男子side

 僕は昔、本で読んだことがある。


『世の中には稀に特殊な力を持つ人がいる』と


 本にはそう書かれていた。


 もし仮に特別な力を手にすることが出来るとしたら……みんなは欲しいと思うのだろうか。

 みんなにはなくて自分にしかない特殊な力……さぞかし優越感に浸ることが出来るだろう。

 でも、僕にとって特殊な力ほどいらないものは無い。

 僕に与えられた特殊な力のせいで……僕は孤独にならなければいけない。


 友達も奪われた。自由な時間も奪われた。

 この力のせいで、人と話すこと自体を拒否されてきた。


「クソ! なんで僕ばっかりが!」


 ──ドンッ!


 自分の部屋で独り、思わず机に八つ当たりする。八つ当たりをしても何の解決にもならない事なんてわかっている。それなのに……


 こういう時、傍に寄り添ってくれる人がいたら……僕のことを理解してくれる人がいるのなら……どれだけ気が楽になるのだろう。


 でも、特殊な力は僕が人に縋ることすら許さない。助けを乞うことさえも許さなかった。


 もし仮に、僕の特殊な力を理解してくれる人がいるのなら……


 僕はその人を本気で愛そう。


 深く心に誓った。

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