんだろう?
「お願いって?」
「私の事を昔みたいに月音って呼んで?五十嵐だと他人行儀で何か寂しいよ」
五十嵐のことを名前で呼ぶのか久しぶりだな。久しぶりだと少し恥ずかしいな。でも五十嵐……月音の久しぶりのお願いだから聞いてあげたい。
「分かった。月音」
俺は恥ずかしいけど恥ずかしいと気づかせないで月音の名前を呼んだ。俺は月音の反応を見る為に月音を見てみたが月音は何か少し頬を赤くしていた。恐らく久しぶりに名前を俺に呼ばれて嫌だったのか恥ずかしかったのかどっちかだと思う。
それから俺たちはこの王城から何時出ていくかとか出て如何するとかを話しあった。何時出ていくかはまだ決まらなかったが王城を出て何をするのかは決めた。この世界にはネット小説みたいに冒険者ギルドがあるからそこに所属することにした。
因みに月音は俺と同じ様にネット小説だったりラノベだったりゲームをしてファンタジーに結構詳しかった。今度そういう系の話でもしようかな?クラス…いや、学校1の美少女である月音がラノベとかが好きだとは誰も思わないだろう。
「待って!」
「如何したの?」
俺は月音が部屋に帰ろうとするのを止めて話しかけた。忘れていたけど如何しても話しておかないといけない事があったんだった。
「この腕輪付けてないよね?」
「何で?付けてないけどさ。怪しかったから付けてるように見せかけたけど」
良かった。月音が腕輪を付けて無くて。もし付けてたら如何しようかと思ったよ。月音も王様を良く思って無いんだから鑑定した筈なのに何で腕輪を付けちゃいけない理由が分からないんだろう?
『それは私が説明しましょう。月音様は鑑定のスキルを持っていますがレベルはあまり高くありませんこの隷属の腕輪には隠蔽が付いています。レベルは月音様の鑑定スキルより高いので見抜けなかったのでしょう』
なるほど。ホントに月音が腕輪を付けなくてよかったよ。一応月音にはこの腕輪の本当の名前と効果を話しておこう。月音に腕輪の説明をすると月音は付けなくてよかったと安心していた。
その後今日はもう遅いという事で月音は自分の部屋に帰って行った。もっと詳しい話は明日以降するらしい。俺は明日の訓練に備えてもう寝ることにした。
翌朝昨日と同じ様に朝食を食べた。昨日と違う事は隣に月音が居てクラスの男子達からの視線が殺気ばかりだった。そして俺の髪は昨日より白が多くなって片目が少し赤っぽくなってきた。そして火傷跡は昨日よりも少なくなっていた。
朝食を食べた後はすぐに訓練をするらしくて訓練場に案内されてこの国の騎士団長から訓練を受けた。剣の訓練をしたけどスキルは手に入らなかった。
『団長がマスターに教えている方法は効率が悪いものですのでスキルが手に入れ難いです』
何でそんな事するんだ?俺は特に何も目立った事はしてない筈なんだけど。もしかして知らず知らずのうちにこの国の重大な秘密を知ってしまったのだろうか?
『マスターふざけないでください』
「別にふざけてるわけじゃ無いのに」
『理由は私にも分かりませんが気を付けていたください』
取り敢えず気を付けておくけどね。それよりは何時この国から出ようかな?まぁその前にこの王城からどうやって出るかなんだけどな。警備は厳重だからな。
「よし!今日はここまでだ!お前達を王様が呼んでいる。謁見の間に行け」
俺たちはそれを聞くと皆ですぐに謁見の間に向かった。向かう途中で月音が俺に近付いてきた。クラスの皆は俺に近づく月音を止めようとしていた。特に強く止めてるのが一堂だった。
「おい。月音何で彼奴に近づくんだ?」
「何?そんなの私の勝手でしょ?違う?」
「嫌そうだが」
「だったら邪魔しないで」
月音はそう言って一堂達の声を無視しながら俺に近づいてきた。何でそんなに一堂は止めるんだ?俺何もしてないのに。そういえば一堂は月音の事が好きなんだっけ。
「はぁー。めんどくさ。何であんなにしつこいのかな?」
『これは私のスキルの能力の念話。この話は誰にも聞かれるわけにはいかないからね』
『そうだね。1つだけ言っておくと俺は王国側から何かされるかもしれない』
月音は最初、俺が普通に念話を使えていることに驚いていた。まぁ俺はメイと良く話しているから慣れているんだけどな。驚いている月音を無視して話を続けると月音はまた驚いた。今度は少し声に出てしまったみたいだ。
『どういう事!?』
『俺にも分からない。でも勘が王国に注意しろって言ってるんだ』
勘が言ってるってのは嘘だけどな。ホントは魔眼のサポート機能、メイが忠告してくれたんだけどな。まぁあんま変わらないでしょ。そんな事を話していたら何時の間にか謁見の間の前に着いていた。俺たちが大きなドアの前に立つとゆっくりとドアの前で控えていた2人の騎士が開けた。
「良く来てくれたな。急に呼んですまなかったな。今回お前達を呼んだのはこれをするためだ」
王様のそう言って王様と俺たちの間にある魔方陣に指を指した。この魔方陣は何だ?謁見の間には騎士達と魔術師達と王様と俺達しか居ない。これから何をするつもりだろうか?
「この魔方陣は魔王の封印を維持するための生け贄を送る魔方陣だ!これからお前達の誰か1人を生け贄として捧げる」
王様のその言葉を聞いた瞬間クラスメイト達がざわつき始めた。皆は王様に文句を言っていた。俺は王様が生け贄と言った時に俺を見ていたことを確認した。メイにも確認済みだ。取り敢えず月音に報告しておこう。
『どうやら生け贄は俺みたいだな』
『!?どうして!』
『王様が生け贄って言った時俺を見ていたらか俺だと思ったんだ。それにおれのスキルが生け贄に選ばれたって言っている』
俺が生け贄の件を報告すると月音が驚いて声を出しそうになるのを必死で押さえていた。その後俺がそう思った理由を話した。逃げることは出来そうにないな。どうするか。
「沈まれ!」
王様のこの声にざわついていたクラスメイト達は一気に静かになった。俺も王様の声に少しビビっちゃったよ月音の少し体がビクっとなっていた。
「これからお前達の中から最も使えない奴らを生け贄とする。お前達に逆らう事は出来ない」
「如何いう事だ!」
王様の言葉にクラスメイト達は意味が分からないと文句を言っていたがその中で王様に直接文句を言っている奴が居た。一堂だ。
「お前達が付けている腕輪は勇者の腕輪ではない。そもそも勇者の証なんて魔道具は存在しないんだよ!」
「なっ!」
その事実を知ったクラスメイト達は全員が驚いた顔をした。一堂も例外ではない。俺は驚いた顔なんてしなかった。どうせ生け贄に選ばれるのは俺なのだ。いちいち驚いているのは面倒くさい。それに王様の驚いた顔も見たかったのもある。因みに月音も驚いた顔をしていなかった。つまらなそうに王様を見ていた。俺は期待した顔で王様を見ていたけどな。
「お前達の付けている腕輪の本当の名前は隷属の腕輪だ」
王様は俺を見てドヤ顔をしようとして俺の表情に少し驚いた顔をしたがすぐに元に戻してから勇者達(笑)に腕輪の説明を始めた。勇者達(笑)は絶望した顔になった。俺は王様の驚いた顔を見れたからとても満足だ。
「安心しろお前達がちゃんと働いている限り昨日と同じ様な扱いをしてやる。それに生け贄にする奴はもう決まっている」
王様の言った事を聞いた勇者達(笑)は少し安心した様子だ。馬鹿だな。同じ扱いをして貰っても所詮はまだ奴隷だ。安心するのはまだ早い。王様が生け贄は決まっていると言った時は皆俺を見て来た。
「そうだ。お前達が思っている通りそいつだ。あー、名前は忘れたが使えない奴は用済みだ。死ね」
そう言って騎士達に指示を出した。俺を魔法陣に連れて行くように。その間俺は特に暴れることなくされるがままだった。月音は俺が魔法陣に連れて行かれるのを見て魔法陣に近づいた。
「これからお前は体をグチャグチャにされて心を壊されてから死ぬんだ。特別に教えてやるが前に生け贄を捧げた時に1回だけ戻って来た時があった。死体がな。だから生け贄にされた奴の運命は分かっている。さて、お前に最後の言葉を残させてやろう」
そう言って王様は大笑いしだした。俺はそれを冷めた目で見ていた。その後俺は勇者達(笑)を見渡したが俺が見ると皆顔を背けて見ない様にしていた。その中で1人だけ悪い笑みを見せた一堂はホントに気持ち悪かった。月音に目を合わせると頷いた。何を思っているのかは分からなかったが嫌な予感がした。知勇者達(笑)を見渡してからまた王様を見てから笑う。
「王様。悪い事をすると後で自分に帰って来るんだよ?」
「まぁ1時間くらいは覚えておいてやろう。やれ」
王様はそう言った。それを聞いた魔術師達は詠唱をしていたのを丁度終わったのか止め発動させた。発動される直前に月音が走って来た。それを見た王様は命令で月音を止めようとしたが月音には効かなかった。
月音は俺に抱き着くように触れると一緒に光に包まれた。
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