第17話

 試験前の最後の語学授業の日、陸子は欠席だった。美鈴は、昼休み、自分が陸子に電話して、心霊スポット行きに誘うと伝えた。

 後日、美鈴は報告した。

 「あのね。陸ちゃん、喘息なんだって。彼女一人暮らしでしょ。私、家に行こうかって言ったんだけど、もう大丈夫だからって。心配だな」

 敏夫も小児喘息を経験していた。苦しさは分かる。

 「ほんとに大丈夫そうだった?」

 「声、いつもより小さかったけど、せき込んではいなかったし、いいと言われてるのに行くわけにもいかないしね」

 「相田さんて、めちゃ親切だよね」

 「えっ、そう? おせっかいなだけだよ、高森くん」

 美鈴は少し照れくさそうにしながら、ちらと敏夫のほうを見た。

 「まねできないね」

 敏夫はこたえたが、少しぶっきらぼうになってしまった。実際、美鈴のような人間は、敏夫には自分とはかけ離れた存在のように見えた。なぜ美鈴が自分などに声をかけたのか、敏夫はいまだに不思議に思っていた。

 「じゃあ、その子は一緒に来れないの?」

 孝彦がやや不安げにいう。

 「それがね、私もちょっとびっくりして、うれしかったんだけど、行きたいって」

 「え、大丈夫なの」

 敏夫は少し驚いた。

 「そう言ってた。一応日取りはね、七月の最終週くらいで考えておいてね」

 「うん、わかった。カテキョウの日もあるけど、少しは調整できるから」

 敏夫は少しだけ不安を感じながらも、返事した。実際、四人で出かけるのが、楽しみでもあるが、自分で言いだしておきながら、どんなことになるのか予測がつかなかったのだ。

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