とくべつ

「とくべつになりたい」

 ふたりきりの放課後。夕日に染まる真っ赤な教室。対面に座る君は突然そう言った。掃除後の教室の机の列はやけに整頓されていて、むしろ違和感があった。

「お前は十分とくべつだよ」

 わたしは、自分の顔が熱くなるのが分かった。だから夕日を見てそれを誤魔化そうとした。だから君がどんな表情をしているのか、わからなかった。

 君は何も言わない。わたしは気まずくなって、

「わたしにとっては、だけれど」

 つい付け足してしまった。それでも君は何も言わなかった。奇妙な間は未だ続いている。やっとわたしは自分がおかしなことを言ったのだと気が付いた。

「や」

 っぱりなし。そう言おうとしたとき、

「ありがとう」

 君を見ると、君も夕日に赤く染まっていた。緩んだ頬が一体どんな色をしているのか、わたしにはわからなかった。

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