第14話

 「ねえ、ねえ、私サークルの先輩に聞いたんだけど、この近くに心霊スポットあるらしいよ」

 いつものように、敏夫、孝彦、美鈴の三人でお昼を食べていたとき、美鈴がまるで「今日の話題」のように話しだした。季節は梅雨になっていた。この日も雨だった。三人は最近、空き教室をつかうようになっていた。

 「え」

 孝彦が即座に反応した。

 「近くって、どのくらい近く? どこ?」

 「わあ、高森くん、幽霊怖いの?」

 「怖い。ぼく霊感強いほうなんだ」

 孝彦がそんなことをいうとは意外で、敏夫は笑った。

 「孝彦、ばかかよ。ゆーれいなんていないよ」

 「ええ、宮本くんは信じないの?」

 美鈴が驚くように言うことが、かえって敏夫には驚きだった。

 「信じないよ」

 「断言するのね。私は子どものころから怖くて、その手の話、聞けなかったよ」

 「心霊写真とか?」

 「きゃあ、やめて」

 美鈴が耳をふさいだので、敏夫も孝彦もおかしくなった。

 「自分で言っておいて、なんだよ」

 「だって…。でも怖いもの見たさってあるじゃない?」

 「見たくない」

 孝彦がきっぱりというので、今度は美鈴と敏夫が笑った。

 「え、残念。怖いから、一緒に行ってもらおうと思ってたのに」

 そういうことだったのか。美鈴はこれまで、バイトを入れている孝彦や敏夫を気遣ってか、放課後に会おうとはしなかった。はじめて、いわば学校以外で会いたい、という美鈴の提案に、なんだか乗らないと悪い気がした。

 「そっか。行こうか。試験のころは、少し空くようになるよ。ぼくはわりと早く試験みんな終わるんだ」

 敏夫が言うと、孝彦は、

 「ぼくはけっこうギリギリ…。でも怖いからいやだな」

 「孝彦こそ絶対行ったらいい。そんなの妄想だって分かるから、行くべきだ」

 「ほんとに行ってくれる? じゃあ、都合のいいときでかまわないから、そのうち行こうよ」

 「ところで、それ、どこ?」

 「理工キャンパスの裏のほうだって」

 「へえ、そんなに近くないじゃない。理工なら、バスで直通で行けるよ」

 「でも、せっかく心霊スポットなのに、もっと遅く行きたくない?」

 「相田さん、けっこう乗り気だね」

 最後まで孝彦は恨めしそうであった。

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