第2話 1日目~昼~
【いちご目線】
サァーっと、心地よい風が流れた。
戦うことを目的として作ってあるのか、装備している服は軽い。
こんな日は、走りたくなっちゃうな。それにしても…
なんてココは、騒がしいんだろう。
「何でお前が勇者なんだよっ!」
「いーじゃんねぇ。これで、どんな敵でもバッサリだよぉ。うひょひょ!」
「まだ、レベル1なのに?」
だいたい、誰が誰かが検討つくよね?きりん→ゆずしお→しと、の順番だ。
これを聞いて私は思った。
このRPGゲームの世界に、勇者がいて。
仲間…つまり私たちがいるってことは…魔王もいるハズ!
「ねぇ、暇だし、最弱のモンスターでも倒してみる?」
私は言った。あの有名なRPGゲームだったらスライムだよね。それに、レベル上げもしてみたいし。
「あ!前方にスライム発見!」
パクリかな?このRPG。
「は?何、あいつら…」
きりんが呟くように言う。まあ、そういうのも無理はないよね。
だって、拍子抜けというか…そんな姿だったのだから。
【しと目線】
「スライム…それは、多くの人が影響されたであろうドラ〇エの最弱のモンスターである。そして、我々しろくろーず団はRPGゲームの世界で、それと戦おうとしていたのであった…」
「はい、カットー!」
うむ、我ながら良い説明だったのではないか。
そして、のってくれた、ゆずしおに感謝。
ちょっとしたアホ毛が目立つ僕、しとは魔法使いだ。え?頬っぺたについてる『僕』って字も気になるって?…出来れば気にしないでくれ。
そうそう。魔法使いというわりには中身だけで、見た目は王子様みたいだ。
僕はそんなキャラじゃないぞ!本当に。どちらかというと、きりんの方が似合ってそうだ。それはさておき…
「ホント何だ⁉このスライム!」
思わず声を出してしまった。
「えぇ~可愛いじゃぁん!」
「何を言っている、貴様…!」
ゆずしおと、きりんの会話だ。というかきりん、言葉使い…
長々と続けてきたが、正体を言おう。
「これって…100均のスライムだよね?値札ついてるし…」
僕のセリフ、いちごに取られた!
え?意味が分からないって?そのセリフ、そのまま返そう。
【ゆずしお目線】
きりんの声をテキト~に聞き流し、
ウチはスライムに心を奪われたところでございます。
何より面白いのが、ほとんどが失敗したスライムってこと。売り物なのにね。
ドボドボのとか、プツプツのとか。でも、触感が楽しいというか…分かる?
共感できたら、自分は嬉しいであります!
ってウチ、キャラ崩壊してるなぁ、コレ。
…もっとゆったりしてたいトコロなんだけど、今、戦闘中なんだよね。
ウチはどんなコマンドがあるのかなぁ~
…は!レベル1だから何もないぃぃぃー‼えっ⁉おかしいでしょ⁉
装備凄いのに、中身カスや‼使えん!アタイ使えん!
「ああああああぁぁああー‼」
広い広い大草原にウチの声が響いたのと、
スライムが引きすぎたあまりに逃げ出したのは、ほぼ同時だった。
【きりん目線】
ゆずしおって…変だよなぁ…
「それ僕も同意」
なんかこんな形で入るのも変だけど、ゆずしおの方がもっと変だと思う。
変っていうか…人と違うっていうか…それが良いところどもあるのか?
でも、しとの方が不思議だよなぁ。心読めるし。
「それほどでも」
いちごに至っては、つかみどころが無いっていうか、何というか…
普通の女子じゃ無いことは、確かだ。
というか、『普通』って何だ?『常識』って何だ?あぁ頭がこんがらがってきた。
「今はそれじゃないでしょ?」
っあ、そうだった。
こんなペースじゃ、いつまでたっても終わらない。早く…この世界から…
――抜け出さなきゃ。
「あー、きりんが気付いてくれて良かった…そうだよね。僕たちは、この世界から出ないといけないんだよね」
確認するように、しとは言う。
「でも…それだけを目的にしていいのかな…」
「どういうことだ?」
「ゆずしお…つまり勇者が召喚されたってことは、この世界は何らかの問題を抱えているんでしょ?」
「…そういうことになるな」
「だったらっ!僕たちで救わなきゃ!」
吹っ切ったように、しとは立ち上がる。
「そうだな!俺たちでこの世界を救おう!」
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