第15話

 その夜、美鈴から電話がかかってきた。ちょうど家庭教師が終わって、帰宅したころだった。

 「宮本くん? 今いい?」

 「うん、OKだよ」

 「今日はありがとう。あのね、ほんとは皆みたいに、授業のあとも会いたかったんだけど」

 「だと思ってた。気、つかってくれてたんだよね」

 「高森くんも来てくれそうよね」

 「あのさ」

 つい、敏夫は言ってしまった。

 「斎藤さんも誘ってみない? 相田さん、仲いいでしょ」

 言ってから、『しまった』と思った。「友だち」づきあいとはいえ、美鈴は敏夫に告白してくれたのだった。これではまるで、美鈴を利用して、陸子を誘う出そうとするのに等しかった。敏夫は自分の顔がかあっと熱くなるのを感じた。

 少しの間があいてから、美鈴はこたえた。

 「うん、そうね。いいね。人数多いほうが楽しいし。高森くんも私大好きよ。面白いよね」

 そして、美鈴は、ほかに自分の家の犬のことなど、たわいもないことを話して、電話を切った。

 敏夫は心底後悔した。

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