第5話 2日目~朝~
【いちご目線】
『ビューゥンビューゥン』
どこかで聞いた事のある音で私は目が覚めた。
ゲームでいうロード時間があってさぁ、意外と長くて寝ちゃったんだよね。
ふわりと止まってから、ストンと地面に着地する。
「ひぇっ」
奇妙な悲鳴とも言えない悲鳴をあげたのはゆずしお。どうしたんだろ……
「あー……」
思わず目を覆っちゃった。
ゆずしおの装備はスカートだったから、いわゆるパンツーまる見え。
「し、しず〇ちゃん状態になってしまった……って男子何をニマニマ見ている!
ウチのパンツは見せ物じゃあないんだぞぉ?」
「って!足踏むな!しょうがないだろ、俺ら思春期男子だぞ」
「ピンクのハート柄……」
「きりん、思春期ってだけで許されると思ってたのか!ていうかしとぉ!さりげなく柄言うなあ!い、いちご助けてぇ……」
「おーよしよし……」
何だかわんちゃんみたい。
わしゃわしゃ頭撫でてたら、2人も目を輝かせてやって来た。
「……はいはい……」
なんだろうね。絵面がすごいことに……
小6の男女3人を、撫でてる小6。もう、ペットショップ感覚だよ。
「ん、そういえばここって、王国なんだよね?」
しとがマップを手に言った。
そこを覗き込むと、『なし王国』って書かれたおっきい場所。ここにワープしてきたって事は、セーブポイントがある国なんだ。まあこれだけ広いし、多分見つかるよね。
「ワープじゃなくて、空を高速で進むって方法だったけどね」
「あー、しとの声なんて聞こえないよー」
「すっげぇ棒読み!」
「ウチ、夢が壊れたよ……」
うだうだ言っている間に、いつの間にか空は明るくなっていた。
【しと目線】
さて早速ですが。RPGゲーム定番の『城下町に入る』始まろうとしている。どうやらココは、なしという王様がおさめている国らしい。元々小さな村だった様だが、1ヶ月ほど前にやって来たなしが、改革した結果がこの王国なんだってさ。なしの姉のレモンは、秘書として大活躍の様だ。……王様に秘書って、世界観狂ってね?
それにしても『なし』と『レモン』って、何だか聞いたことがある名前だよなぁ。
「わ、わぁ!強い武器たくさんある!」
「ウチ専用武器、発見~☆」
「あー、俺のもあるわ」
いつの間にか、武器屋についていたっぽい。そういえば皆と武器屋行こうって話してたんだよな……記憶が飛んでた。
ん……僕専用の両手杖も見つけた。うお、意外と重たいんだな。
「しとのもあるじゃん!お前もう少し喋れよなぁ」
「遠慮しなくていいんだよ?」
「きりん、いちご、無理言ってはあかんよ」
「何故に方言を?」
ゆずしおがさりげなく止めてくれる。とてもありがたいんだけど……
「なぁ、それよりも大きな問題が発生してるんだけど、ちょっといいか?」
一応聞いておかなくちゃ、だな!
「「「 ごくりっ…… 」」」
3人はつばをのむ。
そして僕は平然と言う。
「お金が足りないんだけど」
【ゆずしお目線】
「た、足りない?つまり、買えないってこと⁉」
ウチは思わず声を上げる。こ、こんなスーパーカッコ面白武器が買えないなんて!あーもー!せっかく『ごくりっ』ってならせるぐらいの、よだれためたのに!
……いや、きたないね。これ以上はやめよう。
「と、いうことは……?」
「俺たちの番だな!」
いきなり、いちごときりんが声を揃え、面白そうな顔をする。
「な、何?」
「へ?へ⁉」
ウチとしとはプチパニック。
「さー行こうか」
「善は急げ、早く行くよ」
いちごはウチの、きりんはしとの手を取り、ズルズルとどこかに引きずっていったのだった。
【きりん目線】
「こ、ここってお城、だよねぇ……?」
「そうだよー」
「あのー、僕たち悪いことしたっけ」
「特にはないな」
さっきから、こんな会話ばかりだ。流石に何も話さないのは、ちょいと可哀想になってきたな……まあ、この先も可哀想という予感しかないんだが。
「実はな、ここで今から『カレカノフェスティバル』ってやつがあるんだけどな」
「なにその、現実を突きつけられるようなフェスティバル!!」
「ほら、よくあるやつだよ。『お互いの好きな食べ物を言って下さい』みたいな
イベントも、あるんだけどさ」
「僕、RPGの世界まできて、リア充見たくないよ⁉」
ハハハ、思った通りの反応だ。と、いうことで。
「「 お二人さん、いってらっしゃーい 」」
「「 はあああああああぁ⁉ 」」
もちろん2人とはしとと、ゆずしおのことだ。
「やー、優勝したら賞金があるって聞いたもんで」
「は⁉そんなもん、ウチ出ないし」
「言っとくけど、拒否権はないよ?もう2人の名前、エントリーしたし」
「な⁉ひ、人の名前勝手に使ったの⁉」
「まー頑張れ」
「応援、してるからね。稼いできたまえ」
「きりん、見損なったぞ⁉」
「いちごの目がお金の色に」
いったん会話が終わるとしとが、すくっと立ち上がった。何故かゆずしおを連れ、受付に行く。
「あ、すいません。このイベント、今からでもエントリーって可能ですか?」
「大丈夫ですよ~、ではお名前を」
ここでニヤリと、しとが微笑む。
「いちごときりんです」
「はい、エントリー完了しました~楽しんでくださいね」
はい、としとは爽やかスマイル。10秒ほど、間があく。
「「 ……はあああああああぁ⁉ 」」
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