第3話 毒・国・腕輪
俺が料理を鑑定していたら次に手を付けようとしていた料理から絶対に入っていていてはいけない毒が入っている事が鑑定で分かった。
『この毒に即効性は無いようですから即死は無いと思います。近くに回復魔法が使える人が居れば命に別状はないでしょう』
何で料理に毒が入ってるんだ?他のクラスメイトの同じ料理を鑑定しても毒は入っていない。なら俺を狙って毒を入れたのか?でも席は自由だったから俺が必ずここに座るとは限らないから俺を狙った可能性は少ない。それなら俺らを召喚して誰かを殺すことでこの国に何か得することがあるのか?
『私もマスターと同じ意見です。マスターをピンポイントで狙ったとは思いませんから召喚した誰かを狙ったのは確かですね。召喚した誰かを殺そうとしていると考えたマスターと違って私は殺すつもりはないと思います』
如何してだ?毒を入れてるんだから殺そうとしているだろう?それに誰か1人を最初に殺しておけばこの国に俺たち召喚された者は逆らわなくなるだろう?まぁ見せしめだな。
『私はそうは思いませんね。殺そうと思っているなら食堂に回復魔法を使えるメイドが待機している必要はないと思います。偶々いた可能性はありますが回復魔法を使えるメイドがマスターの座っている席の近くに居る事と他のメイドが何かしら仕事をしているのに回復魔法が使えるメイドは何もしていませんこの事からこの国が安心安全だとマスター達に思ってもらうのが目的ではないでしょうか』
なるほど。 確かに言われてみれば俺の近くに居るメイドさんは回復魔法が使えるし、他のメイドさんみたいに何かしらやっている事は無いんだよな。俺がそのメイドさんを見るとニッコリと作り笑顔を向けて来るからな。
食べない様にしないといけないからお腹一杯って事を少しアピールして残すか。俺は予定通り毒が入っている料理をお腹一杯って体で残してきた。俺が残すと回復魔法が使えるメイドさんは俺を睨み付けて来たけど俺は見なかったことにした。
食堂から出ると俺はすぐに部屋に戻った。夕食前にやっていた能力の確認の続きを始めますかね。魔眼の能力確認は全部やったから後はステータスにあるスキルの魔力操作をやってみますか。
まずは自分の中にある魔力を見つけないといけないんだけど地球では無かったものだから全く分からない。如何したら分かるかな?取り敢えず適当に魔力が動くように念じてみよう!
『そんな方法では魔力操作は出来ませんよ?マスターは魔法、魔力の無い政界から来ているので魔力が分からないのも分かります。でもマスターには魔眼があるじゃないですか』
あ!そっか!魔力視を使えば自分の中にある魔力も見れるのか。早速自分の中の魔力を見てみよう。自分の心臓のあたりに魔力が溜まっているみたいだった。その魔力を移動させようとしてみたら少しは動いたけど中々動かなった。
それを何回か繰り返しているとスムーズに魔力が動かせるようになってきた。今日は寝るまで魔力を体に循環させることにした。暫く循環させているとずっと集中して意識しなくても無意識でも循環出来るようになってきた。
『おめでとうございますスムーズに循環出来るようになりましたね。ですがやっとスタート地点に立てたくらいですからね?』
マジか~そんなに大変なのか。まぁ頑張るしかないな。毎日寝る前に魔力操作をしてから寝る様にしよう。俺はそう思いながらベッドに横になった。そして翌朝俺は朝日で目が覚めた。如何やら魔力操作の練習をしていたら寝落ちしていたみたいだ。
「……………あれ?なんか俺の髪少し白くなってね?」
朝起きると視界に入る髪の毛が少し白くなっていたメッシュみたいになっているみたいだ。どんな風になっているか気になるな。
『ステータスを開いて自分の姿が見たいと願えば見ることが出来ますよ』
俺は早速言われた通りにステータスを開いてみた。すると俺のアバターみたいなのが写っていた。黒髪に少し白いメッシュが入っている。目の色は変わってなかった。何で髪の色が変わったんだ?
『マスターには力の引き出しが失敗だったと言いましたが詳しく言うと半分は成功していました。なので髪の色が少し変わっていたのでしょう。他の例を出すとマスターが魔眼を持っている事です。力の引き出しが成功していれば私みたいなサポート機能はありませんでした。それとマスターは気が付いてないみたいですけど少しだけ火傷跡が小さくなってますよ』
そう言われてもう一度見てみたら確かに火傷跡が小さくなっていた。嬉しかった。これでもクラスメイトは気持ち悪がるからあまり俺の扱いは変わらないと思う。特に五十嵐はな。
取り敢えずまた魔力操作の練習の為に魔力を体に循環させた。昨日よりスムーズに循環させることが出来て速さも帰ることが出来るようになっていた。暫く魔力を循環させていたら昨日と同じ様にメイドさんが朝食の準備が出来た事を伝えに来た。
昨日と同じ様に食堂に行って朝食を食べた。今回俺が食べていた料理には毒が入って無くて一堂と仲が良かった上田の料理に毒が入っていたみたいで昨日メイが言っていたことをしていた。
上田が倒れたから騒ぎになっていた。俺は理由を知っていたから特に何も思わなかった。上田が回復魔法で助けられてから王様から自己紹介とこの世界の事について教えて貰った。
王様の名前はクインシー・エルス。そして王様の名前から分かる通り俺たちを召喚した国の名前はエルス王国だ。この世界にはネット小説みたいに魔物が居て魔法がある。教えて貰った事はこのくらいだ。魔法の種類とかは訓練の時に教えてもらえと言われた。
「如何だ?魔王討伐をやってくれるか?」
王様が最後にそう言ってきた。クラスメイトの反応は様々で困惑している人も居ればやる気の人もいた。俺の様に乗り気じゃない人もいる。クラスメイトが返答に困っていると1人が声を上げた。
「俺はやるよ!魔王を倒さないと俺たちは元の世界に帰れないわけだしな!それに困っている人が居たら助けるのは当たり前だ」
一堂がそう言うと困惑していたクラスメイトや乗り気じゃなかったクラスメイトもやる気になった。その中でもまだ乗り気じゃない人もいたが殆どの人が魔王討伐をすることを決めた。
「そうか。なら、これを授けよう」
そう言って王様がメイドに目配せした。メイド達は何処からか持ってきた。腕輪を王様に持って行った。
「この腕輪は勇者の腕輪と言って勇者の力を強くしてくれる魔道具だ。これは付けている時だけしか強くしてくれないので何時も付けておいてくれ」
腕輪を見ると銀色で少し模様があるようだったがどんな模様かは分からなかった。それをメイド達は俺たちに渡し始めた。受け取ったクラスメイト達は何の迷いもなく腕に付けて行った。俺も受け取ったけど怪しいので鑑定してみる事にした。
【勇者の腕輪(隷属の腕輪)】
勇者の証ともなる腕輪。効果は勇者の力を倍にしてくれる。
(主人:クインシー・エルス)
(これを付けたものは設定された主人の奴隷になる。)
やっぱり碌なものじゃなかったな。まぁ良くネット小説とかにあるからな。鑑定しておいてよかったよ。取り敢えずこれは腕に付けていると見せかけるか。
明日訓練をすることを聞いてから俺たちは部屋に戻った。戦いの訓練を早速するらしい。朝は早いみたいだから今日は早く寝ようかな?俺が部屋に帰ってまた魔力操作の練習をしていたら部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。誰ですか?」
「私。五十嵐月音。開けて?」
え?俺の部屋に何の用だろう?五十嵐は俺に近づきたくもないんじゃないのかな?そんな事より早くドアを開けてあげよう。俺がドアを開けると風呂に入った後みたいだった。
「如何したの?」
俺はそう言って部屋に招き入れた。俺が聞いた事に五十嵐は顔を下に向けて覚悟を決めている様だった。
「涼音は魔法討伐参加するの?」
「俺は参加しない。この国は信用出来ないからある程度戦う力が付いたら出て行くつもり。五十嵐は?」
「私もこの国は信用出来ないと思う。だから………この国から出ていくなら私も連れて行って!」
俺が五十嵐に聞いたら何かに反応して悲しそうな顔を一瞬した後に元の表情に戻った。その後話しだして途中で止めて覚悟を決めた後にそう言った。俺は五十嵐がそう言ってくれて嬉しかった。でも俺は五十嵐と違って完全に力を引き出してもらったわけじゃ無いから足を引っ張らないか不安だ。
「いいけど俺は力を完全に引き出せたわけじゃ無いんだよ?」
俺はそう言って今の自分の事について話した。五十嵐はそれでも大丈夫だと言ってくれたけど絶対に足を引っ張ってしまう。それからこの際だから五十嵐が俺のことを避けていたから一緒に行動出来るのか聞いてみる事にした。
「ごめんなさい。涼音の火傷跡を見るのが辛くて避けてた」
そうだったんだ。俺を避けてるわけじゃ無いならよかったよ。幼馴染に避けられるのは地味にショックだったからな。そんな事を考えてホッとしていたら今度は五十嵐が俺に聞いてきた。
「今度は私から聞いていい?」
「いいよ」
「何で私を名前で呼んでくれないの?」
俺はそう言われて何時から五十嵐の事を名前じゃなく苗字で呼んでいたか思い出してみた。小学3年生までは一堂と五十嵐と俺の3人でよく一緒に遊んでいたし、五十嵐も一堂も名前で呼んでいたっけ。
俺が両親に逆達されていたのは一堂も五十嵐にも言って無かったけど薄々勘づいていたみたい。俺が火傷してから1ヶ月くらいしたら一堂は俺の事を気持ち悪がって離れていき呼び方は名前から苗字に変わっていた。俺はそれが悲しくて2人の事を苗字呼びにしたような気がする。
「……………っていう事なんだ」
「ゴメンね。ゴメンね」
俺の話を聞いた五十嵐は謝り始めてしまった。少し泣いているみたいだ。そんな事で泣かなくていいのに。
「俺は大丈夫だよ!それにもう両親に会わなくて済むんだから」
俺は今異世界に居る。魔王を倒して元の世界に戻らない限りもう一生両親に会わなくて済むから俺はこの世界に来れてよかったと思っているからな。
「もうって……まさか涼音は元の世界に帰る気は無いの?」
「……無いよ。またあの両親の元に帰るなんて考えたくもないね」
元の世界に帰るとまた折角この世界に来て無くなった地獄がまた始まってしまう。それにこの世界には魔法があって怪我をしてもすぐに回復出来るから元の世界よりいい。
「涼音が帰らないなら私も帰らないよ」
「五十嵐は帰っていいんだよ?それに一堂と一緒じゃなくなるよ?」
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