第6話 ペガサス泥棒を捕まえろ
「やってきましたペガサス牧場!ここではたくさんのペガサスたちが放牧されています。あれ?ペガサスたちの姿が見えませんね。まるで殺風景です!場所を間違えたのでしょうか」
例のごとくはしゃぐミルをレナがなだめる。
「記者の方、落ちついて。あと、さりげなく悪口を言うのはやめなさい」
だが、ミルの言うとおりだ。まるでペガサスたちの姿が見えない。前に来た時はもっと大勢いたはずだが?
「こらー、お前達!」
怒鳴り声のした方を見るとここの牧場主である下に長く伸びたひげが立派なおじいさんがいた。なぜか両手に拳ほどの石ころを掴んでいる。
「ファーマットさん、こんに―」
「そこを動くな!!」
「え?」
石ころをひょいひょいと投げつけるおじいさん。
「何考えているの」
「ん?お前たちは!すまん、止めてくれ」
気づくのが遅いわ!狙いをつける時に気づけよ
「リク、頼む」
「任せとけ」
リクは軽くジャンプすると飛んでくる石をつかみ取った。
おじいさんが拍手する。
「ナイス!」
「やかましい」
ゆっくりとこちらに歩いてくるファーマットさん。
「ファーマットさんこんにちは」
「久しぶりだな。いやいや、すまなかった」
「いきなり攻撃するなんて。何かあったのですか?」
俺の質問に顔を曇らせた。
「実は、ペガサス達が盗難された」
「盗難⁉」
こくんと頷いた。
「あれは今から1か月ほど前のことだ」
その日、ファーマットさんはいつも通りペガサスの世話に取り掛かろうとしていた。
「さて、今日も頑張るか。しかし、妙に小屋が静かだな」
小屋を覗くとペガサスはいなかった。その隣の小屋もいない。小屋は全体の半分がもぬけの殻だった。慌てて放牧地に行くが時すでに遅し。ペガサスは一頭もいなかった。
「盗まれた―!」
叫び声だけがむなしく響き渡った。
「ということがあったんだ」
「気づかなかったのですか?」
「静かだったからね。周到に計画を立てていたのだろう」
誰がこんなことを・・もしかしてまた盗賊団か?
「残りのペガサス達は?」
ファーマットさんは右端の小屋を指さした
「あそこの小屋から各小屋に一頭ずつ、合計で10頭いる」
10頭か・・それでも以前の半分以下だね。
「どれどれ」
俺は右端の小屋を覗いてみた。
「この子、ペガサスじゃないじゃん。ロバサスじゃん」
ロバサスはロバの体に小さな天使の羽が生えたペガサスとロバのハーフでペガサスの亜種。1メートル飛ぶのに半日かかります。遅いね。
ファーマットさんは頭を掻いた。
「すまん、その小屋の隣からだった」
「ファーマットさん、俺たちがその泥棒を捕まえてみせます」
ファーマットさんは目を輝かせた
「本当かね」
「もちろん、任せて下さい」
自信満々に言う俺の腕をリクが引っ張っていく。
「リク、何だよ」
「何だよじゃないだろ。どうやって捕まえるんだよ」
「大丈夫。俺に考えがあるから」
ニヤリと笑う俺をリクは心配そうに見つめた
「本当にこんな罠で捕まえられるのか?」
リクを含む俺以外のメンバーは皆心配そうだ。
「大丈夫だって。レオ特製のにゃんこキャッチャーだから」
俺が仕掛けた罠はマタタビと小魚を皿にのせて地面に置いたもの。
盗賊が食事に夢中になっている隙にリクが後ろから飛びかかかる作戦です。
「いくら猫人間という名前でも知能は人間と変わらないぞ?馬鹿にしすぎじゃ・・」
「まあ、待ってみようよ」
果たして猫人間は現れた。猫の顔のバッチをつけている。間違いない、盗賊だ。
「よし、来ましたよ~」
だが、盗賊は罠を一瞥するとそのまま歩いて行ってしまう。
「あれ?」
「ふん、こんなちんけな罠にかかるものか、怪しすぎるだろ」
ぐぬぬ・・・
予想通りの結果による皆の白い目が痛い。
「だから言っただろ」
猫人間はピタリと足を止めた
「わなを仕掛けたやつ、出てきなさい」
俺は起立して返事をする
「はい!」
「まだまだ詰めが甘いぞ。次はキャットフードも用意すると良い」
「すみませんでした」と、頭を下げる
「うむ、分かればよろしい」
そのまま悠然と去っていく猫人間―
「って、ちょっと待て!」
「やばい」
逃げ出す猫人間に呪文を唱える。こっちにもプライドがある。今回ばかりは自分の手でやらなければ気が済まない
「あるあるフラッシュバック!」
光が猫人間を包む。
この技は日常あるあるを想像させて感情を操作する。ミルの魔法の劣化版です。
「さあ、思い浮かべろ。賞味期限が長いと思って放置していたらいつのまにか賞味期限切れになっていた」
猫人間がしゃがみこんで頭を抱える
「ううっ、ああああ、悲しいにゃあ、切ないにゃあ」
「リク、今だ!」
「任せとけ」
リクは猫人間に飛びかかって抑え込んだ
「にゃー、しまった」
「観念しろ」
「さてと。お前にはいろいろと聞きたいことがあるからな。まずは」
「にゃー、放すにゃあ、尋問は怖いにゃあ」
じたばたと暴れる猫人間
「じっとしてろ。すぐに終わるから」
「嘘だにゃ。絶対に時間がかかるにゃ」
争点はそこかよ。
「嫌だニャー!!」
がくっと気絶する猫人間とそれを見て困惑するリク
「俺のせいなのか?」
「う~ん、どうだろうね。レナ、診てあげて」
「はいはい。大丈夫、脈は正常よ。気絶しているだけね」
「オッケー。こいつは縛ってファーマットさんに引き渡そう」
そんなわけで俺たちは再びファーマットさんのところへ来ている。
「この通り、盗賊は捕まえました」
「おお、ありがとう。これで牧場に平和が戻る」
「良かったですね」
「こいつ、どうするの」
ファーマットさんが頷く
「後で隣国の役人に引き渡すよ」
俺は遠慮がちに切り出した
「あの~、お願いがあるのですが」
「なんだね」
「この牧場のペガサスを譲ってほしいです」
「ペガサスを?何頭だ」
「俺たち一人に一頭ずつ、合計で5頭です」
「5頭だと⁉う~ん、まあ、良いだろう。救ってくれたお礼だ」
「ありがとうございます」
「そういえば、前に譲ったペガサス達はどうした」
「逃げました」
なにしろ行く先々でモンスター達が凶暴化していたのだ。争いを好まないペガサス達が耐えられるわけがない。
「分かった、ペガサス達を譲ろう」
こうして俺たちはペガサスを仲間にした。
「気を付けて行けよ」
ファーマットさんに見送られながら牧場を後にした。
俺たちは譲ってもらったペガサスに乗って空を飛んでいた。
「リク、この後どうするんだ」
「だからお前は。そうだな・・ソリが欲しいな」
レナが首を傾げる
「ソリ?」
「うん。せっかくペガサスが手に入ったわけだからね。ソリを手に入れることができれば荷物も運べる」
「なるほどね」
ソリを手に入れることが出来る場所と言えば・・
ミルの目が輝く
「また、あの場所へ行くんですね?」
「そうなるね」
「やったー!!」
ミルの言うあの場所はこの物語で通って来た場所ではない。全く新しい場所です。
でも、俺たちにとってとても思い出のある場所。それがどこかは行ってからのお楽しみ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます