完全な自由と調和
真夜中の烏。
もう一度、あの時に戻ったとして、迷いなく同じ道を選択できるだろうか。
幻想ポロネーズの走馬灯のメロディが胸をえぐる。
全ての男は英雄である。
しかし、間違ってるのは、それを女にわからせようとすることである。
バラモン教の、三位一体の第三格は、ヴィラージ=英雄的といわれる。
賭け続けること。
命がけで生き続けること。
俺は、挑戦し続けた。
強くなったな。
昔より、格段に地に足を着けたな。
プライドをかけて生きてきた。
降り止まない雨が、ひたすら心にしみる。
言葉にならない悲しみが走馬灯となって、安らぎに解けていく。
もうここらでいいだろう。
生きるということは自分の卑小さに絶えず向き合い続ける屈辱的拷問だ。
女は、犯され身ごもる性だから、このことをよく理解している。
来い。わが正午よ。
ほとんどの人は自我を固めることを求めるが、自我が消える道を選ぶ人はまれである。
嗚呼、間違ってなかったんだ。
俺が歩んできた道は間違ってなかったんだ。
悟りは全ての、過去を正当化する。
降り止まない雨は、悲しみを癒していく。
私を大人にしたのは、女だった。
中途半端な美に酩酊するほど子供じゃない。
針の穴を通ってたどり着いた。
どの道、僕がどれだけ努力し苦しんできたか君らにはわかるまい。
何の理由もなく、ぶらりと町にいって人の輪に入ってみる。
何もしてないのに、失恋自殺の少女は自殺をやめ、悪人は正しい生き方に目覚め、人々は笑い出す。
無為にして人を化す。
みんなひとつだったんだ。みんなつながってたんだ。
植物、町並み、人々、それらは全て私であった。
切ない都会の不倫、パワハラを受けるサラリーマン、家庭で権力を握ろうとする主婦
それら全ては私であった。
海から完全に脱した太陽は、勝利の光彩を放っていた。
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