第13話
美鈴や孝彦とのつきあいは楽しかったが、敏夫は相変わらず、陸子のこともまた気にかかってしまうのだった。とくに、美鈴が陸子に積極的にかかわりはじめたことで、さすがの敏夫も少し複雑な気持ちで、語学クラスでは気づかれないように会話を聞くようになっていた。敏夫は、自分が陸子を気にするのは、陸子も自分のようにあまりしゃべらないからだと思うようになっていた。どこか自分に近いところを感じるのだと思いはじめていた。
クラスコンパのとき、大声で笑っていた陸子には仰天したが、その後の授業では、これまでとあまり変わらず、静かだった。クラスコンパのときのことは、ほかのクラスメイトの会話を小耳にはさんで知った。
「斎藤さんて、しゃべらせるとすごいね」
何がすごいのだろう?
「いうわ、いうわ、毒舌だよ」
「だからふだんしゃべらないのかな。正体隠してる?」
そういって、ひそひそ声で話していた男子学生たちは笑った。敏夫もそういう陸子の話を聞いてみたかったものだが、できなかったことを悔やんだ。ただ、あえてその男子学生たちの会話に首をつっこみ、詳しくきくこともさすがにできない。意識しすぎだろうか。
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