第11話 料理長登場!

 俺たちは工場に潜入するために地下道を進んでいた。

「ねえ、さっきから空気が薄くなっている気がする」

「無理もない。入口が塞がっているんだから」

「あ、リク、しっかりして!」

こうなった原因は数分前。地下道に入った直後のことだ。

レナが誰かが地下道に落ちると危ないからと入口を呪文でふさいだのだ。

その結果、完全な密閉空間となってさっきからどんどん空気が薄くなってきている。

「もうすぐだから頑張って」

「小生は死ぬ前に魚が食べたい」

「レオ、死ぬな!」

そうこうしているうちに出口に到着した。

「よし、着いた」

 目の前の工場は意外と大きく、10メートル以上はある。

入り口に門番らしき2人の猫人間が立っている。

「さて、どうするか」

「私の呪文で猫人間に変身しましょう」

「良いね、賛成」

「では行きますよ。変身ポン!」

「おお、猫人間だ」

「これならばれないね」

「では、さっそく」

「潜入開始」

  「警備、ご苦労様です」

「ご苦労様。休憩かい?」

「はい」

「俺たちも交代するからよかった一緒に食堂で昼食を食べないか?」

「良いですね、ぜひ」

「じゃあ、行こう」

 中は地下道と同じく殺風景だ。

「いや~、門番の仕事も大変ですよねえ」

「前線で戦う君たちに比べれば楽な方さ。と、そうだ」

「どうしました?」

「合言葉を確認していなかったな」

「合言葉?」

「嫌だな、とぼけているのか?今日の気まぐれメニューに決まっているだろう」

いや、知るか!

「あの~、俺達は知らないです」

「知らないだと?」

「はい」

「この裏切り者め!謀反むほんだ!」

思ったよりも罪が重い。

「ちょっと待って、なんで」

「何故かだと?料理長は我々にとってマドンナ的存在。料理長の考えるメニューは全て知っていて当たり前。従って、知らないという事は忠誠に背くことすなわち謀反だ」

「そんな~」

「ええい、皆の者!料理長への愛を偽った罪でこいつらを捕らえろ!」

愛する前にそもそも料理長に会った事がないんですが・・

「とにかく逃げろ」

「待て~!」

鬼の形相で追いかけて来る猫人間達を振り切って食堂に逃げ込んだ。

 「はあ、はあ」

「扉を閉めて鍵をかけたからもう大丈夫」

「ここは、厨房だね」

「そうみたいだね」

「おい、お前達!」

振り向くと女性の猫人間が腕を組んで仁王立ちしていた。

コック帽に白いエプロンを着けている。

もしかして料理長?

「あたいの聖域に踏み込むとはいい度胸だねぇ」

姉御降臨!やっぱりこの人が料理長だ。一人で切り盛りしているのか。

「待って下さい、すぐに出て行きますから」

「ダメだ。それじゃあ私の気が収まらない。きっちり責任を取ってもらうよ」

両手の爪を立てる

「ミル、どうにかして」

「任せて下さい。百熱の炎より生まれしドラゴンよ、ここに」

ドゴが現われる。

「ドゴ、好きなだけここの食材を食べて良いからこのお嬢さんを退場させて」

「ぐわ~!」

「えっ、ちょっと⁉」

ドゴは尻尾で料理長を捕まえると壁に穴をあけてどこかへ去って行った。

「ドゴ、優しいね。私は嬉しいよ」

「親ばかだ」

開いた穴から追手がやってくる

「捕まえろ!」

「俺たち捕まるよりも料理長を助けろよ」

「とにかく逃げよう」

料理長そっちのけで追いかけて来る猫人間達。

「ダメだ、捕まる」

「あっ、機械室」

「あそこに逃げ込もう」

 機械室の中では猫人間達が筋力トレーニングに励んでいた。

トレーナーらしき猫人間がげきを飛ばす

「頑張れよ!鍛えれば料理長のハートを射止められるからな」

切実だな・・

「ん?だれだお前たちは」

魔法の効力が切れて変身が解けている

「見つかった」

「俺たちは勇者とその仲間だ」

「勇者だと?ふっ、所詮しょせん俺たちには敵わない」

言いながらトレーナーは魔法で出したリンゴを握りつぶす

「お前達、下がっていろ」

リクがゆっくりと前に出る

「ふんっ!」

強化魔法でムキムキになり、床をへこませる

「おー!」と歓声が上がり拍手が起こる

「今のうちに工場の電源を探すよ」

「うん」

調べてみるとエアコンにすべてのケーブルが集まっていた。

「これじゃないか?」

「えっ、そんなことある?」

「とりあえずエアコンを切ってみよう」

リモコンのボタンを押す

「トレーナー、全システムダウンです!」

「なんだと⁉」

どうやら本当にエアコンが電源だったらしい。

「すごいな、セキュリティのかけらもない」

「おのれ勇者め!こうなったら証拠を隠滅するしかない」

「では、あれをお持ちしますか?」

「頼む。工場の痕跡こんせきごと消してやる」

「爆破する気か?」

だが、持ってきたのは黒板だった。

「引掻き始め!」

甲高い音が響き渡る

「俺、この音だめなんだよ」

「私も」

音に耐えきれずに機械が爆発していく

「トレーナー、そろそろ」

「ああ、脱出だ」

「待て!」

 猫人間達は用意してあった飛行艇に乗り込む。俺たちも後を追って乗り込んだ














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