第7話 2日目~夕方~

【いちご目線】


「早速装備していくかい?」

「はいっ」


元気よく返事したのは私。

今は武器のお店に来ているんだ。これでも勇者パーティーだから、モンスター倒したい欲がありまして。防具より武器だーってなったんだよね。

各々気にいった武器買ってるみたい。


「ふぉー、買えた買えた♪」

「やっとゲームっぽいことしてる感あるよな」

「そうだね……今までの何だったんだろ」


はは、ホント何だったんだろ。


「でも私が気になってるのは、きりんだよ」


何でかって、前髪の分け目が変わってるんだもん。男子ってそういうのあんまり気にしないかと思ってたよ。随分スッキリしたね?


「あー……いちごって鈍いのかな」

「へ⁉なになに、私原因⁉」

「ほら、前髪あげたら……とか。覚えてない?」


ゆずしおと、しとが口をそろえて言う。

んん~?あ、そういえば。前髪上げたらカッコイイ、とか言ったかも。


「って、何で知ってるの⁉」

「いやぁ、きりんが真っ赤になって相談してきたからさぁ」

「あぁ。『俺って前髪上げた方がいいのか』みたいな感じで」

「んふふ~♪あの時は面白かったよね」

「僕たちが整えたりとかな~、大変だった」


だいぶ面白がってますねー、きりんキレそうだよ?小刻みに震えてる。

と思ったら。


「お、お前ら言うなって言ったろ……!」


……恥ずかしかったんだね。最近はきりん、ずっと真っ赤だ。

そろそろ可哀想だなぁ、話題変えてあげよう。


「ちょっと話戻るけど、ゲームっぽいことって、後なんだろうね」

「そうだな……ひたすらレベル上げとかか?」

「あー、よくやるやつ!でもさ、つまんない」

「そんなこと言ったって、まだレベル10だしなぁ……」


う~ん、なかなか出ないもんだね。

その時だった。


「ゲームっぽいことしたいんなら、クエストでも受けてみたら?」


【しと目線】


クエストか……いいかもしれない。いいこと言うな、この人。で、誰?

余程沈黙が続いていたのだろうか。その人はまたもや口を開いた。


「アタシだよ!しか!さっき会ったでしょ⁉」

「「「 あぁ~! 」」」


って、話し方に加え、見た目や雰囲気まで変わってる?気付くわけないじゃないか。

……女子ってこえー……


「聞きたいことはやまやまだけど……しかちゃん、雰囲気変わったね?」


いちごが思い切ったように話しかける。ナイス!


「当ったり前!あっちは表の顔だから。この世界で上手くやっていくには、アタシの場合そうするしかなかったの」

「え?しかっちも召喚されたの?って言ってるし」

「し、しかっち⁉あんた誰よ?」

「ウチ?前も言ったけど?あー、ゆずしおっていうんだ。ゆずって呼んでよ!」

「……了解。んじゃあ、ちょっと失礼しま~す」


は?失礼します?

そう思った瞬間、ギンッと効果音的なのが鳴った。


「ふむふむ。ゆずが勇者。いちごが武道家。しと、魔法使い。……お兄が盗賊ね。なかなかいいじゃん。もう一人回復専門の職業欲しいけれど」


お兄?あぁ、きりんのことか。いや、そうじゃなくて!


「今、何したんだ?あ、何も言わなくていいぞ。ふぅん、千里眼か」


僕はしかの心を読んだ。どうやら、千里眼のスキルを習得してるらしい。

そういえば、ステータスとか見たことなかったな。もしかしたらだけど、僕たちも

スキル持ってるかもしれない。


「しと、読者の皆さんへの説明はいいんだけどさ……俺らにも説明してくれない」

「きりん、読者の皆さんとか意味わかんないよ」

「お兄、アタシのスキルだ、千里眼。過去を見たんだ」

「じゃ、透視もできるのっ?」


いちごが興奮気味に言う。確かに透視は有名だよな。


「あぁ、できるよ。後は……動物とか精霊と話せる」

「なかなかすごいじゃん、しかっちぃ~」

「精霊ってどんな奴なんだ?」

「アタシは動物の精霊を使い魔にしてるんだ。ウルフなんだけど、話してると面白いぞ。知識豊富だし。この世界のこともウルフから聞いた……どんな奴かって、そうだな……小難しい奴ではあるな。他の精霊は知らん」


ほー、かなりレアなスキルっぽいなぁ。

というか、本当にキャラ変わってるな。きりんは女子力高めで、しかは男勝り。

なんかこの兄弟面白い。


「おいおい、話ずれてるぞ。クエストのことどうなった?」


呆れたようにきりんが言う。……人のこと言えないぞ。


「ごめんごめん。しかっち、何で職業なんか調べたの?」

「戦闘系と採取系どっちのクエストにしようか考えてたんだ。……けど、まだレベル10だとはね……」

「え、ダメ?」

「ダメも何も、普通なら20はいってていいところ。道草ばっかしてたのがよ~く分かるよ。しょうがない、簡単なクエストやろう」


……つまりこれは、一緒に戦闘するってことか?


【ゆずしお目線】


ウチ達はクエストを受けるため、情報屋に移動。

……なんだけど。ウチとしとは叫ぶ。


「何で林檎ちゃん、ここにいるのぉっ⁉」

「り、林檎さん⁉……何で……?」

「んふふ~、びっくりした?」


いやいやいや。びっくりするどころじゃない!心臓飛び出るかと思ったよ!

……ごめん、流石に盛り過ぎた。


「え、誰」

「そっか。しかちゃん知らないよね。林檎さんっていって、中学生の先輩なんだよ!林檎さんが小学生のときには遊んでくれたりしたんだ」

「ん、そうだったな。……そーいや中学校ってどんなところなんです?」


きりんが言った。まあウチ達も来年は中学生だしねぇ、気になる気になる!


「……それは、来年までのお楽しみ!それよりも、クエスト受けるんでしょ?この林檎さんにお任せなさいな。ピッタリの探してやんよぉ」

「助かります、林檎さん。えと、推奨レベル10以下のがいいんですが……」


早速しかっちが話を持ち掛ける。どうやら戦闘系のクエストにするみたいだね。


「しかってすごいな」

「しかっちは年上の人でもおどおどしないやつか」

「ん、いっつもそうだよな。俺なんか人見知りすんのに」

「しかちゃん男勝りだねぇ~、それに比べきりんは……」

「「「 女子力のなんと高いことか 」」」

「そ、そんなことないからな⁉」


でもさあ、ハートの形の絆創膏持ってる男子って、そうそういないよ。前勝手にきりんのカバン漁ったときびっくりしたもん。


「漁った……?いや、読み間違いか」


フハハハハ。しとくぅん、読み間違いではないのだよ!というか読み間違いって初めて聞いたわ……普通聞き間違いだし。


「げ……」


しとが完全に引いてるよぉ?別にいいじゃんねぇ、人の荷物漁って何が悪いのさ!

……ハイハイ、わかってますよ。謝ればいいんでしょ……


「きりん、ごめんねー」

「いきなり何⁉そろそろ医者連れてった方がいいのか……?」


……どうやらウチは、頭クルクルパーだと思われてるようです。うん、知ってた。


【きりん目線】


「じゃー行くか」


俺はそう言ってドアノブに手をかける。


「林檎さん、ありがとうございました!」

「林檎ちゃん、またねぇ~」

「モンスター討伐、頑張ってね!」


林檎さんは、またね、の代わりに応援してくれた。

期待に応えなくちゃだな!と言っても、推奨レベル10の森なんだけど。レベル上げも兼ねてモンスターを倒す感じだ。


「武器も買ったし、大丈夫だよね!」


いちごは装備品が入っている袋をポンッと軽く叩いた。


「ウチは双剣買ったんだぁ!いいでしょ」

「僕は魔力を上げるグローブ」

「私はナックルだよ」

「俺は弓だな。矢も買った」

「アタシは銃だ。あ、いちおう二丁持ってるからな」


……関係ないけど、お腹空いた。


「僕も~」


おお、しと。話が合うな!


「お腹空いたぁ~!」


ゆずしおがいきなり大声で叫んだ。いやめっちゃ同意するけど、ここで言うか?道の真ん中だぞ。普通言わないだろ!そうか、ゆずしおは普通じゃなかった。ふぅ……

その時だ。


「お腹空いたの?じゃ、うちの店寄ってってよ!」


……誰?


「あ、俺ぇ?そこの通りで、喫茶店『Time Rin』を営業してる者でーす」

「「「「 喫茶店……! 」」」」


喫茶店ってあれだろ?なんかめっちゃオシャレなご飯屋さんだろ?

……え、何かが違う?……まあいいや。


「はいはいはい、行きますー!」

「私も行ってくるね~……2人はどうする?」

「僕は行くよ?きりんと、しかは……行きたいっぽいね」


行きたいよ、行きたいけどさぁ。


「危機感、無さすぎでしょ」


しかが俺の気持ちを代弁してくれた。そうなんだよ。『知らない人についていってはいけません』って習わなかったのか⁉ ……あ、でも、そうか。


「しか、スキル使って未来見てくれない?ある程度の危険なきゃいいしさ」

「あぁ、その手があったか。んじゃ、ちょっと待ってくれ」


またもや、ギンッと効果音が鳴った。


「大丈夫、安心しなよ。特に変わったことは起きない」

「でしょでしょー!君たちは、お腹が空いてる。俺は、お客を呼び込みたい。

つまりぃお互い、いい思いをする。まさにウィンウィンの関係じゃない?」


んまあ、言えてるよな。


「じゃあ……お願いします?」

「はいはいー!五名様ごあんなーい」


そうして、俺たちは謎の男の人についていったのであった。

……やっぱり危機感無さすぎじゃね?




















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