鉄のイナゴ

とにかく人生苦しかった。


徐々に苦しみに慣れて、苦しみが解けていった。


苦しみがいつの間にか消えて、心の安らぎだけが残った。


実に孤独だった。


宇宙でたった一人の孤独であった。


孤独が深まっていった結果だった。


透明な闇はあまりにも輝いていた。


すべての命を抱いた。


すべてが私であった。


目の前の蚊は私であった。


世界全体が私であった。


あらゆる霊能を駆使する占い師が目の前の人の心を気遣えてなかった。


私が持つ特別な力は「見る」力だ。


それは問題の根をありのままにみることである。


抜本的問題解決に至る能力である。


それが超人の能力である。


出会いと別れ


幾世にも渡って愛し合ってきた双子の魂。


その自称詩人の姉ちゃんは、あまたの詩を書いてきたが、本物の愛は知らず、いまだに男を顔面と肩書きで判断するのみだった。


その姉ちゃんとその彼氏がパンパンやりながらアパートの自室で愛と信じたそのような関係すらもてず、引きこもりの青年はひとり自死を選んだ。


彼の死んだ部屋の下に咲いたパンジーの花は美しかった。


走馬灯のように、私の生きた人生が交錯した。


あの道路で傘を握って歩くおじさん、


幼子を抱いた母親、


人生を超越しようとして人生そのものを生きることになった人間臭い僧侶、


道端の草。


すべてが私であった。


両親の仕送りをばくちに使い大学中退し、一人生活保護に頼ることになった男の蛆虫のような人生を、肥溜めの蛆虫たちはうらやんでいるのを本人はしらなかった。


振りやまない雨は、運命の象徴である。


目の前のパソコンは機嫌がよさそうだった。


創造神に達した。


母性に達した。


二元性がもはや支配することはない。


目の前の客体のみを意識が占めており、


そのとき、悲しみや苦しみは私を支配することはない。




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