第9話 仲間が増える?

 サンタさんからソリをもらった俺たちは例のグラタンの秘密を探るべく野菜を提供している農家さんを目指していた。

リクが声をあげる

「見えたぞ、あそこだ」

目の前に広がる畑。ほのぼのとした光景に和んでいると急にジェットコースターが落下するような感覚に襲われた。

どうやらペガサス達が空腹だったらしく畑の野菜に向かって突っ込む。

「リク、この子達を止めて」

「いや~、食べ物の恨みは怖いからなあ。食べさせてあげよう」

「言っている場合か!」

このままではペガサスはともかく俺たちは地面に激突する。願いもむなしくあっという間に茶色い地面は目と鼻の先。俺たちは勢いよく地面にダイブした。

「痛った・・」

「皆、怪我は?」

「大丈夫」

苦しむ俺たちを尻目にペガサス達はもぐもぐと野菜を食べる。

「何だお前たちは!俺がイライラしている時に」

怒っているのはカボチャだ。見た目はハロウィンのジャック・オ・ランタンと全く同じ。

「レナ、カボチャがしゃべっていて怖い」

「大丈夫。煮れば大人しくなるから」

「待って、悪かった。謝るから早まらないで」

「わーい、ペガサスがふかふか」

「気持ちいいね」

「話を聴け!」

「何だよ、さっきからうるさいよ」

「原因はお前達だろ!」

「で、お前は? 何を怒っているの」

「ハロウィンのかぼちゃの扱いが雑なんだよ!!」

「は?」

「魔女やモンスターは喋れるし動けるから良いよ。俺達カボチャはくりぬかれて灯を灯されて終わりだ。あんまり見分けがつかないし」

「言われてみればねえ。そうかもしれないけど・・」

「で、あなたはどうしたいのですか?」

「短直に言うともっと目立ちたい」

いや、ハロウィンだとカボチャが一番目立っているような気がするが・・

「なんか前にも似たことがあったような」

全員の視線がカナに集まる。

「そ、そんな風に見ないで下さい。ハムスターを抱きしめてもふもふしますよ」

うん、抱きしめて良いから交代してね。

「そんなことより」

「そんなこと⁉」

「あなた、カボチャですよね」

「そうだが」

「では、あなたのお仲間がどこへ出荷されているか知っていますか?」

レナ、その聞き方は悪意あるよ。

「知っているとも」

「では私たちに―」

「ちょっと待った。教える代りにクリスタルを取ってきてくれ」

「クリスタル?」

「この先の洞くつにある。それがあれば俺は最高に目立つことが出来るのさ」

あんまり目立っても今度は浮くよ?

「分かった。取ってきてあげる。でも、必ず教えてよね」

「もちろんだ」

 こうして俺たちは洞くつに来ていた。来ていたのだが・・

「良いじゃないですか!」

「ダメな物はダメだ。入場料を払え」

俺たちはおじさんに足止めされていた。年齢は40代くらいで上下とも灰色のつなぎを着ている。職業は彫刻家で彫刻の他にも家などあらゆるものを作ることが出来るらしい。この洞くつはおじさんのアトリエの一つだった。

「お金が無いんです」

「じゃあ帰りな」

睨み付けてここは通さんと訴えて来る。

「分かりました、こうしましょう」

「何だ」

「私たちは今、仲間を集めています。あなたも私の仲間になって下さい。

そうすれば王様がご覧になる舞台の建築を任せてあげます」

「本当か⁉」

「はい」

それならとおじさんが仲間に加わった。この国では王様に演技を見てもらったり、

王様が使う物や場所の制作を行うことは最高の栄誉なのだ。

「俺たちはクリスタルを探しているのですが・・」

「クリスタルならこの洞くつの奥だ。案内するよ」

「ありがとう。名前は?」

「俺の名前はボブだ」

ボブの案内で洞くつを進んでいく。中は左右の壁にロウソクが灯されている。とても静かだ

「あった、クリスタルだ」

「じゃーん」

「何だ」

遮光器土偶しゃこうきどぐう踊る埴輪おどるはにわが地中から飛び出してきた

「お前たちは何者だ」

「ボブの知り合いじゃないの?」

「知らないぞ、こんなやつら。どこから入った」

「どうも初めまして。僕たちはコンビで芸を披露させてもらってます『一昔ひとむかし』と言います」

「海を泳いで地中から入ったんですよ」

「いや~、海を泳ぐの大変だったんですよ」

「本当にねぇ。歩いている人が僕らのことを見て沈没船から流れて来たお宝だ~

とか言ってねえ」

「ありましたねえ」

「悪いけど、急ぐから。そこのクリスタルをもらうよ」

「あら、つるっと滑ったわ」

「陶器だけにね」

「やかましい」

「まあまあ落ち着いて。僕たちの芸を見て下さいよ」

「は?」

「僕たちの芸を見て笑わなかったらクリスタルをあげます」

「―分かりました。見せてください」

「ありがとうございます。では早速」

「コント」

「ラーメン屋」

埴輪が店主で土偶が客を演じる。

「いらっしゃいませ」

「大将、何で変顔をしているんですか?」

「これ地顔!こういう顔なの」

「またまた~面白いですよ」

「ご注文は」

「このお店、初めてだからおすすめで」

「塩ラーメン一杯」

「腐食するよね?俺、陶器だよ?で、あんたもでしょ?あんたも腐食するよね。

何ですすめたの、何で売ってるの」

「油さしておけば治りますよ」

「無理だよ。機械じゃないんだから」

「じゃあ、はい、味噌ラーメン」

「どうも」

「大将、味見のし過ぎは良くないですよ」

「味見のしすぎ?」

「そんなに土色になって」

「元の色!味噌ラーメン食べすぎてこうなったわけじゃないから」

「嘘ばっかり」

「本当だから」

「ごちそうさま」

「お粗末様」

「しかし店長も華やかでいいですね」

「華やか?」

「花の首飾りを付けて踊るんでしょ?」

「フラダンスやるために手が長いわけじゃないから!」

「ありがとうございました」

終わり方雑!

結果として俺たちは全員笑ってしまった。

「残念、僕たちの勝ちですね」

「くやしいな。もう一回勝負してください」

「良いですよ」

「よし、助っ人すけっとを呼んできます」

「助っ人?」

ペガサスと魔王を呼び出す。

「この子たちに見せて下さい」

「動物!!」

「さあ、どうぞ」

結果としてネタは完全に滑った。そりゃあ、動物が相手だからね。

「俺たちの勝ちですね」

「くやしいけど負けは負けです。出直してきます」

地面に穴を掘って帰る土偶と埴輪。

開いた穴から海水が入り込んでくる。

はた迷惑この上無い。

「まずいです!浸水してきます」

「急げ」

俺たちは大慌てでクリスタルを回収して脱出した

 「はいこれ、クリスタル」

「ありがとうな。悪いが目の所にかざしてくれ」

「こう?」

透明に輝く2つの丸いクリスタルがカボチャの目にピタッとはめ込まれた。

「これで俺も人気者だ」

「良かったね。ところで、出荷先のことなんだけど」

「出荷先はここから南に行った場所にある工場だ」

「南に工場?」

「あったかな」

「嘘じゃねえよ」

「新しく作ったのか」

謎は深まるばかりだが俺たちはカボチャにお礼を言って畑を後にした。


































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