第5話 対決!どっちが主役?

 ここで改めて国や村の位置関係を整理しよう。俺たち全員共通の故郷であるカルナ王国を中心としてその左隣りが村、村の隣もといカルナ王国から見て北西に位置するのがテラ王国。そして俺たちはそこからさらに北上した北に位置するミモールへ来ていた。

 レナが辺りを見回した

「この街も随分荒れ果てているのね。前に訪れた時はもっと栄えていたのに」

レナの言う通り多くの建物が崩れてガレキが散乱している。

「おっ、劇場が見えたぜ」

レオの言う通り正面に大きな劇場がある。この劇場はミモールのシンボルだ。劇場は外観を見る限りでは大した損傷はない。おそらく街の人々が協力して直したのだろう。

ミルがうれしそうな声を出した

「ねえ、せっかくだから劇場を見に行きましょう?何か上演しているかもしれないですよ」

確かに前に来た時はモンスターを気絶させることで精一杯だったからね。劇を見る余裕は無かった。うん、見に行ってみるか

「よし、じゃあ行こう」

 受付の女性に声をかける

「何か上演してる?」

「ええ、今丁度やっていますよ。御覧になりますか」

「はい、見たいです]

それぞれでお金を出し合ってチケットを購入。それではレッツ鑑賞タイム!

役者は学生服を着た女性2人。この世界には一般教養に加えてモンスターの扱い方や呪文、武器について学ぶための学校があるので学生もいます。テレビもあるよ。

「あんたが全部悪いのよ!!」

「ごめんなさい、わざとではないの」

「謝っても許さない。私、本当に楽しみにしていたのよ?きな粉がたっぷりとついたきな粉揚げパンを食べることを!」

喧嘩の理由:きな粉揚げパンのきな粉が少なかった。

「あれはわざとではないの。不可抗力よ」

「不可抗力?あなたがしっかりしていれば変えられた運命でしょ。それに、私は知っているのよ」

「何を」

怒られている女性の顔が曇る

「あなたがY君のご飯を大盛にしたことを!」

「そんな・・」

怒られている女性が膝から崩れ落ちる。

確かにY君のご飯は大盛にしたわ。でも、まさか、気づかれていたなんて・・

「ご飯の大盛という高度なことをあなたは行った。でも、きな粉揚げパンにきな粉を付け足す単純作業はしなかった。つまり、あなたは私を軽視してY君のご飯だけを意図的に大盛にしたのよ!」

高度ではないよね。

怒られている女性がこうべを垂れる。

「ごめんなさい、次からは気を付けます」

「過去は変えられないのよ。あなたが好きな友人のためにご飯を大盛にする素晴らしい人間だといいふらしてあげるから覚悟しなさい!!」

アナウンスが入る

「本日の上演は終了となります。ご来場、誠にありがとうございました」

俺は楽屋に戻ろうとする怒られていた女性に声をかけた

「演技、素晴らしかったですよ」

だが女性の表情は悲しげだ。

「ありがとう。でも、ダメなの。主役になれなかったから」

ミルが励ます

「でも、演技は上手でしたよ」

女性は首を横に振る

「意味がない。主役になった方が優勝する決まりだから」

はい?

俺は目を丸くする

「内容は関係ないと」

「うん」

「へえ、そうなんですか」

この女性の話によるとこの劇場では試合形式で劇が行われる。AさんとBさんが試合をしてAさんが勝った場合、Bさんは他の誰かに勝つまで舞台に出続けるらしい。出続けると言ってもいつでも引退はできる。しかしチエックリストがあるため優勝しなければテレビに出る資格を得られない。そして優勝する条件は主役を演じること。演技のうまさは全く関係なし

「このままではテレビに出られない」

ルール反して夢は現実的。

リクがあることを思い出した

「あの、俺たちはファッションデザイナーを探しています。お知り合いにどなたかいませんか」

女性が顔を上げる

「それならここにいますよ」

この人がファッションデザイナー?でも・・

「あなた・・えーっと、名前は」

「カナです」

「カナさんは女優さんですよね」

「ええ、今はね。元々は名のあるファッションデザイナーだったんです。

だけど自分でデザインした服を着て舞台に出たくて」

なるほど、それで女優に。

俺は両手を合わせる

「お願いです、仲間になってもらえませんか。あなたの力が必要です」

きょとんとする女性に事情を話す

「―話は分かりました。王様に見て頂けるのならこの上ない喜びです。でも、今はダメ。優勝しないとテレビに出られないから。怪鳥の羽さえあれば」

レナが首をかしげる

「怪鳥の羽?」

「はい。この街のはずれにある古びた屋敷が怪鳥の住処になっています。その怪鳥の羽を使った装飾品は容姿の魅力を大幅に上げると言われています。なので手に入れば主役になれると思うのですが」

リクが頷いた

「分かった、その羽を取ってきてあげるよ」

女性の表情が明るくなる

「えっ⁉本当ですか」

「もちろん。良いよね皆」

それで女性が仲間になってくれるのなら全然オッケーだ。全員賛同して羽を取りに行くことになった

「ありがとうございます」

 怪鳥のいる屋敷は朽ちてはいるが洋風の立派な屋敷だった。

俺は思わず感心した

「なかなかに立派なお屋敷だね」

「立派だね。呪文で復元してあげたい」

ミルがはしゃいでいる

「あの屋敷に怪鳥がいるんですね?いざ、突撃!!」

屋敷に向かってまっしぐら。

「おい、危ないぞ」

リクの制止もむなしくミルは屋敷の中へ消えていった。

「はあ、警戒心無さすぎだろ」

だが、リクの心配をよそに屋敷の中からはうれしそうな声が聞こえてくる。

皆で顔を見合わせて俺は首を傾げた

「とりあえず行ってみるか」

中に入るとそこはファンシーな世界だった。

俺は唖然とする

「これって・・」

そこにはケルベロスやらゾンビ化して白目になった虎系のモンスターやらが大量に闊歩かっぽしていた。

「そうだ、ミルは」

俺はあたりを見まわした。すると

「わーい、かわいいねえ」

目移りしながらモンスターの鑑賞を楽しむミルがいた。

「おい、本当に危ないぞ」

リクの意見は正しい。基本的にこの世界の猛獣系のモンスターは手なずければ忠実な仲間になる。だが、ケルベロスのようにそもそも人に仕えない種族やゾンビ化しているモンスターは話が別。ゾンビ化した猛獣は本能のままに生きるため絶対になつかない。お手をさせようとすると噛みつかれるので要注意。

ミルが襲われていないのは手を出していないからだ。

「大丈夫ですよ~あっ、この子達飼えませんかね?」

レナが制止する

「ダメよ。世話が大変でしょ」

そういう問題じゃない

「さっさと先に行くよ」

リクに促されて「はーい」と返事をする一同。

しばらく歩いて怪鳥の所へ到着。驚くほど巨体ではないが不死鳥のような容姿と全身若草色の体毛が美しい。

「あの怪鳥、卵を温めている」

レナの言う通りどうやら卵を温めているようだ。

俺は怪鳥に手を伸ばす。

怪鳥は顔をひきつらせた。

「ああ、違うから。卵を取りたいわけでは無くて羽がほしいの」

再度手を伸ばす。

怪鳥はくちばしを開いてガタガタと怯えている。

ああ、そっか、ごめん。

「羽を全部じゃなくて数枚ください」

怪鳥はくちばしを開いてガタガタと震えている。

ごめんごめん

「羽を数枚貸してください」

怪鳥はくちばしを開いてガタガタと震えている。

ごめんごめんごめん

「貸すのもダメか。なら、諦めようかな」

レナがはっとした

「羽を取ってはダメよ。卵が冷えてしまう」

それはそうだ!俺としたことが。

リクは呆れている

「いや、数枚取ったぐらいで」

貸してもらえない以上は仕方がないので一度帰ることにする。

カナに報告した。

「そう、確かにそれは仕方がないわね。でも、いい方法があるわ」

「いい方法?」

「ちょっと待っていて」

カナは何処かへ駆けって行き若草色の毛布を手に戻って来た

「それは」

「私が編みました。羽を貰う代わりにこれをかけてあげましょう」

なるほど、それなら卵が冷えないね。色も偶然とはいえ怪鳥と同じだし。

「分かりました」

毛布を受け取り再び怪鳥の元へ。

俺は怪鳥に声をかける

「毛布をもらってきたのでこれと羽を交換してください」

怪鳥はしばらく毛布を見つめていたがくちばしで毛布をくわえると自分の体にかけた。

「じゃあ、羽をもらうね。レナ」

「任せて、癒しの力よ届け!!」

光が怪鳥を包み込む。

羽をむしられるのは痛いからね。回復しながら取ってあげよう。

こうして無事に羽を手に入れた。さあ、帰ろう。

カナの所へ行き羽を渡す

「ありがとうございます。きっと優勝できると思います」

 翌日。劇場でカナと相手の女性が勝負している。カナは怪鳥の羽を正面と左右に1枚ずつ付けた冠を被っている。

劇が終了してから少ししてカナが劇場の外に出て来た。カナは俺たちを見つけると破顔して駆け寄って来た。

「あなた達のおかげで優勝できました。本当にありがとうございます」

「どういたしまして」

俺はお礼を言って改めてお願いする

「俺たちの仲間になってもらえませんか」

カナは頷いた

「喜んで」

やったー!と、喜ぶ一同。

カナがあることを思いついた

「そうだ、一つ提案があるんだけど」

「何?」

「何か徒歩以外の移動手段はあるの」

ドラゴンがいるがデメリットもあることを伝えた。

「それなら、ペガサス牧場でペガサスを譲ってもらいましょうよ」

今までは遠距離であるためペガサス牧場に行く気にならなかったが、ここからならそれほど遠くない。うん、名案だ。

「いいね、次はペガサス牧場だ」











































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