試合終了後

「本日の第三試合、強豪と名高い『†輝紗羅魏 紫苑†』選手が、初出場の『アブラ☆マシマシ@るーたん単推し』選手に敗れるという大波乱がありました。コイツらのフルネーム読んでると、こっちまで恥ずかしくなりますね」


「気持ちはわかりますけど、ちょいちょい毒吐くのやめてください」


「試合を振り返ってみていかがでしたか?」


「やはり目を引くのはアブラ選手の最後の一手ですが、そこに至るまでの布石が優れていたと思います」


「とおっしゃいますと?」


「例えば序盤の四ターンはお互いじっくりと手作りをしていましたが、格下のアブラ選手が動かないことで、意図的にスローペースに持ち込んだと言えます。おそらく輝紗羅魏選手はこの時点で、十ターンぐらいかかる長期戦になると予想していたと思われます」


「確かに輝紗羅魏選手は、相手の動きに合わせてカウンターを入れる受け身のプレイスタイルを得意としています」


「五ターン目に軽く攻撃したのも牽制と様子見が目的で、あそこから大きく動くとは考えていなかったんでしょう」


「ところがその目論見が外れた、と」


「それも予想を遙かに超える形でです。アブラ選手は長期戦に付き合うつもりなどなく、準備ができ次第、最強の一撃を叩き込むつもりだったんですね」


「その「最強の一撃」となったとどめのコンボについて、解説お願いします」


「『失われし神代の魔法』に関しては先に述べた通りです。それを支えた『あれれ、もしかして俺、また何かやっちゃいました?』はどんな非常識な内容でも1回だけノーリスクで成功させる効果を持っていますが、発動させるには、通称「アイツなら何をやってもおかしくない」カウンターを一定数貯める必要があるので難しいんです。

今回は『革新的な発想』『未知の新技術』による下準備と『異世界転生』補正に『変わり者』の5ターン蓄積を加えて発動条件を満たしてますが、普通は『変わり者』ではなく『無自覚チート』『鈍感ハーレム主人公』『空気を読めない天才』などを使うのが一般的でしょう」


「つまり、本来とは違う変わった使い方だったと」


「それゆえに輝紗羅魏選手はこの展開を読めなかったのでしょう。ロマンを夢見て狙う人もいますから、上級プレイヤーなら『無自覚チート』あたりが出された時点で一応警戒します。今回はそれを逆手にとった形となりましたね。ラッキーパンチと見る人がいるかもしれませんが、相手のプレイスタイルを利用して一撃を当てるための準備をきれいに整えた、アブラ選手の作戦勝ちと私は評価します」


「ありがとうございます。それではお時間となりました。本日のお相手は私、実況の手札自凝と」


「解説の一手億礼流でした」


「また来週、このお時間にお会いしましょう」

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