第11話

昼休みなのでカフェテリアは混みあっていたが、二人は何とか席を見つけることができた。

 美鈴はサンドウィッチを頼んだ。敏夫は、ハンバーグ定食を頼んだ。

 「サンドウィッチが好きなんだね」

 「うん。パンが好きなんだけど、菓子パンじゃ太っちゃうし」

 「全然太ってないのに」

 「宮本くんはお昼からがっつりだね」

 「今日は深夜バイトなんだ」

 「あ、パン工場だっけ。そういえば、高森くんとはそこで知りあったんでしょ」

 「うん、びっくりした」

 敏夫は美鈴が自分の友人の話をもち出したことにほっとした。しばらく高森孝彦について話したあと、今度は敏夫がきいた。

 「灰谷健次郎がすきなの?」

 「あ、見てた? そう、あんまり小説読まないけど、灰谷さんは好きなの。斎藤さん、コンパのときに小説好きって言ってたから」

 「あの子、変わってるね。はっきりいって、人嫌いなのかな」

 「よく分かんないけど、私も気になってた。だから、本貸してみたの。なんか、そのうちいなくなっちゃうんじゃないかな、って心配で」

 「でもコンパのときはすごい笑ってなかった?」

 「そうだっけ? 私『いなみや』まで歩いていくとき、ちょっと話しただけだから」

 「ふーん」

 結局、この日の昼食は、二人の共通の知人の話で終わってしまった。別れ際、美鈴が言った。

 「宮本くん、また電話してもいい?」

 「あ、いいよ」

 「クラスで話すのは恥ずかしいから。あ、それから明日から、高森くんと一緒でいいよ、お昼。あと、電話して、おうちの人が出たらなんていおう?」

 「別に、ふつうにクラスメイトでかまわないよ。不自然じゃないよ」

 美鈴と別れたあと、敏夫はまた首を横に振った。

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