第12話 飛行船に潜入

飛行船の中は豪華客船のようになっていた。バイキングやゲームがある。

「遊ぼうぜ?」

「いいね」

誰からも反対意見が出ないため俺たちは遊ぶことにした。

「おっ、人魚釣りあるじゃん!」

人魚釣りは釣りといっても魚釣りとはまるで違う。プールに竿を垂らして人魚と力比べをする綱引きのようなゲーム。このゲームの人魚さん達はWSM、世界スーパーマッチョマーメイドの皆さん。その力たるやいつかのトロルをも凌ぐ。

「よーし、やってやる。人魚なんかに負けるか」

竿を垂らして勝負開始。力比べが始まった。人魚は竿を掴みリクごとひょいっと持ち上げるとカウボーイも真っ青な勢いでぐるぐると竿を振り回す。

「目が回る~」

そのまま遠心力を利用して投げ飛ばす。

リクは壁に勢いよく激突した。

「リク、大丈夫?」

「参りました・・・」

「奥に行きましょう?」

俺たちは目を回しているリクを担いで奥に進んだ。

奥の通路は機器がズラリと並んでいる。

「ここは動力部かな?」

「たぶんそうだろうね」

「こら、お前達!」

声がしたほうを見るとグレムリンが立っていた。

「お前達、そこで何をしている」

「俺たちはただの通りすがりです」

「通りすがりだと?本当か?」

「本当です」

「怪しいな。我々の仲間ならここが動力部であることは知っているはず。そして用事はなくて通りすがりなどあり得ない。さては、スパイだな?」

「まずいな、騙せない」

「こうなったら」

「戦うしかないですね」

「任せろ、あるあるフラッシュバック!

思い浮かべろ、ネジが一本足りない!」

「ぬわ~、ネジが足りないと完成しない!怒られる!」

グレムリンは頭を抱えてガタガタと震えている。

「やった!」

「さて、相談なんだが。君、俺達の仲間にならないか?」

「レオ、何を言っているの?」

「劇団をやるために照明係が必要だろ?

この人なら機械に詳しいから」

「なるほど」

「で、どうする?」

「ー仲間になろう。ここで働いているのもいい加減に疲れた」

「それじゃあ、これからよろしく」

「俺はガボ、よろしく」

「こちらこそ」

「仲間になった印にこの船のとっておきのゲームを紹介しよう」

「とっておきのゲーム?」

「こっちだ」

案内された部屋には、モニターと赤と青のボタンが一つずつ付いた台が置かれている。

「これだよ」

「いや、でも、これ・・」

台には『絶対にボタンを押したらダメだからね?』と書かれた張り紙が何枚も貼られている。

「皆さん、何をためらっているんですか?ボタンを見たら押せって習いませんでした」

「ミル、それはどこの学校だよ」

俺達の心配をよそにミルは赤いボタンを押した。

アナウンスが流れて画面が表示される。

「ボタンを押した君?ルーレットスタートだよ?」

程なくしてルーレットが止まる。

続いてさも愉快そうな声のアナウンス

「Aブロックが消失しました」

どうやら赤いボタンは爆破スイッチだったらしい。

アナウンスが流れる

「ゲームを続けますか?」

ミルがボタンを押そうとした時、猫人間が駆け込んできた。

「ちょっと待て、平然と船を爆破するな!」

ミルが猫人間とにらみ合いを続けている間に俺はしれっとボタンを押した。

アナウンス。

「残念、この船は墜落します!」

言ったとたんに船はみるみる高度を下げていく。

「ねえ、これ、まずいよね?」

「何を今さら」

「焦っても仕方ないよ」

「だよね~」

やがて船は運よく不時着した。

「助かったね」

「うん、助かった。よかったね~」

「ここはどこだ?」

猫人間たちは既に脱出していていなかった。

「あ、あれは!」

外に出た瞬間に目に飛び込んできた巨大な城。紛れもなく猫人間の城だった。



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