第10話 砂漠地帯は暑すぎる

 「暑いよ~」

「もう、静かにしてよ。こっちだって暑いんだから」

俺たちは今、砂漠地帯に来ていた。北端であるサンタさんの島から南下してきてもうすぐ南端。強烈な暑さに疲弊する。どれだけ優れた防具を身に着けていても砂漠地帯では暑さが増すだけで意味がない。むしろ逆効果だ。魔王やペガサス達もダウンしている。

「ねえ、自己紹介しない?」

「今?」

「うん、少しは気がまぎれるかも」

「そういえばボブに自己紹介をしていないね」

「そうそう」

「それじゃあしょうか」

「俺は勇者のレオ」

「僧侶のレナ」

「魔法使いのミル」

「ファッションデザイナーのカナ」

「戦士のリクだ」

「俺は彫刻家のボブ。彫刻に限らず何でも創れるよ」

「よろしく」

「こちらこそ」

ちなみに。ペガサスは人数分しかいないのでボブはソリに乗っています。

魔法で守られているから着陸するときも落ちません。

「・・・・やっぱり暑い」

「うん」

「カナ、魔法でスカーフを出してよ」

「いや、それは・・・」

「今出すと恐ろしいデザインになると思うよ?それでも良ければ出すけど」

「ああ、そうか。じゃあだめだ」

この世界では衣服や防具は店で買う他に魔法で出すことも出来る。

だが、注意点として魔法で出した衣服や防具は術者の感情によってデザインが刻一刻と変化する。例えば清楚なイメージで出した服が術者の怒りの感情に反応して着ている時に突然とげとげしいデザインになることもあり得る。恐ろしいことにこの効果は永遠に続き服を他の人が来ていても服を作った術者の感情の影響を受ける。そのため魔法で作った服が売買されることは無い。

今のこの状況でスカーフを出したらどんなデザインになるか想像もつかない。

「やっぱり、スカーフをもらいに行きましょう?」

「賛成」

そんなわけで俺たちは下にあるカレー屋さんに行くことにした。

「あっ、お金ないよ」

「スカーフをもらうだけでカレーは食べないから良いでしょ」

「そうだね」

 「えーっと、お店の名前は『トロトロカレー』」

「そのままだな」

「入ってみよう」

店内では猫人間2人組と店主が揉めていた

この店の店主はカレースライム。カレースライムはニンジンやジャガイモなどが入ったカレーのルーを長方形のゼリーにしたような姿をしていて正面に目と猫口がついている。食べられておいしいと言われることが願い。味は絶品だがすくい上げると崩れるためスプーンを持っていないと地べたに四つん這いになって食べることになる。そのため道行く人が嫌がってめったに食べてもらえないちょっとかわいそうなスライム。

「良いじゃないかよ、置いてくれよ」

「そうだそうだ」

「何度言われても俺は既製品を置くつもりはない」

どうやら猫人間たちが例のグラタンと同じシリーズのカレーを

置くように店主に迫っているらしい。

「俺は自家製のカレーしか扱わない。他をあたってくれ」

「優しさが足りないぞ」

「ここで俺がお前たちの願いを叶えてやるのは優しさではなく甘やかしだ。

だが、人生そんなに甘くねえ。人生はカレーより辛い《からい》!」

「ぐぬぬ・・・」

「ふむふむ。工場の名前はこれか」

「にゃんにゃんファクトリーって言うんだね」

猫人間たちがはっとして振り向いた

「何だお前たちは」

「勇者とその一行ですけど」

「なっ・・・!」

「しまった、勇者に工場の名前を知られてしまったにゃ!」

「帰って報告だにゃ」

一目散に逃げだす猫人間達

「あ、待て!」

 「はあ、はあ。しつこいにゃあ」

「捕まるわけには行かない。ここ掘れにゃんにゃん!」

地面に穴が空いた

「逃がすか」

猫人間が空けた穴の先は地下道だった。コンクリートで舗装されていて飾り気は特にない。

「おい、まずくないか」

「え?」

「このままでは勇者たちを工場に案内してしまう」

「確かに・・」

「えっ、この先に工場が⁉」

「しまった、聞かれてしまったにゃ!」

「このバカ!こうなったら」

猫人間達が急ブレーキをかけてこちらに向き直る

「勝負だにゃ」

「受けて立つ」

「待って、ここは魔王の権力にひれ伏してもらおう」

「いい考えだね」

「さあ、いでよ魔王!」

「・・・」

「あれ?」

「おーい、魔王?」

魔王はキャリーバックの奥でガタガタ震えている

「猫・・怖い」

「は?」

「僕は猫系モンスターが大の苦手なんだ」

「そうなの⁉」

「・・・まあ、ハムスターだからなあ」

「猫系モンスターだけはどうしてもだめで支配せずに好き勝手やらせていたんだ」

こいつらがならず者になった理由ってそれじゃないのか・・

「ふん、魔王などもとより主ではない。我々の主はマド―」

もう一人の猫人間が慌てて口を塞ぐ

「あああ、何でもないぞ」

「そういうことなら私が相手です」

ミルが前に出る

「ミル、怪我しても治してあげるから思いきり戦いなさい」

「いい度胸だにゃ。くらえ、肉球ぺったんこ!」

猫人間がミルの両のほっぺたに肉球を押し当てる

「これでリラックスさせて戦意を奪うにゃ」

「うらやましい」

「レナ、一応は攻撃だから」

「―気持ちいいですね。ですが、日々ペガサスや魔王をハグしてきた私には

あと一歩足りません」

「ええ!何やっているのこいつ⁉」

「レオ、今です」

「よし、あるあるフラッシュバック!」

光が猫人間達を包み込む

「思い浮かべろ、おでんの卵が箸で掴めない!」

「せ、切ないにゃ~」

「想像したら泣けて来るにゃ」

「リク、今だ」

「任せろ。げんこつアタック」

猫人間達にげんこつをくらわせる

「不覚・・」

「やられたにゃ」

「よし、俺たちの勝利だ」

「こいつらどうする?」

「おじさんに引き渡そう」

 「はい、おじさん。捕まえてきましたよ」

「そうか。俺はこいつらが熱々のカレーを食べれるように特訓してやる」

「そんな殺生な」

「じゃあ、止めよう」

決断早いな。

「ところでおじさん、スカーフ持っている?」

「スカーフ?」

「砂漠地帯は暑いから顔を覆えるやつが欲しい」

「そういうことか。良いぜ、人数分やるよ」

「ありがとう」

 「スカーフをもらえてよかったね」

「うん。次はどうする?」

「決まっているでしょ、さっきの地下道から工場に潜入する」

「だね」

「よーし、地下道にしゅっぱーつ!」

「おー!」




































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