第二章

Kirakira.


 私が一番好きな色は桜色。



 それは私が生まれた季節の花。

 私の名前を象徴する美しい花の色。



 私が物心ついてから一番鮮明に記憶に残っている光景。


 

 それが満開に煌めく桜でした。

 


 私が生まれ育ったのは東京都内のある閑静な住宅街。




 “きらきらしてる”




 それが私の口癖だったらしいのです。


 まだ幼くて、世界は知らない事ばかりだったこともあったのでしょう。

 私には世界が煌めいて見えていました。


 だけど、大人にそれを言っても伝わらなくて、もどかしくて。



 そんな私はクレヨンに出会いました。


 自分が見たものを表現できる“絵”に私は夢中で。


 だけどクレヨンはなんだかべったりしてて、私が見た美しい光景を表現する事が出来なくて。



 そんな私は色鉛筆を手に取りました。


 細かい線と淡く優しい色合いで繊細な絵がかけました。


 でも、やっぱりあの”きらきら”は表現しきれなくて。



 そしてついに水彩絵の具に、アクリル絵の具。

 この二つに出会って私はやっと自分にしか見えない光景をみんなに伝える事ができるようになりました。


 それが小学校の低学年の時。



 両親は私に絵の才能があると言ってくれました。



 でも、私はまだまだ自分が描きたい絵の1/10も表現できてなくて、いっぱいいっぱい描きました。。



 その成果もあって小学生向けのコンクールで賞をたくさんもらいました。

 両親も先生もいっぱい褒めてくれたけど、私にとっては当たり前。


 だって、私みたいに一日中絵ばっかり描いてる人なんていないだろうと思っていたから。




 そんな風にして私の世界はずっと煌めいていました。

 



 あの時までは――

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