百合SFについて思うところ

古新野 ま~ち

第1話

1 はじめに


書評家の杉江松恋氏の「百合SF」を批判したという話題に興味をもちました。それというのも、私自身、『百合』というジャンルで作品がまとめられることに、違和感を感じるからです。

私は、別にキャンペーンが潰れろとは言いません。これは絶対です。絶対に言いません。


ただし、積極的に『百合SF』なんざ大嫌いだと言ってもいいくらいです。が、これは私の気分なのでとやかく言われる筋合いはありません。それはたとえ『GL』と名を変えようと、多くの人が対として思い浮かべる『BL』でもです。


2 百合ぎらい?


まず言っておく必要があるのは、同性愛を描く作品が嫌いではありません。それをテーマにした作品で、おそらく生涯わすれることのない作品を多数あげられます。作品の質が良ければ、それでいいのです。良くなければ、それは知ったことではありません。


私の百合やBL批判はホモフォビアに基づくものか? というものに関しては、すみませんが、私はそうではないと思っているけれど、振る舞いでそう判断されたら批判されなければならないと思っています。


予防線はこれくらいにしておきます。


3 百合SFについて


あまりSFの熱心な読者でないため、おそらくこれらの作品がそう呼ばれているのだろうなという雑な理解ですが、私が読んだことのあるものでは、


『紫色のクオリア』

『ハーモニー』

『裏世界ピクニック』


あたりでしょうか。他にもあったかもしれませんが、気にしていなかったので。


おおむね、登場人物が女性で、彼女らの関係性が親密であるというのが重要なのが共通している気がします。むしろ、それ以外に共通項を探るほうが難しい気がします。


百合SFの仕掛人とされる編集者のインタビューで百合SFが受けた理由を分析されています。杉江氏は、それをさして、『性の対象として消費している』としています。私もこの意見に同意ですが、この性的消費という言葉を異常に嫌う人がいるようです。おそらく、週刊少年ジャンプなどの作品が批判されたり萌え絵が批判されたりしたときに、よく聞く言葉だからでしょうか。

性的消費というものを私には詳しく説明する能力がありませんが、編集者のインタビューでこのようなものがあります。


『「人にはこんな感情があるんだ」と読者に思わせるような。それは百合ととても相性が良い。』


どうして、百合ならばいいのでしょうか。女性同士の関係性を描いた作品をみて沸き起こったという、その未知の感情というものですが、どうして百合で沸き起こったのでしょうか? それが男性同士の関係性やヘテロの関係性では起こらなかったのでしょうか。


あくまで推測ですが、男性読者が、百合だから、沸き起こったのでしょう。その読解が、女性同士の関係を自分好みに都合よく解釈して楽しむ読解が、性的消費とされているのではないでしょうか。


3 百合について


あくまで作品を鑑賞しているだけだと言う人がいるでしょう。わかります。何も悪いことはしていない。これはフィクションの市場を拡大させる商売なのだから、と。それもわかります。

だから、やるなとは決して言いません。


ただし、同性同士の仲を描いた作品を、それがせいぜい友情という風にしか呼べないものから、ともすれば性的関係を伴うことにも使われる「百合」や「BL」と呼ぶことが粗雑だなと思っています。


百合だから繊細な感情や未知の感情を描けるというのも、書き手や読み手が、百合と名付けた同性同士の関係性に、勝手に見いだしているだけです。


女子校をのぞく変質者みたいだとまでは言いませんが、勝手な期待だなと思います。


4 個人的なこと


さて、百合と呼ばれる作品、何度も言うようですが、私も好きな作品があります。韓国映画の『お嬢さん』という作品です。この映画の素晴らしさは置いておいて、それを鑑賞している私の楽しみかたを客観的に考えてしまうのです。


ヒロインたちがセックスをするシーンで、それを観ている鑑賞者の私というものがあります。そのときの私は、他人のプライベートなものをみています。日常生活で他人のプライベートをのぞきみている人は、それって変質者の類いだと思います。この、プライベートな部分を見ているという感覚とそれを喜んでいる、それが私には、性的消費といわれることなのかなと考えました。ちなみに『お嬢さん』はその視座も含めた器のでかい作品でございます。だから私にもその視線があると認識できた。フィクションって素晴らしいですね。


5 余談


ともあれ、百合推しのキャンペーン自体はどうでもいいんです。売れればいいんじゃないでしょうか。正直にいえば、「SF」というジャンルでさえどうでもいいんです。SFや百合で何かができるというわけでもなさそうですし、何かができると思う人はそれでいいと思います。

これはSFに限らず、一読者としていえば、ジャンルに興味がないので、「ミステリー」「恋愛」「ホラー」などもどうでもいいんです。ジャンルに何かがあるというのは、売りやすさ くらいの理由でしょうし。


ただ質のいい小説が読みたいなというワガママです。

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