英雄の死
確かに私は4度、川を渡ったんだ。5度目の川も近づいてきた。一生懸命生きてきた。走馬灯のように人生が脳裏に浮かぶ。途方もない緊張を今は維持している。もはや、人間とは私は言えない。通常の人が脳の2割くらいしか使って生きてないのに対し私は、9割の脳を使っているだろう。凄まじい孤独だ。あとちょっとなんだ。嗚呼、生きることはなんて厳しいんだろう。生きる。それは意識の覚醒を必要とする。もう、悲しみや苦しみは残っていなかった。悲しみはありのままに物事を見て、刻々と今を生きる時、存在し得ないのであった。目の前の机、木々、風景、スマホ、これらがすべてであった。意識を今ここが占めるのみであった。私がすべての一部であるのではなくすべてが私の中にあった。今ここが永遠に続くことを悟りと呼ぶ。今ここに永遠にあり続けることができる人を覚者と呼ぶ。ずいぶん苦しんできたけどもう、僕は苦しまなくなったよ。永遠なんてないから。今ここがあるだけだから。
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